duality 前編 (部室内のディクテイター 後日談)

家に帰ってからも、部室内での出来事が頭から離れなかった。
部員に厳しく、近寄りがたい雰囲気すらある古賀部長。
その部長が、後輩の前で全裸になり、言われるまま、足を舐めたのだ。
部長の舌が足を這う感触。
まだ、鮮明に残っている。
そして、卑屈な表情で、トロンとした目で私を見上げる部長の顔。
思い出すたび、体の奥が熱くなってくる。
部室内で聞かされた、古賀部長と藍花の関係。
部長にあんな過去があったなんて、誰が想像できただろうか。
部長は、あんな願望を秘めながら、部員の前ではおくびにも出さなかった。
しかし、心の奥底では、年下の女子にひざまずき、辱められることを夢想していたのだ。
たまたま、部長と藍花のプレイに居合わせることになった私。
ほかの部員も、おそらく学校では私たち以外は知らない秘密。
そのことを自分が知っているのだと思うと、胸が高鳴ってくる。
そして、もしかしたら、今後あの部長に対してもっと屈辱的なことをさせることができるかもしれないのだ。
しかし、それにしても。
あの上村藍花という少女は、いったい何者なのだろう。
部活中とは打って変わって、独特の雰囲気をまとっていた。
古賀部長だけでなく、私も彼女に逆らえないような気持ちになったのだ。
そして、帰り際。
部長を待っている間、彼女に言われた言葉が、頭から離れない。
『長沢先輩も、古賀部長と一緒に、私に私に責めてほしいのかな?どうなんですか、長沢先輩?』
近づいてくる、藍花の顔。
『全裸になって、跪きながら、私の足、舐めてみたいんでしょ?どうなの、奈緒…』
耳元で囁かれた言葉。
思い出すたび、体が熱く反応する。
彼女の言うように、私は古賀部長を自分に投影していなかったか?
屈辱的な扱いをされる部長を見ながら、もし私が彼女の立場だったら、と考えてはいなかったか?
例えば…
私は全裸で、後輩の足元にひざまずく。
私たち上級生の指示に従い、しごきを受けている後輩たち。
部活中はこちらが指示を出している側なのに、今は、その後輩の指示に従っているのだ。
見下した目をした後輩の足を取り、舌を這わせる。
体の奥が反応する。
目を閉じ、後輩の顔を思い浮かべる。
自らの手を後輩の足に見立て、そこに舌を伸ばす。
舌先が触れた瞬間、想像の中の後輩が…藍花が、私を見て笑った。
ヤバイ!
慌てて、頭をふる。
何を考えているのだろう、私は。
『藍花に支配されたい』
あの時、そう思った私の感情を、彼女は見抜いていただろうか。
ベッドに横になる。
明日の部活。
どんな顔をして二人に会えばいいのだろう。
期待と不安が入り混じったような興奮で、その日はなかなか寝付くことができなかった。
いつものように部活が始まる。
相変わらず先輩たちは厳しいし、練習もハードだ。
部長を見る。
近寄りがたいオーラをまとった彼女は、どこか気品すら感じさせる。
昨日の出来事は夢だったのでは?
