duality 後編 (部室内のディクテイター 後日談)

椅子に座り、足を組みながら私を見上げる藍花。
その前に立つ。
「ほら、見ててあげるから、ここで裸になりなさい」
「わ、わかりました…」
震える手で、服を脱いでいく。
下着姿になる。
同性に裸を見られることに、そこまで抵抗があるわけではない。
しかし、相手は後輩だ。
後輩に命令され、裸体を晒そうとしている。
猛烈な恥ずかしさと、屈辱感と、情けなさ。
そして、言いようのない体のたかぶり。
「手が震えてるよ?緊張してるの?それとも、私に命令されて興奮しちゃってるのかな?」
反論する余地も、気力もない。
ブラのフックに手をかける。
外したブラを、そっと置く。
見られている。
私の胸が、藍花に晒されている。
ショーツに手をかける。
ゆっくりと、下ろしていく。
そして…
「ぬ、脱ぎました…」
とうとう、一糸まとわぬ姿になってしまった。
「次に何をすればいいか、分かるよね、センパイ?」
「えと…はい…」
先ほど、部長が私たちにされていたことを思い出す。
ゆっくりと、床に膝をつく。
両手をつき、藍花の前で四つん這いになる。
「さすがに、今回はお尻ダンスは勘弁してあげる。でも、後で好きなだけさせてあげるから、そのつもりでいなさい」
「は、はい…」
「どう、センパイ?こうして全裸で私にひざまずきたかったんでしょう?嬉しい?」
「う、嬉しい、です」
あまりの興奮で、自分が何を考えているのか、よく分からなくなってくる。
あまりにも倒錯したこの状況に、私の頭も体も、ただただ熱く反応している。
「嬉しかったら、ちゃんとお礼を言いなさい」
「あ、ああ、あ…」
口の中がカラカラで、うまく喋れない。
「何を言っているのか分からないんだけど?」
「あ、ありがとう、ございます…」
ようやく、言葉にすることができた。
「ねえ、センパイ。センパイが今、何をしているか分かってる?」
「あ、あの…」
「さっきまではセンパイの方が立場は上だったの。でも今は私の方が立場は上なの。それは分かるよね?」
「は、はい、分かります…」
「部長をいじめている時、どんなことを考えていたのか。これから私にどんなことをされたいのか。言いなさい、奈緒」
呼び捨てにされ、胸の奥が締め付けられる。
もう藍花は、私にとってただの後輩ではなくなっていた。
逆らうことのできない、絶対的な存在だった。
「ぶ、部長をいじめている時、もし私が、部長と同じ立場だったら…後輩の前で、裸で、ひざまずくことになったら、どうしようって、思ってました」
「今まさに奈緒が置かれている状況じゃない。それでどう、実際にそうなった感想は?」
「す、すごく、恥ずかしい、です…」
「そうみたいね。耳まで真っ赤になっちゃって。それで?」
「恥ずかしくて、情けなくて、惨めで、悔しいです」
「そう。でも奈緒はそうしたかったんでしょ?」
「そう、です…」
「奈緒は部長と同じ、マゾなの。年下の女子に命令されて、恥ずかしいことさせられるのを望んでいるヘンタイさんなの。初めて見た時から、そうだろうとは思っていたけどね」
靴を脱いだ藍花が、私の頭に足を乗せた。
「ほら、こんなことされたら普通は怒るのよ?だってそうでしょ?誰だって頭を踏まれたら頭にくるし、プライドだってあるし。でも、部長や奈緒みたいな人は違う。恥ずかしくて、情けなくて、惨めで、悔しくて…でも、それで、体がたかぶってしまうのよね」
頭に乗った足が、グリグリと動く。
「嫌なはずなのに、命令されたい、はずかしめられたい、奉仕させられたいって、考えてしまうの。分かるでしょ?」
「わ、分かります…」
「さっきまでは私と一緒に部長をいじめる側だったのにね。あなたはもう、責める側ではなくて、責められる側なの」
「は、はい…」
「ほら、私にどうされたいのか言いなさい。聞いてあげるから」
「あ、あの…」
「大丈夫よ、誰にも言わないから。それに、いまさら隠しても遅いでしょ?あなたが何をされたいかなんて、だいたい分かってるんだから」
