Brave New World 二日目 2/2

部活終了後、私は部員が帰るのを待った。
最後の部員が音楽室から出て行くのを見届けてから、部屋の電気を消した。
茜に言われた通りカーテンは閉めない。
しばらくすると暗闇に目が慣れてきた。
窓から僅かに光が入ってきているのが分かる。
十分ほど経っただろうか、茜が音楽室に入ってきた。
「あはっ、やっぱり待っててくださったんですね」
「当然でしょ!私はあなたに言わなければならない事が…」
私を手で制すと、窓のほうへ顔を向けた。
「まだ少し時間が早いけど、既にいくつか星が見えてますね」
何かと思えば。
「わざわざそんな事を言う為に、私をここに残したわけ?」
「駅から自宅まで歩く間、星空がよく見えるんです。それでいつかは先輩と二人で…なんておもってたんですよ」
そう言って私の方に向き直る。
「そう。でも夜道の一人歩きは気をつけることね」
いくらか皮肉を込めて言ってやる。
「あなたに言わなければならない事があるの」
「内藤先生の事ですか?」
茜を待っている間、考えていた事。
「あなた、自分で何してるか分かってるの?学校にバレたら退学じゃ済まないわよ?」
「心配してくれるんですか?嬉しいなあ」
「ふざけないで!」
一喝してみるものの、茜に効果は無い。
「あまり大きな声出すと誰か来ちゃいますよ?」
「と、とにかく。どんな手で先生を脅してるのか知らないけど、あんな事して許されると思ってるの?」
「やっぱりあそこで見てたのは先輩だったんですね」
嬉しそうに笑う。
「でも先輩は勘違いなさっている様ですね。内藤先生は私に脅されてなんかいませんよ。先生自らあのような事を望んでいるんです」
「まさか」
「言ったでしょ?先生はマゾなんですよ。どうしようもないくらいに」
「そんなの…」
「当時付き合ってた後輩の方はその辺りを見抜いてたみたい。それ以来先生は年下にしか興味を持てなくなったの」
もしそうだったとしても、信じたくなかった。
自分の中の内藤を汚されている気がして茜を睨み付けた。
「先輩の気持ちは分かるわ。でも実際に見たなら知ってるでしょ?先生、嫌がってるように見えた?」
茜の口調が変わっていることに気付いた。
普段なら茜を咎めたはずだが、今の私にはそれができなかった。
「高校卒業後、先生は音大へ入学。その後もしばらく交際が続いたんだけど、後輩が別の大学へ入ってからはやがて疎遠になってしまった」
茜は目を閉じた。
当時の二人を思い描いているのだろうか。
「先生に言い寄る男性は多かった。先生も何度か男性とデートしたんだけど、どれも付き合うまでには進展しなかったみたい。前の彼女の事が忘れられなかったのね」
言って、ため息をつく。
「それからしばらくして、また告白されたらしいの。でも今度は女の子だった。サークルの後輩でとても可愛らしい方だったみたい。二人は付き合いだしたわ。もちろん周囲には秘密でね。最初の頃はとても幸せで、前の彼女の事も忘れるくらいだった。でも次第に物足りなさを感じるようになった。相手のほうも先生と同じくマゾっ気があったのよ。お互いその事になんとなく気付いて、それから少しずつ心が離れていった。このまま交際を続けてもお互いを満たすことができないから」
私は黙って聞いていた。
内藤先生にそんな過去があったなんて。
「可哀想だと思わない?あれだけ人気がありながら、自分が満たされる事はない。男性とは付き合えない。ほら、先生って一見サドっぽいでしょ?だから、たとえ告白してくる女の子がいてもみんなマゾばかり。音大を卒業して音楽の教諭になってからもそれは変わらなかった。でも、まさか生徒に手を出す訳にはいかないでしょ?」
「でも、それならどうしてあなたと…」
「偶然、本当に偶然見てしまったのよ」
茜はもう一度ため息をついた。
「今から二週間くらい前かしら。その日視聴覚室でグループ研究の発表があったんだけど、私そのレポート用紙を教室に忘れてきちゃったの。もう授業は始まってたんだけど、その紙がないと発表できないから取りに戻ったのよ。授業中だったから他の先生に見つかるのがなんとなく嫌で…それで少し遠回りだけどひと気の少ない通路を選んで…」
「選んで、どうなったの?」