そんな気すらしてくる。
「一年、ペース落ちてるぞ!グズグズするな!」
グラウンドを周回させられている一年生に、三年生の一人がげきを飛ばす。
走らされている一年生の中に、藍花がいた。
他の一年生と同じように、先輩からしごかれているのだ。
その、一年生をしごいている先輩ですら、部長の前ではどこか顔色を窺っているようなところがある。
「長沢!」
不意に、名前を呼ばれた。
「長沢、よそ見するな!」
「す、すみません!」
慌てて、声の主である三年生に謝る。
今は部活中だ。
練習に集中しなければ…
部活が終わり、後片付けの最中。
「奈緒ちゃん、部長が呼んでるよ」
同級生から声をかけられた。
「奈緒、何かやらかしたの?」
一緒に片付けをしていた同級生が、冗談ぽく言う。
「な、なんにもしてないよ」
「本当に?まあ、片付けは私たちがやっておくから、早く行って来な」
「うん、ありがとう」
走って、部長のところへ行く。
「部長、お呼びでしょうか」
恐る恐る、声をかける。
「長沢か。悪いな、呼び出したりして」
「い、いえ、そんな…」
「今日、この後何か用事はあるか?」
きた。
心臓の鼓動が早くなる。
「い、いえ、特には…」
「そうか…」
厳しい表情のまま、一点を見つめる部長。
「今日、また部室に来るように。昨日と同じ時間に。いいな?」
「は、はい!」
「ん。用件は以上だ」
「わ、わかりました。失礼します」
「あぁ、それと…」
立ち去りかけた足を止めて、部長を振り返る。
「必ず、一人で来いよ」
そういう部長は、どこか頼りなさげで…
昨日の、卑屈な表情を浮かべる部長の顔がフラッシュバックする。
途端、背中がゾクゾクっとした。
この人は、昨日のように、また私に責めて欲しいのか。
緩みそうになる顔を必死に押さえながら、部長に一礼して立ち去る。
同級生たちの所へ戻る。
「どうだった?何か、言われた?」
少し心配そうな表情。
「ん、大丈夫。部活中に考え事してて、それを見られてたみたい。部活に集中しろって、注意されちゃった」
あはは、と照れ笑いを浮かべる。
「全く、もう。新入生も入って来たことだし、レギュラー取れなくても知らないよ?」
用があるから、と、同級生たちを見送り、学校に残る。
昨日、部室を訪れた時間帯。
既に日も落ち、生徒の姿はない。
高鳴る鼓動を抑えつつ、部室へと向かう。
辺りを見回してから、部室のドアをノックした。
「部長、私です、長沢です」
鍵の開く音。
ドアが開き、藍花が顔を出す。
「長沢先輩、どうぞ、中へ」
言われるまま、部室へと入る。
中には、古賀部長がいた。
パイプ椅子に座りながら、こちらを見ている。
藍花が、ドアを施錠する。
「呼び出してしまい、悪かったな。二人とも、座ってくれ」
部長の前に、パイプ椅子が二脚。
私と藍花は、そこに座った。
「それで、用事って何ですか、部長」
藍花の声。
部活中の時とは違う、昨日聞いた、あの声。
「あ、ああ、すまない」
部活中は威厳に満ちていた部長。
今は、どこにでもいる一人の女の子だった。
どこかソワソワとして、落ち着かない様子。
ここに呼ばれた時点で、なんとなく分かっていた。
しかし、部長の次の言葉を待った。
「昨日、ここで、その…色々、あっただろ?」
「色々って、なんです?」
「その…私が、服を着ずに、二人の前で…」
言いにくそうにする部長に対して、藍花がわざとらしく追求する。
「私たちの前で?」
「だから…二人の前で、ひざまずいて…足を舐めたり、しただろ?」
「ああ、ありましたね、そんなこと。それで?」
「お前たちに責められて…その…ずっと我慢してたものが、抑えられなくなってしまったんだ」
ゆっくりと喋る部長。
しかし、その声にはどこか切羽詰まったものを感じる。
「まわりくどい言い方しないで、はっきり言ってください、部長」
「その…また、昨日のように、二人に責めて欲しいんだ。私を、二人でいじめてほしい」
顔を真っ赤にして、絞り出すように言う。
どんな思いで、こんな事を言っているのだろう。
普段は決して見ることのできない部長の健気な姿に、ゾクッとする。
「また私の足、舐めたいんですか?」
「あ、ああ、そうだ、長沢。お前の足を、また、舐めさせて…奉仕させて、ほしい」
「だったら、態度で示してもらえませんか?それに、言葉づかいも」
心臓の音が聞こえそうなくらい、ドキドキしている。
「あ、ああ、すまない。いや、すみません…」