「あ、う…」
「ほら、言っちゃいなさい?言って、楽になりな?とっても恥ずかしいこと、されたいんでしょう?この、ヘンタイマゾ」
体に電気が走る。
「ふふ、今ので感じちゃったの?まだ早いよ?」
頭の上から、重さがなくなった。
代わりに…
藍花のつま先。
私のあごに触れ、そのまま無理やり上を向かされた。
藍花と目が合う。
椅子に座り、私を見下ろす藍花。
全裸でひざまずき、藍花を見上げる私。
もはや、先輩と後輩ではなかった。
目をそらしたいが、藍花のつま先が私の顔の向きを固定していて、動かせない。
「部長のように、私も、恥ずかしいことさせられたいです」
藍花の目を見て言う。
言ってしまった…
「藍花に命令されたり、藍花の足を舐めたり、させられたいです…」
心臓がバクバクする。
口の中が乾く。
何も言わず、ただ笑って私を見下ろしている藍花。
「私を、藍花のペットに、してください…」
「ねえ、なんで呼び捨てなの?」
「えっ」
「ペットにしてほしいなら、ペットらしく、ご主人様に振る舞いなさい」
圧倒的な目力。
私よりも年下の女の子とは思えないほどの迫力。
私や部長のような、年下の女の子に屈服されたがっているマゾヒストもいれば、彼女のように年上だろうと誰だろうと屈服させて従わせてしまうサディストもいる。
『人間て、誰でもSな部分とMな部分の両方を持ってるんです』
先ほどの、藍花の言葉。
彼女に限っては、生粋のサディストとして生まれたのではないか。
そう思ってしまう。
「あ、あいか、さま…」
言った瞬間、背中がゾクゾクっとした。
もう一度、確かめるようにご主人様の名を口にする。
「藍花さま、私の…ご主人様になって、ください…」
藍花様のつま先が離れていく。
何も言わず、冷たい笑顔を浮かべながら私を見下ろす藍花様。
私は額を床につけ、もう一度、ご主人様の名前を呼ぶ。
後頭部に、ズシリとした重さが加わる。
「奈緒は、私のペットになりたいのね?」
「は、はい!ペットに、してください…」
「一度なってしまったら、もう後戻りはできないわよ?」
藍花様の足が、私の髪をかき乱す。
「は、はい、分かっています…」
「あなたも知ってるでしょ?私に責められた古賀部長がどうなったか」
テニスが誰よりも上手くて、勉強もできて、周囲からの人望もある。
自分にも他人にも厳しく、ストイックな人。
部内に限らず、彼女に憧れの念を抱いている生徒は多い。
しかし…
実際は、年下の女の子に責められ、はずかしめられることを望む、マゾヒストだったのだ。
自らの願望を満たすために、プライドをかなぐり捨て、後輩の目の前で自ら望んで裸になり、靴下のニオイを嗅いだり、汚れた足を舐めることに性的なよろこびを見出すヘンタイだったのだ。
元々、少なからずそういう願望を持っていたらしいが…
藍花様にそのことを知られてしまい、秘めた願望はさらに彼女の中で強く根付き、育て上げられてしまった。
藍花様のいない2年間、彼女は己の願望を内に秘め、克服しようとしていたのかもしれない。
しかし、再び現れた藍花様によって、たった1日でその努力が水泡に帰してしまったのだ。
「もう、一生私のペットなのよ?一生、私に支配されるの。断るなら今のうちですよ、センパイ?」
今断らなければ、彼女の言うように一生支配されてしまう。
彼女は私のマゾヒストとしての性癖を根付かせ、さらに大きく育てあげるだろう。
私はそんな彼女の顔色を伺い、尻尾を振りながら生きていくのだ。
そんな屈辱…
マゾヒストとして目覚めてしまった私の前に、こんな理想的なご主人様がいる。
こんな屈辱的なことをしてくださる、素晴らしい少女。
それなのに、彼女に支配されることを拒めるマゾヒストなどいるのだろうか。
「ねえ、長沢センパイ?」
甘い、脳が溶けてしまいそうな、蠱惑的な声。
後頭部から、足が退けられる。
「ねえ、長沢センパイ、見てください」
顔を上げる。
美しく、可憐な支配者がそこにいた。
「ねえ、センパイ、私のここ、舐めたいんでしょ?」
