部室内のディクテイター 後編

引き締まった筋肉と、飾り気のない下着。
恥ずかしそうにしている部長を見ていると、同性の私でもドキドキしてくる。
「何をしているの。下着も脱ぎなさい」
「は、はい…」
ブラジャーを外す。
形のいい、やや小ぶりな胸があらわになる。
ショーツに手をかけ、ゆっくりとおろす。
黒い茂みが目に入る。
あの古賀部長が、後輩の、しかも一年生に言われるまま、裸体を晒している。
普段はおっかない部長が、今は恥ずかしそうにしながら、手で胸や大事なところを隠しているのだ。
私は言いようのない胸の高鳴りを感じた。
「ぬ、脱ぎました」
「美沙、長沢先輩の目を見なさい」
古賀部長が、私の方を見る。
いつもの強気な表情が、見る影もなかった。
「長沢先輩に美沙の恥ずかしいところ、見られちゃってるよ。どう、嬉しい?」
「そ、そんなこと…」
「長沢先輩、びっくりしたでしょ。でも、これが古賀美沙の正体なんです」
「う、うん…」
なんと言っていいか分からず、あいまいに返事をする。
「うーん、せっかくだし、美沙には自分で説明してもらおうかな。美沙、あなたの性癖を長沢先輩に説明しなさい」
「そ、そんな…」
媚びるような、卑屈な目をして上村を見る部長。
本当に、これがあの古賀部長なのだろうか。
「長沢、本当に誰にも言うなよ」
「は、はい、言いません」
「わ、私は、その、マゾというやつでな…恥ずかしいことをさせられたり、屈辱的なことをさせられると、その、興奮、してしまうんだ…」
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに告白する部長。
「特に、年下の同性にそういうことをさせられるのが、好きで…」
「は、はい…」
「昔、上村にそのことを知られてしまって、その、調教を、な」
「調教って、マッサージしたり、足を舐めたり、ですか?」
「ああ、まあ、な」
「ふふ、それだけじゃないでしょ?」
「うう…」
「まあ、いいわ。どうですか、長沢先輩。古賀部長のこと、軽蔑しました?」
「い、いえ、そんなことは…」
「まあ、本当に軽蔑してても本人の前では言えないですよね」
古賀部長に対して湧き上がるこの感情は、軽蔑なのか。
嫌悪感というより、部長がかわいく見えるというか…
「じゃあ、美沙、改めてお願いしなさい」
「ねえ藍花、それだけは…」
「嫌なの?わたしにはそうは見えないけど。むしろ、長沢先輩に見られて興奮してるんでしょ。違う?」
「それは、違い、ません…」
「でしょ?だったら早くしなさい」
「わ、わかりました…」
ゆっくりと膝をつき、藍花の前で正座をする部長。
「あ、そうだ、ねえ長沢先輩、こっちに来てください」
近くにあったもう一つのイスを、自分が座っているイスの横に置く。
「ほら、ここに座ってください」
「え、でも…」
「いいから、ほら」
「う、うん…」
言われるまま、藍花の横のイスに座る。
イスに座る後輩二人の前で、全裸のまま正座をする先輩。
しかも、それはあの古賀部長なのだ。
悔しそうな、情けなさそうな表情を浮かべる部長。
「ほら、美沙、早く」
「は、はい…」
手をつき、私たちに頭を下げる哀れな部長。
「どうか、美沙のことを、かわいがってください、藍花様」
「私だけじゃないでしょ。長沢先輩にもお願いしなさい。長沢先輩、下の名前は?」
「え、と、奈緒、だけど…」
「ほら、美沙」
「な、奈緒、様…」
「美沙、顔を上げて、奈緒さんの目を見て、お願いしなさい」
「わ、わかりました」
「ぶ、部長…」
部長が顔を上げる。
いつもの威厳はなく、自信なさげで、卑屈な目をしている。
「奈緒様、どうか美沙のこと、かわいがってください」
その瞬間、背中に電気が走った。
「わ、わかりました。いえ、わかったわ、美沙」
部長がびっくりした顔をしている。
「長沢先輩、美沙に足を出してあげてください。美沙、長沢先輩の足をきれいにして差し上げなさい」
「はい、わかりました」
トロンとした目の美沙が、私の右足に大事そうに触れる。
「失礼します」
そう言って、靴を脱がせる。
露出した靴下に、美沙が顔を近づける。
部活でにおいがきつくなっているはずの靴下に、自らの鼻を押し当てる。
荒い鼻息。
目を閉じて、夢中でにおいを嗅いでいる。
「私が昔、美沙に靴下のにおいを嗅がせていたんです。そうしたら、そのにおいが大好きになっちゃって。部活の後の汗が染み込んだ靴下が特に好きなんです。どう、長沢先輩の靴下のにおいは?」
「は、はい、とってもいいにおいです」
目を閉じたまま、返事をする美沙。
「それじゃあ、次。長沢先輩の足を清めて差し上げなさい。足の指の一本一本、ていねいに、ね」
「はい、藍花様…」
靴下を脱がせる美沙。
露出したつま先に、ギラギラとした視線を向ける。
「奈緒様、失礼します」
そう言って、舌先で足の指を舐める。
「あっ」
くすぐったくて、変な声が出てしまった。
妖艶な目で、私を見る美沙。
私の目を見たまま、足の親指を口にくわえた。
部長の舌先が、足の腹や爪の間、指と指の股の部分を這っていく。
真っ赤な顔で、鼻息を荒くしながら、私の目を見つづける美沙。