部長の目が、落ち着きなく動く。
「ほら、長沢先輩が態度で示せって言ってるんですよ?何ボケっとしてるんです、部長?」
藍花が、楽しそうにはやし立てる。
「あ、は、はい、ごめんなさい!」
立ち上がり、ジャージを脱ぎ始める部長。
顔が上気し、目がトロンとしている。
もう、スイッチが入ってしまったのだろう。
こうなった部長は、もう怖くなかった。
下着姿になり、恥ずかしそうに手で前を隠す部長。
「下着も脱いでください。言われないと分かりませんか?」
「ご、ごめんなさい、脱ぎます」
ブラを外し、ショーツを下ろす。
一糸まとわぬ姿の部長。
引き締まった体と、少し控えめな胸。
そして、黒い茂み。
女の私でも、見ていてドキドキしてしまう。
「ぬ、脱ぎました…」
俯きながら、恥ずかしそうに立っている。
「私の足、舐めたいの、部長?」
「な、舐めたい、です」
「後輩の前で、自ら進んで裸になるくらいですもんね。恥ずかしくないんですか、部長?」
「恥ずかしい、です…」
そう言うものの、どこか嬉しそうにも見える。
「そんなこと言って、本当は私たちに裸を見てもらいたかったんでしょ?」
「それは、その…」
「よかったね、美沙ちゃん。長沢先輩と私に裸を見てもらえて。はだかんぼの美沙ちゃん、可愛いよ」
「ほら、そこで四つん這いになってください、部長」
「は、はい…」
部長が、期待に満ちた目で私を見る。
ひざをつき、両手を地面につける部長。
あの部長が、大人しく私の言うことに従っている。
どこか現実味のないような、ふわふわとして不思議な感覚だ。
私たちの前でひざまずいた部長。
顔をあからめ、恥ずかしそうに俯いている。
「それで、どうしたいんでしたっけ、マゾ部長?」
「あっ…」
唇を噛み、何かに耐えるような表情を浮かべる部長。
「舐めさせて、ください」
弱々しい声。
「何を舐めたいんですか?ちゃんと言ってください」
「お、お二人の足を、舐めさせてください…」
やはり、何かに耐えているような表情。
「俯いてないで、ちゃんとこっちを見てください」
部長が顔を上げる。
よほど恥ずかしいのか。
それとも、興奮しているのか。
目の前にいる、どこか気弱そうで、こちらの顔色を窺うような少女。
いつも自信に満ちた、威厳のある部長。
本当に同じ人物なのか、と思う。
しかし、全裸で後輩の前にひざまずいている少女は、紛れもなくあの古賀美沙なのだ。
どんな気持ちなのだろう。
運動部、とりわけ強豪校は、先輩と後輩の上下関係には厳しい。
理不尽と思うようなことも、先輩の命令は絶対だった。
まして、部長ともなれば…
たった一言で、私たち後輩を怯えさせることも、従わせることもできるのだ。
実際にする、しないは別にして、古賀部長はそうすることができるくらい、この部活の中で力を持っている。
それなのに…
こうして服も着ず、後輩二人の前でひざまずいているのだ。
本来なら、決して考えられないこと。
本人が元々持っていたのか、今私の隣にいる藍花に植え付けられてしまったのか。
年下の女の子にいじめられたいという変態的な願望が、彼女にここまでさせてしまったのだ。
もし、自分がその立場だったら…
後輩の前で服を脱いでいく。
手で隠すことも許されず、胸もお尻も、大事なところも見られてしまう。
椅子に座る後輩は服を着たまま、全裸で立つ私にあれこれ命令する。
普段はこちらが上の立場なのに…
今は、彼女たちに逆らうことができないのだ。
好奇心の赴くまま、屈辱的な命令をしてくる後輩。
怒り、羞恥心、情けなさ。
それら全てに、私の体が熱く反応する。
そんな私を見て、彼女たちは更に私をはやし立てるのだ。
彼女たちの足元にひざまずく。
『足、舐めたいなら、舐めさせてあげましょうか、マゾセンパイ?』
藍花の声。
私はハッとして、隣にいる愛花を見る。
「どうかしましたか、先輩?」
不思議そうな顔をする藍花。
「あ、いや、なんでもない」
ふふ、と笑う藍花。
「部長、ほら、早く」
気まずさをごまかすように、部長に指示する。
「奈緒さんと、藍花さんの足を、舐めさせてください」
そう言って、やはり唇を噛む部長。
このまま足を突き出せば、彼女は喜んで足に飛びつくだろう。
でも…
いたずら心が芽生えた。
「ねえ部長、お尻をこちらに向けてください」
「えっ」
戸惑いの表情を浮かべる部長。
「私たちの足を、舐めさせて欲しいんでしょう?」
「は、はい。でも…」
「でも、何?」
語気をやや強める。