靴下を脱ぎ、素足を晒す藍花様。
先ほどの、私たちの足を貪るように舐める古賀部長がフラッシュバックした。
今度は、私が藍花様の足を…
藍花様の足。
その指が、私を誘うように動く。
思わず、喉を鳴らしてしまう。
「あ、そうだ」
藍花様が、手の指先で足を差す。
そして、ゆっくりとその指を動かしていく。
くるぶし。
ふくらはぎ。
太もも。
鼠蹊部。
そして…
「私のここ、舐めてみたい?」
「えっ」
「今日だけ特別。私のここ、センパイになら、舐めさせてあげてもいいですよ?」
「え、と…その…」
鼓動が早くなる。
視線がその一点がら動かせなくなる。
予想していなかった言葉に、思考がフリーズする。
「古賀部長にもまだ舐めさせてあげたことのない、私の初めて…長沢センパイ、もらってくれますか?」
目の奥がチカチカする。
「私のここ、ペロペロ舐めるワンちゃんにしてあげます」
「ほ、本当ですか?」
「本当ですよ。これからも、いい子にしてたら時々舐めさせてあげます」
心臓の音。
藍花様の声。
「そのかわり、もう長沢センパイは先輩じゃなくて、私のペットです。私のここを舐めたくて舐めたくて仕方のない、ペロペロワンちゃんです。だから、これから一生をかけて私に誓うのですよ?分かりましたね?」
「わ、分かりました、藍花様…」
「よろしい。それでは、ここに誓いのキスをしなさい、奈緒」
「は、はい!」
藍花様が立ち上がる。
私は、これから私が一生をかけてお仕えすることになる少女を見上げる。
ジャージに手をかけ、ゆっくりと、焦らすようにおろしていく。
それを、固唾を飲んで見守る私。
可愛らしい下着が現れた。
普段なら何とも思わないはずの、同性の下着。
しかし、今の私にとっては、それはあまりにも眩しすぎた。
「ほら、しっかり見なさい、奈緒。あなたが今後、一生をかけて忠誠を誓うご主人様の、大事なところなのよ?」
下着に手をかけるご主人様。
「物欲しそうな顔をして…あなた、今すごい顔してるわよ?写真を撮って、後で皆に見てもらいたいくらい」
下着が、ゆっくりと下される。
視界に入った、藍花様の大事なところ。
「ここにキスをした瞬間から、お前は私のペットになるの。ほら、誓いなさい、奈緒」
「はい、藍花様…」
熱に浮かされたように、ご主人様の名を呼ぶ。
顔を、ゆっくりと近づけていく。
「私は一生、藍花様のペットです。どうか私のご主人様になってください、藍花様…」
口付け。
今ここで、長沢奈緒は、部の後輩であった上村藍花様のペットとなった。
「これからいっぱい、恥ずかしいことさせてあげる。古賀部長と同じ、いや、部長以上に性癖が歪んでしまうくらい。覚悟してね、私の奈緒…」

コメント

  1. fan より:

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    いつも素敵な作品をありがとうございます!
    藍花が足で奈緒を蹂躙する様がリアルで、読んでいてとても興奮しました笑
    奈緒はこれから部長に対してどういう立場で接していくのでしょうか笑
    今作ももっと読みたいと思いましたがこれで終わりなようなので、次作を楽しみに待ってます!

  2. slowdy より:

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    > fanさん
    ありがとうございます!
    後編では視覚的な表現も意識してみました。
    藍花の足の指の動きであったり、つま先で奈緒の顔の向きを変えたり等々。
    今後の奈緒ですが、部長に対してはSなのですが、藍花からはMとして責められる感じかなーと思っています。
    「部長にあんなことして、本当は私にこうされたかったんでしょう?」のような感じで笑
    書きやすいテーマだったので、更に深く掘り下げられそうではあるのですが、一旦ここまでとさせていただきます。
    次回作も楽しんでいただけるよう頑張ります!