私も、美沙から目が話せなかった。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
親指から始まったそれは、小指に至るまでていねいに行われた。
誰も何も喋らず、指を舐める水音と美沙の鼻息だけが部室に響いていた。
「さて、今日はこれくらいにしましょうか」
藍花の声で、はっと我に帰った。
「どうです、長沢先輩、楽しかったですか?」
「ええ、楽しかったわ、藍花さん」
「ですって、古賀部長。よかったですね」
「え、ええ…」
小さな声で返事をする部長。
「じゃあ、帰りましょうか。ほら、部長、もう服を着ていいですよ」
興奮が徐々に落ち着き、我に帰ったのか、恥ずかしそうに胸と股間を隠している。
下着を身につけ、ジャージを着る部長。
「じゃあ、私、部室の鍵を返してくるから」
そう言って、部長は校舎のほうへと走って行ってしまった。
「長沢先輩」
「ん、何?」
「先輩、だいぶ興奮なさってましたね」
「そ、そうかな?」
「ふふっ」
イタズラっぽく笑う藍花。
その表情にドキッとしてしまう。
「先輩も、私たちの調教に加わりますか?」
「えっ?」
「いいですよ、先輩なら。口も堅そうですし。どうしますか?」
先ほどまでの古賀部長が、脳裏に浮かんで消えない。
部長の赤く火照った顔。
切なげな目。
きれいな肢体。
控えめな胸。
黒い茂み。
そして、足を舐める水音と、荒々しい息遣いが、耳から離れない。
私は…
「うん、私も加えてほしいな」
「ふふ、やっぱり。じゃあ、よろしくお願いしますね、先輩」
「うん、よろしく」
「でも…」
「ん?」
「長沢先輩は、どっちなのかな」
「どっちって、何が?」
「古賀部長は、後輩に責められるのが好きで、私は先輩を責めるのが好き。でも、長沢先輩は、どっちなのかな、って」
「…え?」
「古賀部長を責めてる時の先輩、とても興奮してました。でもそれは、あの部長に足を舐めさせてるってことに興奮してたんですか?それとも、後輩にあんなことさせられてる古賀先輩に自分を投影して、興奮してたんですか?」
「あ、藍花、何を言って…」
「先輩、もしかして、ですけど、先輩も古賀部長と同じ、ですか?」
藍花の目。
古賀部長の時とは別の意味で、私はその目からそらせることができなかった。
「長沢先輩も、古賀部長と一緒に、私に責めてほしいのかな?どうなんですか、長沢先輩?」
「え、と…」
藍花が顔を近づける。
「全裸になって、跪きながら、私の足、舐めてみたいんでしょ?どうなの、奈緒…」
耳元で囁やく。
その瞬間、脳が痺れたように感じた。
「あ、あの、私は…」
背中に汗が流れた。
「あ、部長が出てきた」
「えっ」
藍花の視線の先を見る。
校舎から出てくる部長が見えた。
緊張が解け、ホッとする。
「明日、部活が終わったら、また部室で会いましょう。いいですね、奈緒センパイ?」
目の前にいる少女。
私よりも年下だし、小柄でもある。
しかし、私は彼女には逆らえないことを悟った。
私は、彼女に服従し、支配されることを望んでいる自分に気づいてしまったのだ。
古賀部長のように…
「ん、まあ、いいけど」
気持ちを悟られないよう、精一杯の強がりでそう答える。
しかし彼女は、全てを見透かしたような目で笑うのだった。

コメント

  1. スキー より:

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    やっぱり調教シーンはとても良いですね!
    奈緒ちゃんが藍花ちゃんに調教されるシーンも見てみたいと思いました!
    いつもマゾに堕ちたところで終わってしまうので、その続編の甘々な番外編みたいのも見たいと思っちゃいます笑
    いつも陰ながら応援させて頂いてます!
    すてきな作品をありがとうございます。

  2. みどり より:

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    普通に服を着ている後輩の前で1人全裸で跪く部長の姿が屈辱的で最高でした!

  3. slowdy より:

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    > スキーさん
    ありがとうございます!
    書いていて、マゾに堕ちたところでいったん満足してしてしまって、そこで書き終えてしまうんですよね…汗
    今書いているのがひと段落したら、後日談にも着手してみようかと思います。
    応援、ありがとうございます!
    今後も少しずつ書いていけたらと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

  4. slowdy より:

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    > みどりさん
    今回の見せ場の一つが、そこでした。
    1人だけ服を着ていないというのも、視覚的にも心理的にも立場の違いが明確になって、いいなぁと私も思います。
    いつも、ありがとうございます!