「い、いえなんでもありません!」
そう言って、私たちのいる方と逆側を向く部長。
部長の、形のいいお尻が突き出されている。
「あはは、美沙ちゃんのお尻、丸見え!」
藍花が、嬉しそうな声をあげる。
「部長、どうですか?私たちにお尻を見られちゃってますよ?可愛らしいお尻ですね」
「や、恥ずかしい、です…」
可哀想なくらい、耳が真っ赤になっている。
「私たちの足、舐めさせて欲しいんでしょう?だったら、これくらい我慢できますよね、部長?」
「う、うう…」
こちらからは見えないが、おそらく唇を噛んで、耐えているような表情を浮かべているのだろう。
「我慢も何も、きっと喜んでますよ、先輩。だって美沙ちゃんは、恥ずかしいことが大好きだもん。そうだよね、美沙ちゃん?」
羞恥心を煽る藍花。
「部長、そのまま、お尻を振ってください。私たちに媚びるように」
「そ、そんな、できない、です…」
甘ったるい、媚びるような声。
モジモジと、腰を動かす部長。
「できないんですか?」
「だってそんな…恥ずかしい、です…」
「残念。それじゃあ、今日はここまでかな」
「あーあ、つまんないの。こんな意気地のないマゾ部長なんて置いて、さっさと帰りましょうか、先輩」
藍花が、合わせるように続ける。
「じゃあ部長、私たちは帰りますから、戸締りはよろしくお願いしますね」
「ま、まって!待ってください!」
立ち上がろうとした私たちに向けて、部長が声をあげる。
そして、ゆっくりと、左右にお尻を揺らし始める。
「ほ、ほら、見てください。私の、美沙の、お尻ダンスです。マゾ部長の惨めなお尻ダンス、見て、見てください…」
一生懸命、お尻を振り続ける部長。
部長として、先輩としての尊厳はもはや残っていなかった。
ただ、年下の女子の足を舐めたいがために、滑稽な姿を後輩に晒す。
いや、そうすること自体が、彼女の願望を満たすことでもあるのだ。
左右だけでなく、上下にも動かす部長。
「もういいです、部長」
「えー、もうやめちゃうんですかぁ?もっと見てたかったのに」
藍花が、残念そうな声をあげる。
「時間も時間だし、ずっとこうしてるわけにもいかないでしょ」
「それもそうですね」
「ほら、こっちを向きなさい、マゾ部長」
「は、はい!」
再び、私たちの方を向く部長。
激しく動いたせいか、息が上がっている。
「靴を、脱がしなさい」
「は…はいっ!」
突き出した足に、両手で触れる部長。
私たちの靴を、一足ずつ脱がせていく。
4本の足が、部長の前に突き出された状態だ。
「ほら、部長の大好きな、後輩の靴下ですよ?好きなんでしょ、靴下のニオイ。いいですよ、嗅いでも」
「あ、ありがとう、ございます!」
そう言って、足を両手で掴む。
足の裏に自らの顔を押し付ける。
そして、思いっきり、鼻から息を吸い込む。
「はぁぁぁっ…はぁぁぁっ…」
声にならない声をあげる部長。
4本の足を、1本ずつ、同じように繰り返していく。
「ほら、ヘンタイ。どうなの?お前に散々しごかれてムレた足のニオイは?」
藍花が、足の裏を部長の顔に擦り付けるように動かす。
「と、とっても、いいニオイです、藍花様…」
恍惚とした表情で、ニオイを取り込み続ける部長。
目を閉じ、ただただニオイを嗅ぐことに夢中な部長。
「部長のその顔、部員のみんなに見てもらいましょうか。きっとみんな、部長のこと、軽蔑すると思いますよ」
「そ、そんなこと、言わないでください、奈緒様…」
「部長がこんなヘンタイだなんて知ったら、もうみんな部長の言うことなんて聞かなくなっちゃうかも。それどころか、部員たちにいじめられちゃうかな?」
「や、やです、そんなの…」
腰をクネらせながら、媚びるような声を出す部長。
「そんなこと言って、ちっともニオイ嗅ぐのやめないじゃない。いいの?部長なんでしょ?部員のみんなに示しがつかないでしょ?それとも、部員のみんなにペットとして飼われてみる?」
「あっ、ダメ、です、そんな、あっ、あぁ…」
部長の体が、小刻みに震える。
やがて、小さく痙攣した。
そんな部長を見て、私は藍花と顔を見合わせた。
「もしかして、部長…」
「美沙ちゃん、イっちゃったの?」
荒く息をしながら、反応しない部長。
「イったのかって、聞いてるんですけど?」
藍花が、足の裏で部長の顔を擦る。
「ご、ごめんなさい…いっ、イっちゃい、ました…」
「私にイジワルなこと言われて、イっちゃったんだ?」
「は…はい…」
