Brave New World 六日目 2/3

もうじき達しそうだという時、玄関のチャイムが鳴った。
またか。
顔を見合わせる。
茜がげんなりした顔で部屋を出ていった。
昨日もそうだった。
これからという時、邪魔が入る。
飛びっこにはスイッチが入ったままになっている。
刺激は伝わってくるが、ひどく単調に感じた。
しばらくして茜が戻ってくる。
「松山さんが来たんだけど、どうする?」
苦笑いしながら尋ねてくる。
「またあの子が来たの…」
「忘れ物取りに来たんですって。わざわざ来なくても明日私が学校で渡したのに」
「そうね」
「それでね、友子さん。松山さんのことなんだけど…せっかくだから、また部屋まで来てもらおうかなって思ってるんだけど、どう?」
「ど、どうって言われても…また、なの?」
「わざわざ来てくれたのにそのまま帰らせるっていうのもアレだし。それに友子さん、ああいうシチュエーション好きみたいだから」
言われると、甘い期待も疼きだしてくる。
昨日クローゼットの中で、私は確かにこれまでになかった興奮を経験した。
それをもう一度味わってみたいという気もする。
「まあ、そうね。お茶を飲むくらいの間なら、居てもらっても…」
「分かった。じゃあ隠れて、昨日みたいに」
クローゼットに入り込む。
私の衣服は茜が片付けてくれた。
茜が部屋を出て、松山を呼びに行った。
飛びっこのスイッチは切ってある。
しかしこれから始まることへの期待で愛液があふれてくる。
リスクに対しての危険間感は昨日より明らかに弱くなっていた。
二人の足音が聞こえてきた時、私の心は跳ね上がった。
やがて二人が部屋に入ってくる。
「なんかごめんね。わざわざ…」
「いいのよ。せっかく来てくれたんだし、ゆっくりしていって」
「ありがとう。少ししたら帰るから」
息を殺して、隙間から外の様子を窺う。
二人の配置は昨日と同じだった。
「これでしょ?松山さんが忘れていったの」
はっきりとは見えないが、手帳だろうか。
いや、メモ帳くらいの大きさだ。
「ありがとう!これだよー。いつもポケットに入れてるんだけど、何かの拍子で落としちゃったみたい」
「昨日部屋の中で片付けしてたら、テーブルの下に落ちてたの。あ、もちろん中は見てないよ?」
「あはは、分かってるって。それに、見られて困るものでもないし」
「そうなんだ。でも大切な物なんでしょ?」
「うん。私忘れっぽいから、思いついた事はこのメモ帳に書き留めてあるんだ」
「偉いね。私もメモ取る習慣身につけないと…あ、お茶持ってくるね」
「あ、うん。ありがとう」
茜が部屋を出ていった瞬間、松山がため息をついた。
「よかったぁ…」
大事そうにメモ帳を抱きしめる。
「茜ちゃんにも見られてなかったみたいだし」
やはり、本当は見られると困ることが書いてあるのかもしれない。
松山はメモ帳を広げ、ページをめくり始めた。
時々ため息をつきながら、内容に見入っているようだ。
茜の足音が聞こえてきた。
松山も音に気付いたのか、慌ててメモ帳をポケットにしまった。
それから二人の他愛ない会話が続いたのだが、急に茜が切り出した。
「あのさ、松山さんって、SMに興味ある?」
「え、ええっ!?どうしたの、いきなり」
私も何が起こったのか理解するのに時間が掛かった。
「いや、友達の話なんだけどね。なんか、そういのにハマっちゃってるらしくて」
突然、飛びっこのスイッチが入った。
「そうなんだ…いや、何ていうか、驚いたよ」
「あ、ごめんね。引いちゃった?」
「そうでもないんだけど、茜ちゃんにそんな友達がいたなんて意外で…」
「うん、私もその子から聞かされたときは驚いたよ」
「そりゃ、驚くよね、普通」
「うん。で、時々その子からそういった話を聞かされるんだ」
「それはまた…」
松山が動揺しているのが分かった。
対して、茜にはさほど動じた様子はない。
それどころか、どこか余裕を感じさせる。
茜の事だ、何か考えがあるのかもしれない。
「で、その子、相手と色々な事してるらしくて。でも私、そういうのよく分からないから…」
「だよね、うん」
「松山さん、そういうのってどう思う?」
