Brave New World 五日目 3/4

気が付いた時、茜に頭をなでられていた。
私が気を失っている間に目隠しを外してくれたらしい。
お互い目が合い、訳も無くニヤけてしまう。
私が茜の身体に摺り寄ると、茜はやさしく抱きしめてくれた。
しばらく無言のまま、二人で甘い時間を過ごした。
「じゃあ、そろそろ飛びっこ使ってみよっか」
茜は傍らに置いてあったおもちゃを手に取った。
「これを使った面白い遊びがあるんだけど、まだ早いかもしれないわね」
「面白い遊び?」
「そう。これを入れながらデートするの。周囲の人に気付かれないように、必死で我慢する友子の可愛い顔、早く見たいなあ」
「ちょ、ちょっと待って。周囲の人って…それ付けたまま人前にでるんですか?」
「心配しなくても、外から見ただけじゃ友子が飛びっこ入れてるなんて分からないわ。あくまで外見上はだけど」
「いや、でも…」
「恥ずかしい?」
「はい」
「でも、友子は恥ずかしいの好きでしょ?」
「そ、それを言われると…」
茜が笑った。
顔を寄せてくる。
頬に口付けされた。
「とにかく今日は楽しみましょ?」
膣に何かが入ってきた。
「さっきのおかげで割とすんなり入ったわね。どう?痛くない?」
「平気、です。少し異物感があるけど…」
玄関のチャイムが鳴った。
下で、茜のお母さんがインターホンに出たらしい。
「茜ー!お友達がいらっしゃったわよー!」
茜の顔が少し曇った。
「少し待ってて下さい。すぐに戻ってきます」
起き上がって、茜は部屋を出ていった。
茜の声が聞こえた。
身体が火照っている。
早く友達にお引取り願いたかった。
茜が飛びっこと呼んでいた物は、まだ中に入ったままだ。
継続的な振動が内側へ伝わってくる。
「ふ、くぅ、んんっ」
大きな声をあげそうになるのをかろうじて抑える。
頭の奥が痺れてきた。
「あっ、か、ねぇ…」
次第に切なさがつのってくる。
階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
我慢していたものが、一気に吹き上げてくる。
「あかねぇ…」
「友子さん、隠れて」
どうしたのか聞き返す間もなくクローゼットの中に押し込められた。
訳がわからない。
「しばらくその中に入っていてもらいます」
「ねえ茜、いったい…」
そこまで言いかけて、止めた。
茜の目に妖しい光が宿っている。
何か企んでいる時の顔だと思った。
脱いであった制服や下着もクローゼットに入れてくる。
下で人の話し声が聞こえた。
「茜、まさか」
茜は不敵な笑みを浮かべた。
嫌な予感は的中したらしい。
「ち、ちょっと待って、さすがにそれは無理!見つかったらどうするの!」
人差し指を私の唇に当ててきた。
「声を出さなければ大丈夫ですよ。下で待たせてるんで、そろそろ呼びますね」
クローゼットが閉じられた。
そのまま、茜は友達を呼びに行ってしまった。
突然の展開に、頭がパニックに陥っている。
緊急事態だったが、どうしていいか分からない。
部屋の明かりが入り込んでいる隙間があったのでそこから覗き込んでみた。
一応、私が居たという形跡は残っていない。
私のかばんが見当たらないのは、おそらく茜がどこかに隠したからだろう。
とにかく、茜達が来る前に服だけは着ておこうと思った。
クローゼットの中はせまく薄暗い。
しかも両手が縛られたままなので服を探しにくいことこの上ない。
両手のヒモを解こうとした時、階段を上ってくる足音が聞こえた。
心臓が飛び跳ねた。
明らかに茜以外の足音も聞こえる。
ドアの開く音がした。
「ごめんね。部屋が散らかってて、片付けるのに時間掛かっちゃった」
「ううん、こちらこそ突然ごめんね」
聞き覚えのある声だった。
隙間から、茜と松山の姿が見えた。
他愛の無い話が始まり、それは止まる気配がなかった。
どうにかしなければならない。
自分の存在に気付かれたら取り返しのつかない事になる。
それは分かっていた。
分かってはいたが、別の思いもあった。
衝動というべきか。
その衝動を必死に押し殺す。
これだけは絶対に認めるわけにはいかなかった。
服を着よう。
服さえ着ていれば悪の事態は避けられる。