「あれ、もしかして部長、本当にみんなにペットとして飼われたいとか?」
「ち、違います…」
「ほんとかなぁ。今だってこうして後輩二人にいじめられて…こんなヘンタイなこと、自ら望んでなさってるんですよ?」
「そ、それは…」
私は靴下を脱ぎ捨てた。
「ほら、部長の大好きな生足ですよ。ほらほら」
部長の目の前で、素足をちらつかせる。
足を左右に揺らすと、それを追うように部長の目も左右に動く。
「マゾ部長の大好きな、後輩の生足ですよ。ほらほら」
からかうように、部長の顔に足を近づけたり、遠ざけたりする。
「い、イジワル、しないで…」
「ん?イジワルしないで?」
「イジワル、しないで、ください…」
卑屈な表情。
媚びるような声。
ゾクゾクする。
「本当は、部員たちにペットとして飼われたいんでしょう?いつも偉そうに私たちに指示してるけど、本当はいじめて欲しくて仕方ないんでしょう?ほらほら、正直に言いなさい?」
「わ、私は、そんな、こと…」
「ふーん、そう。いじめて欲しくないんだ。じゃあ、私の足、舐めさせてあげようと思ってたけど、やめよっかなぁ」
「そ、そんな!」
「だって、いじめられたくないんでしょう?後輩の部活終わりのムレムレの足なんて、舐めさせられたくないんでしょう?」
「そ、そんな…」
「どうなの?いじめられたいの、いじめられたくないの、はっきりしなさい」
「い、いじめて、ほしい、です…」
消え入りそうな、か細い声。
「聞こえない。私の顔を見て、はっきり言いなさい」
「い…いじめて、ほしいです」
私を見て言う部長。
「声が小さい!いつも偉そうに出してる声はなんなの?いつもみたいに、大きな声でちゃんと言いなさい、美沙!」
「いじめられたいです!いつも偉そうにしている私のこと、みんなで馬鹿にされたり、恥ずかしいことさせられたり、したいですぅ!」
「よし、舐めなさい!」
「あ、ありがとうございます!」
そう言って、一心不乱に私の足を舐め回す部長。
足の裏。
指の一本一本。
私の足についた汗や汚れを、微塵も残すまいとする部長。
私にひざまずき、私に許しを乞い、私の汚れた足を嬉しそうに舐める、全裸の女。
これが、古賀美沙の正体なのだ。
私は足を舐めさせながら、言いようのない興奮を覚えた。
「美味しそうに舐めるねぇ、美沙ちゃん。長沢先輩の足、そんなに美味しい?」
「お、おいひい、です」
「そう、よかったねぇ。今の美沙ちゃんの顔、とっても情けなくって、無様で滑稽で、笑えるよ?いつか、部員のみんなにも見てもらおうね?」
「ふ、ふぁい…」
「みんながどんな顔するか、今から楽しみだね」
自分の世界に入ってしまったのか、藍花の声はもう部長の耳には届いていないようだった。
「あっ」
藍花が声をあげる。
「部長、長沢先輩、そろそろ時間が…」
「えっ」
途中から部長を責めるのに夢中で、時間を気にするのを忘れていた。
「鍵は、私たちが返しておきますので」
「あ、ああ、悪いな…」
お互い気まずくて、ろくに目を合わせられない。
合意の上とはいえ、部長にとんでもないことをしてしまったのだ。
冷静になって、まず思ったのはそれだった。
それは、向こうも同じらしい。
それが、せめてもの救いだった。
「それじゃあ、後は頼む。二人とも、気をつけて帰れよ」
「はい。部長も、お疲れ様でした」
そそくさと出ていく部長を、二人で見送る。
さて…
「長沢先輩、すごかったですね」
「えっ?」
「さっきの先輩、すごく迫力がありましたよ。それに、部長がどんなことをされたり、どんなことを言われたら嬉しいか、的確に捉えていらして…」
「そ、そうかな?」
「ええ。まるで、マゾな人の気持ちが分かるみたい」
「…え?」
「部長が裸になった時、ボーッとしてませんでしたか?それに、私の顔を見て、びっくりしたような顔をなさって。何か、考え事をしていらしたんですか?」
「べ、別に、そういうわけじゃ…」
あの時、考えていたこと。
部長ではなく、私が全裸でひざまずいている姿。
後輩の、藍花の足元にひざまずき、足を舐めさせてほしいと懇願する姿。
藍花にからかわれながら、己の秘めた願望を告白させられる姿。
もし、知られてしまったら…
この、一見すると可愛らしい少女に、私は一生逆らうことができなくなってしまう。
胸がキュッと締め付けらえる。
心拍数が上がる。
藍花が、私の耳もとに顔を寄せる。
「後輩の前で裸になって、恥ずかしいことを言わされたり、部活後のムレた足のニオイを嗅いだり、舐めさせられたり…そんなの、とっても屈辱的ですよね」