「更衣室の前まで来た時、中から声がしたのよ。最初は私みたいに忘れ物をした子が取りに戻ってるのかと思ってそのまま教室に行ったんだけど、レポート用紙を取ってまたこの更衣室の前に来た時、また中から声が聞こえたの。泥棒でも入ったのかと思って怖くなったわ。でも体育の時って貴重品は週番が預かるでしょ?不審に思ってドアに耳を澄ませたの。そうしたら内藤先生が誰かに襲われているらしいじゃない。私、びっくりして動けなくなっちゃって。でも、中からは内藤先生の声以外聞こえないのよ。それで、そっとドアを開けてみたら…なんと先生、オナニーしてたのよ。信じられる?女生徒の汗にニオイが染み込んだ着替えを夢中で…自分がその生徒に犯されているところを想像しながら」
茜は私の顔を見つめながら愉快そうに笑った。
「う、嘘よ!そんなの、絶対に!」
いくらなんでも内藤先生がそこまでするとは思いたくなかった。
「嘘じゃないわ。それに先輩なら先生の気持ち、分かるんじゃない?」
「な、何を言って…」
「私には分かってるのよ?先輩も内藤先生みたいな事、私にされたいんでしょ?」
「あ、茜!ふざけるのもいい加減にしなさい!」
「そうやってむきになる所も可愛いわ。でもあの時、内藤先生を見ながら感じてたんでしょう?内藤先生に自分を投影しながら、おマタを濡らしちゃったんでしょう?」
「わ、わた、私は、そんな人間ではない!」
「あの後、私に苛めてもらう所を想像してイッちゃったんでしょう?」
茜がゆっくり近づいてくる。
後ずさりしつつ、それでも私は茜の目から顔を背けることができない。
「わ、私は断じて…」
茜が耳元で囁く。
「いいのよ?認めちゃいなさい?自分がマゾだって事」
脳が蕩けそうになる。
「そうすれば、うんと気持ちよくしてあげるわよ?ほら、言ってしまいなさい?あなたはそんな人間なの?」
「わ、わたしは…」
「私は?」
「わたし、は…」
「私は?」
「ま、マゾ、です…」
「何?聞こえなーい」
「わ、私はマゾです!」
「ふぅん、それで?私にどんな事してもらいたい訳?」
「わ、私を、苛めてください…」
口にした言葉に自分自身驚いていた。
しかし、この娘の魅力に抗うことはできそうにない。
「先輩分かってますか?私は後輩なんですよ?しかも2つも下。そんな小娘に苛めてもらいたいの?」
「は、はい、お願いします」
「だったらもう一度、ちゃんとお願いしてごらんなさい」
「ど、どうかわたくし、柏木友子を調教してくださいませ。あかね、さん…」
「さん?」
「あ、あかね、さ、さま…あかねさま、あかね様ぁ!」
「よく言えました。うんと可愛がってあげるわ、トモコ」
その瞬間、全身に電気が突き抜けた。
床に突っ伏す。
身体が小刻みに震えている。
「あらあら、もうイッてしまったの?これは苛めがいがありそうね」
茜は椅子に座り、私を抱きかかえるように座らせた。
左手で私の身体を支えながら、右手を私のスカートに忍ばせてくる。
「おや、もうこんなに濡らして。友子はホントにエッチな娘なのね」
わざと大きな声で囁く。
「や、やだぁ」
「嫌じゃないでしょ?ほら分かる?こんなに湿ってるのよ?」
スカートの中から手を出して、私の目の前に出す。
「ほら、どうなってるの?」
「あ、光ってます。あかね様の指が」
「そうね。あなたの愛液が星の光に照らされてるのよ」
指を口元に持ってくる。
「綺麗にして頂戴」
なんの抵抗もなく口に含む。
指が、私の口内を犯してくる。
最初はされるがままだったが、私も次第に舌をからませ始める。
今度は左手がスカートに入ってきた。
しばらくの間、ショーツの上から撫でているだけだったが、おもむろにその中へ進入してきた。
「あれ?先輩のおけけ、意外と薄いんですね」
耳が熱くなった。
「気にしてたのかな?でも大丈夫。そんなセンパイも可愛いですよ」
割れ目に沿って指をなぞられる。
息が荒くなってくる。
茜の指はある一点の周囲を、じらすようにこねくり回す。
時折その部分に触れる度、私の脳がショートする。
いやらしい声が、口から漏れてしまう。
不意に、その部分が摘まれた。
「あっ、駄目!そんな、ポッチ強く摘んじゃ、ああ、あーっっ!!」
最後は声にならなかった。
私は薄れる意識の中、茜の身体にもたれかかった。
茜は、そんな私を強く抱きしめてくれた。

コメント