逆転階級

「遥、ちょっといいかしら」
「はい」
部活の練習が終わった後、三年の美咲は二年の遥に声を掛けた。
一年生が後片付けをしているのを美咲はじっと眺めている。
遥も何も言わず、じっと美咲の傍らに立っていた。
監視されていると思ったのか、ある一年生が少し怯えた様子で二人を覗った。
安心させようと、美咲は微笑み返した。
一年生はぎこちなく微笑み返し、自分の仕事に戻っていった。
やがて一年生も去り、部室には美咲と遥の二人が残った。
「それじゃ始めましょうか、センパイ」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、いつもみたいにしてごらん?」
「はい」
美咲は遥の足元に跪いた。
「辻村美咲は、柿沼遥様の忠実な犬です。どうか私を躾けてくださいませ」
床に額を付ける。
遥は容赦なく美咲を踏みつけた。
これが調教開始の手続きだった。
「センパイ、さっきまでのお礼たっぷりしてあげるから。嬉しいでしょ?」
「はい、嬉しいです」
これから始まる事への期待で、美咲の胸は締め付けられた。
「美咲、分かってるわね?」
頭を踏みつけていた足がどかされる。
美咲は立ち上がり、一枚ずつ服を脱いでいく。
下着も取り、一糸纏わぬ姿になった。
遥は、上級生用の椅子に座っている。
いつもは美咲達がここに座って、遥達下級生を扱いているのだ。
普段とのギャップに倒錯感を覚える。
「はい、挨拶して」
美咲は両手を頭の後ろにのせ、秘部を突き出すように股を開いた。
「よろしくお願いします」
遥が頷くのを見て、再び足元に跪く。
美咲は顔色を覗うように遥を仰いだ。
見下すような視線が更に美咲の被虐心を刺激した。
遥は無言で右足を差し出す。
シューズを脱がそうとする美咲を、遥は小突いた。
「し、失礼しました。遥様のおみ足を清めさせてください」
「いいわよ。好きなだけ堪能しなさい」
「あ、ありがとうございます」
許しを貰った美咲は、改めて遥のシューズを脱がせた。
二時間履き続けたシューズからは、強いニオイが立ち昇ってくる。
それは靴下も同じ事だった。
「し、失礼します」
床に這いつくばった格好のまま、靴下を口に含む。
饐えたようなニオイが鼻の奥を突いた。
しょっぱさと苦味の混じった汗が、にじみ出てくる。
「お味はどうかしら?」
「はい、とても美味しいです」
「ふふ、美咲は本当に変態ね。足のニオイが好きだなんて」
「ふぁい、美咲はヘンタイです」
美咲の息が次第に荒くなってきた。
「どうしようもない女ね、あなたって。こんなことして興奮してるの?」
「こ、興奮してます」
美咲の性癖を知った上で言ってくる。
そう言われることで、更に美咲が悦ぶのを彼女は分かっているからだ。
「ねぇ、分かってる?あなた後輩の靴下舐めてるのよ?情けないと思わないの?」
「ご、ごめんなさい」
「全く、他の部員がこんな所見たら、なんて思うかしらね」
恥ずかしさがこみ上げてくる。
「屈辱でしょ?惨めでしょ?でも、あなたはこういうのが大好きなのよね。そうでしょ、このマゾ女」
そう言われた瞬間、美咲の身体に電気が走った。
「聞いてるのよ。大好きなんでしょ、あなたのようなマゾは!」
口の中に足が押し込められた。
「ふぁ、が、がふ」
「いいわ、直接舐めさせてあげる」
口の中から足が出される。
靴下には、唾液で大きなシミができていた。
美咲は逸る気持ちを抑えながら靴下を脱がせる。
なかなか靴下を脱がせられない美咲を、冷ややかな笑顔で見下ろす遥。
美咲は靴下を脱がせ終わると同時に足の指にむしゃぶりついた。
「いい格好ね。あなたにはお似合いだわ」
もはや遥の言葉は美咲に届かないらしい。
五本の指を同時に頬張る。
遥のエッセンスを、一生懸命胃に流し込む。
唾液の音が厭らしく響いた。
その後、一本一本舐めあげる。
指の股まで丁寧に舐めとった。
遥は、そんな美咲の頭を撫でた。
美咲は恍惚とした表情で見上げてくる。
あの美咲先輩がここまで自分に尽くしている。
そう思うと、遥も堪らなくなった。
「いいわ美咲、ゾクゾクする」
その時、ドアの開く音がした。
瞬間、二人は弾かれたように顔を上げた。
鍵を掛け忘れたらしい。
ドアの側には、一年の部員が立ち尽くしていた。
後片付けの際、少し怯えていた子だった。
美咲は凍りついた。
一年部員も、あまりの光景に言葉も出ないようだった。
遥だけが余裕そうな笑みを浮かべている。
「結菜、こっちへいらっしゃい」
結菜と呼ばれた一年生は、何かに憑かれたようにフラフラと近寄ってきた。
「あの、柿沼先輩、それに…つ、辻村先輩?」
「ふふ、いい所に来たわね。あなたに私の犬を紹介するわ」
「い、犬って…それに辻村先輩、なんで裸なんですか?」
「結菜、こ、これはね…」
「美咲、結菜にご挨拶なさい」
「は、遥、それはさすがに…」
[え?え?」
「美咲、飼い主に恥をかかせるつもり?」
「飼い主?柿沼先輩が、辻村先輩の?」
驚いた顔で美咲を見下ろしてくる。
「美咲」
「わ、分かりました」
「え、分かりましたって、ええっ!?」
「私は、辻村美咲は、柿沼遥様の忠実な、い、犬です」
あまりの事に、結菜は呆然としている。
「そういう事なの。だからあなたも美咲の事先輩って呼ぶ必要ないのよ」
「そんなこと言われても、私…」
結菜の身体は震えていた。
「名前で呼んで上げて。美咲って」
「でも…」
「いいの、その方がこの子も喜ぶから。そうよね、美咲?」
「は、はい」
そう答えるしかなかった。
実際、事実なのだ。
「み、みさき…」
「はい」
「う、うそ、ホントに?」
さっきまで震えていた彼女の顔は、少し上気していた。
少しではあるが、愉悦も色も見せ始めている。
「美咲」 今度ははっきりと、力強く呼ぶ。
「はい、結菜様」
結菜は、今度こそはっきりと美咲の本性を理解した。
「ねえ柿沼先輩、さっきまで何をしてたんですか?」
「この子の躾けをしていたの。あなたもやってみる?」
「はい!やりたいです!」
結菜は嬉々として美咲を見下ろした。
「 美咲、結菜があなたを躾けてくれるんですって。ちゃんとお礼を言いなさい」
「あ、ありがとうございます、結菜様」
「辻村センパ、じゃなかった、美咲がこんなヘンタイだったなんてね。分かったわ、躾けてあげる」
「お、お願いします」
「柿沼先輩、まずはどうすればいいんですか?」
「そうね、まずは結菜との立場の違いを教えてあげなさい」
「はい。美咲、これからあなたに自分の身分をたっぷり教えてあげる。分かった?」
「わ、分かりました」
二人の笑い声が美咲の胸に突き刺さる。
「遥様、結菜様、どうかこのヘンタイ雌犬の美咲を躾けてくださいませ」
美咲は、期待に胸を膨らませながら額を床に擦り付けた。

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