「そ、そういうのって、SMのこと?」
「うん」
「私は…あ、茜ちゃんはどうなの?」
「私?私は最初全く興味なかったんだけど、話を聞いてるうちにどんな世界なんだろうって、なんとなく」
「ほ、ほんと?」
「うん。松山さんは?」
「わ、私も、実を言うと興味がない訳でもなかったり…する」
「そっか、よかったぁ。自分で言っといてなんだけど、安心しちゃったよ」
松山も照れ笑いをしている。
「松山さんはさ、どっちなの?」
「どっちっていうと、SかMかってこと?」
「うん」
「私はどうだろう。Mだと思うけど、もしかしたらSかも」
「えー、どっちー?」
「普段はMなんだけど、時々Sっぽくなるの」
「ふぅん。それで、今はどっちなの?」
「どっちかっていったら、Sかなぁ」
「Sの時ってどんな事考えたりするの?」
「そんな、恥ずかしいよー」
「教えっこしようよ。次は私が話すから」
「うーん…分かった。でも、引かないでね」
「うん、大丈夫だよ」
「あのね、まず相手に首輪を着けるの」
「首輪!?」
「うん。プライドの高いその子は最初嫌がってるんだけど、本当はとても、その、エッチで…」
「うんうん」
「それで、相手に誓わせるの。私のペットになりなさいって」
「おお」
茜との校舎での出来事を思い出した。
そういう願望を持つ子は多いのだろうか。
「それで、どうするの?」
「あのね…ホントに引かないでね。その、おしっこさせるの。私の目の前で」
「お、オシッコときましたか」
その間も茜はスイッチのオン・オフを繰り返している。
私もいつしか、松山の言葉に自分を重ね始めていた。
「最初は相手も恥ずかしがってるんだけど、次第にそれが快感になってくるの」
「ほぉ、ほぉ」
「それで最後は皆の見てる前で、させるの」
「な、なんという」
「顔を真っ赤にしてるその子に、耳元で囁くの。『あなたがおしっこしてる所、皆に見られてるよ。恥ずかしいねぇ』って」
「うわぁ…」
私の頭の中で、松山の言葉が実行されていた。
松山にリードを引っ張られて、私は全裸のまま人前で這いつくばっている。
松山は私にそっと囁く。
言われた通り、私は公衆の面前で自ら性器をさらけ出す。
どよめく群集。
好奇の目で見てくる者もいれば、汚いものでも見るかのような視線を送ってくる者もいる。
そんな人たちの前で、私は媚びるように松山の顔を窺う。
松山が頷く。
ご主人様からの許しを貰った私は、思い切り放尿した。
人に見られてはならない行為を大勢の人々に見られている。
あまりの興奮と羞恥心で、私の頭はスパークした。
「あぅぅんっ!」
「ん?今誰かの声がしたよ?」
私の声が漏れ出てしまったらしい。
慌てて口を押さえたが遅かった。
「そ、そんなことないって」
「いや、確かにした。クローゼットの方で」
血の気が引いた。
今度こそばれてしまう。
手が震え始める。
「誰か中に入ってたりしてね」
「は、はは、まさか」
茜の方も狼狽していた。
冷静さを装うとしているが、動揺が隠しきれていない。
松山の注意を逸らそうとするが、松山はまだ訝しがっている。
「まぁ、居る訳ないんだけどね」
松山の言葉に安堵する二人。
その瞬間、松山はものすごいスピードでクローゼットに走り寄った。
「スキありっ!」
クローゼットが開け放たれた。

コメント

  1. HI より:

    SECRET: 0
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    こんにちわー
    いつも読ませてもらってます♪
    続きが楽しみで思わずコメントさせていただきました笑
    続きを楽しみにまってます!

  2. slowdy より:

    SECRET: 0
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    こちらこそいつもありがとうございます。
    近いうちに続きを載せられたらと思っています。
    六日目で物語の流れが大きく変わるので、今後の展開が読み手の方にどう受け取ってもらえるのか心配しています(笑
    ぜひまたいらしてくださいね