藍花の声。
「想像してみてください、長沢センパイ。私がセンパイに服を脱げって言ったら、素直に服を脱いじゃいます?私の足もとにひざまずけって言ったら、素直にひざまずいちゃいます?」
「そんなわけ…ないでしょ…」
藍花の言葉が、私の頭の中でイメージとして広がっていく。
「私の足、舐めなさいって言ったら、嫌ですよね?断りますよね?私なら怒りますよ。先輩に対してなんてこと言うの、失礼でしょ、って」
藍花の手が、私の太ももに乗せられた。
「センパイの体…おっぱいも、お腹も、このスベスベな太ももも…可愛らしいお尻も、大事なところも、ぜーんぶ、後輩の私に晒しちゃうなんて…考えただけで、嫌ですよね?」
「あ、当たり前でしょ…」
「ですよね。でもセンパイ、声、震えてますよ?」
心臓の音。
藍花に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、大きく脈打っている。
「センパイ、顔、赤くなってますよ?」
「う、うるさい、よ」
「まさかとは思いますけどー、センパイも、そうなんじゃないですか?部長と同じで、後輩の私に、恥ずかしいこと、させられたいのかな?」
「そ、そんなわけ、ないでしょ!」
「大丈夫ですよ、センパイ。人間て、誰でもSな部分とMな部分の両方を持ってるんです。ただ、その比率が人によって違うだけ。それに、ある人に対してSな人が、別のある人に対してはMになったりするのも、よくある話らしいですよ?」
「だから、何?」
「安心してください。誰にも言いません。部長にも。他の先輩方にも。私と長沢センパイだけの、二人だけのヒミツです。だから、今日だけは、自分の気持ちに正直になっていいんですよ?」
耳もとで囁かれる、藍花の声。
私の太ももに乗せられた藍花の手が、ゆっくりと、優しく撫でてくる。
その手をはね除けられなかった時点で、私の敗北は決まっていたのかもしれない。
藍花の声が、私の脳を痺れさせる。
藍花の手が、私の体を熱くさせる。
二人だけのヒミツ。
誰にも知られないのなら…
でも、本当に内緒にしてくれるだろうか。
「ほら、どうしたいの、奈緒ちゃん?」
藍花の声が、私の思考力を溶かしていった。
「ほ、ほんとに?」
「はい?なんですか?」
「ほんとに、誰にも言わない?」
「本当ですよ。誰にも言いません」
「誰かに言ったりしたら、しょうちしないからね?」
「分かってます。私とセンパイだけのヒミツです」
「じゃ、じゃあ、今日だけ、だからね」
「今日だけ?何がですか?」
「今日だけ、その…部長の時みたいに、私に、恥ずかしい命令を、しなさ…いえ、して…ください…」
「ふふ、わかりました」
藍花の声が低くなる。
胸が高鳴る。
もう、後戻りできない。
この子に、一生逆らえなくなってしまった。
本能的に、それを悟った。
「じゃあ、奈緒、そこに立ちなさい」
「は…はい…」
後輩に、藍花に、命令されている。
さっきまでは私の方がタメ口だったのに…
さっきまでは、藍花の方が私に丁寧語だったのに…
頭がクラクラした。

コメント

  1. fan より:

    SECRET: 0
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    いつも楽しく読ませていただいてます!
    今回は特に楽しみにしてました…!
    ある人に対してはSだけど、別の人に対してはMっていうのがとても性癖に刺さってしまいました……
    3人以上の階級アリの主従関係というテーマの作品はあまり見ませんが、とても良いものですね……
    後半もとても楽しみにしています…!

  2. slowdy より:

    SECRET: 0
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    >fanさん
    ありがとうございます!
    以前は一対一の主従関係を書くことが多かったですが、最近は3人での関係を書くことが増えました。
    行為の内容も重要ですが、相手との関係性も大事な要素なので、3人以上だとその辺り表現がしやすい気がします。
    前半は共に部長を責めるS側でしたが、後半の奈緒はM側となって後輩の藍花に責められていきます。
    ぜひ、後半も楽しんでいただけたら幸いです!