カメラ!カメラ!カメラ! 1話

3月の上旬、一人の女の子が隣の部屋に引っ越してきた。
まだどこか、幼さの残る顔立ちの彼女は、岩崎瀬里奈と名乗った。
今年の4月から、こちらの方の大学に通うとのことだった。
会ったばかりの頃は緊張している様子だったが、何度か顔を合わせることがあり、徐々に打ち解けてきた。
「葉月さん、おはようございます」
朝、ゴミを出している時、後ろから声を掛けられた。
「あ、瀬里奈ちゃん、おはよう。これから学校?」
「はい、今日は一限から講義があって」
早起きは苦手なんですけど、と苦笑する。
ふと、瀬里奈が持っているものに気付く。
「あれ、瀬里奈ちゃん、それって…」
「あ、そうなんです。私、カメラが好きで…写真サークルに入ったんですけど、今日の午後、サークルの皆で撮影に行ってくるんです」
一眼レフカメラ…
昔の記憶が蘇りかける。
「もしかして、葉月さんもカメラ好きなんですか?」
キラキラとした目で見つめてくる瀬里奈。
「ええと、好きというか、私も昔、カメラをやってた事があって。といっても本格的やってた訳じゃないから、知識も技術もないんだけど」
「でも、嬉しいです。カメラに興味がある女性って、私の周りにはあまりいなかったから…」
本当に一時期、友人の影響でやったことがある程度なので、嬉しそうな彼女を見ているとかえって申し訳ない気持ちになる。
「瀬里奈ちゃん、時間は大丈夫?」
「あ、いけない、もう電車来ちゃう!それじゃ葉月さん、失礼します。今度一緒にカメラの話しましょう!」
そう言って、走り去っていく。
苦笑しつつ、私は自室へ戻った。
夢を見た。
学生の頃の夢。
もうすっかり忘れかかけていたはずの記憶。
「葉月さん、可愛いですよ」
千秋の声。
かつて学生だった頃、私が所属していたサークルの後輩。
そして、私の恋人だった人。
カメラを構えた千秋の前で、私は服を脱いでいく。
裸は何度も見せ合った仲なのに、写真を撮られるのは何だか恥ずかしい。
下着姿になる。
シャッターを切る音。
思わず、手で身体を隠そうとする。
「ふふ。葉月さん、恥ずかしいんですか?」
「恥ずかしいよ…」
「赤くなってる葉月さん、なんか可愛い」
「年上をからかわないの」
強がるが、カメラの前にいると、心許無く感じる。
「じゃあ、下着も、全部脱いでください」
「う、うん…」
ブラを外し、ショーツを脱ぐ。
その間も、シャッター音は続いた。
撮られるのが恥ずかしくて、何度も手で隠そうとしたが、その度に千秋に止められた。
一糸纏わぬ姿になる。
手で隠すことを禁じられ、胸も、大事な所も、千秋の前に晒されている。
私の身体を、千秋は何枚も何枚もカメラに収めていく。
シャッターを切る音。
私のあられもない姿が、写真として記録されていく。
普段は年上としての余裕を保てているが、今の千秋には何となく逆らえないような気がする。
私だけ、裸だからなのか。
カメラを向けられているからなのか。
カメラが趣味の千秋。
どこへ行くにも、カメラと一緒だった。
私の裸の写真を撮りたいという、彼女のお願い。
何度も断ってきたが、あまりに真剣にお願いしてくるものだから、一回くらいなら、という条件で撮らせてあげることにしたのだ。
実際、千秋の前で裸になり、カメラを向けられていると、千秋に服従しているような、そんな気がしてくる。
それを千秋に悟られないようにしないと、と平常を装うが…
「葉月さん、顔が真っ赤ですよ」
「う、うるさいよ、もう」
これまで経験したことのない感情。
千秋に組み伏せられたい…
千秋に命令されたい…
千秋にもっと恥ずかしい写真を撮られたい…
湧き上がってくる感情に戸惑う。
これまで年下の女の子として扱ってきた千秋に対して、何故こんなことを思うのか。
「葉月さん、目がトロンとして…なんか、エッチですよ」
「こ、こら、調子に乗らないの」
千秋には、この感情を知られてはならない。
知られたら、これまでの関係性が大きく変わってしまう。
でも…
理性ではなく本能が『彼女に服従したい』『私の全てを撮ってもらいたい』と囁く。
私に恥ずかしいポーズを要求する千秋。
そして、シャッターを切る音。
一回だけ。
撮影は、この一回で終わりなのだ。
だったら、千秋にバレなければ…
私は、嫌がっている素ぶりを見せつつ、内心嬉々として千秋の命令に従った。

コメント

  1. ファン より:

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    めっちゃ楽しみにしてました!!
    続きも楽しみにしてます!

  2. slowdy より:

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    >ファンさん
    コメントありがとうございます。
    お待たせいたしました!
    楽しんでいただけるような作品をお届けできればと思います。
    今回も、一週間おきのペースで更新していけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。