ヒモを解こうと身じろぎする。
「あれ?今何か音がしなかった?」
全身が硬直した。
手を動かした時音を立ててしまったらしい。
茜がうまく誤魔化してくれたおかげで事なきを得たが、全身に鳥肌が立った。
この中で身体を動かすのはやめたほうがいい。
やり過ごすしか方法は無いようだった。
突然、飛びっこのスイッチが入った。
「ひぁっ」
思いもかけなかった不意打ちに、声を抑えることもできなかった。
「ねえ、やっぱり…」
「お母さんが下でテレビを観てるんじゃない?時々この部屋まで音が届く時があるの」
松山は納得しきれない風ではあったが、それ以上深く追求してこなかった。
その後も茜は突然スイッチを入れてきた。
最初は声を抑える事で精一杯だった私も、次第に状況を楽しむ余裕が出てきた。
すぐ近くにこんな情けない格好をした私がいるなどと、松山は想像すらしていないだろう。
背徳感のようなものが私を包んだ。
「そういえば、柏木先輩の事なんだけど…」
私の心臓が松山の口から出てきた。
心臓を掴まれたかと思った。
「茜ちゃんは、柏木先輩の事どう思ってるの?」
茜が動揺する気配が伝わってきた。
「今日の柏木先輩、いつも以上にかっこよくなかった?」
「そ、そう?まあコンクールも近いし、張り切ってるんじゃないかな」
「知ってるかもしれないけど、部員の中で柏木先輩狙ってる子って結構多いんだよ?」
「え?ね、狙ってるって…でも女の子同士でしょ?」
「愛に性別は関係ないもの」
なんというか…時々部員から熱い視線を感じることはあったが、あれはそういう事だったのだろうか。
「もしかして、松山さんも?」
「実は、私も少し憧れてたりする」
「そうなんだ…」
ここからでは、茜の表情を窺い知ることはできない。
「まあ、これが恋なのかどうかは分からないけどね。尊敬を恋と勘違いしてるだけかもしれないし。でも、好きなのは確かよ」
冗談とも本気とも取れる言い方だった。
「柏木先輩、付き合ってる人いるのかなあ」
「うーん、どうだろうね。そういうウワサ聞いたことないけど」
「でも、いてもおかしくはないよね。柏木先輩なら他校の男子も放っておかないだろうし」
「確かに、柏木先輩って美人だもんね」
「美人だし頭もいいし、キリっとしててかっこいいし。憧れるなあ…」
松山はそういって溜め息をついた。
憧れる、か。
その憧れの柏木先輩は、今こうして全裸でクローゼットに隠れている。
あられもない姿で、スリルを感じながら興奮している。
松山がいまの私を見たらどう思うだろうか。
失望し、幻滅するだろうか。
罵り、嘲笑うだろうか。
想像しただけで達してしまいそうになる。
「茜ちゃん、お手洗い借して?」
「うん、いいよ」
松山が部屋を出て行くと同時に、茜がクローゼットに近寄ってきた。
クローゼットが開かれる。
「友子さん、今の話聞いてたんでしょ?」
口元に笑みを浮かべて茜が見下ろしている。
「松山さん、友子さんのこと何て言ってました?」
「あ、憧れてるって、言ってた」
「そうね。美人で頭も良くてかっこいい友子さんのこと憧れてるって言ってましたね」
「うん…」
「でも、松山さんが今の友子さんを見たらどうなるかしら」
「そ、それは」
「それは?」
「多分、け、軽蔑すると、思う」
「軽蔑するの?どうして?」
「ここで、こんなカッコしてるから…」
「そうね。キリっとしててかっこいいはずの先輩がこんな格好してたら松山さん驚くわよね。でも、それだけじゃ軽蔑される理由にならないんじゃない?」
からかうような笑顔で私の顔を覗き込んでくる。
「わ、私が、マゾだから…」
言いながら、愛液が溢れ出てくるのを感じた。
「確かに、友子さんがマゾだって分かったら松山さんがっかりするでしょうね。なんせ憧れの先輩が実はこんなにヘンタイさんなんだもの」
「うう…」
「感じてたんでしょ?私達の会話を聞きながら」
「それは…」
「松山さんに見てもらいたいんじゃないの?ありのままの友子さんを」
「そ、そんな事…」
「嘘。分かってるんだから。こんなに濡らしちゃって、もうビショビショじゃない。想像して興奮してたんでしょ」
「は、はい…」
うふふ。もうじき松山さん戻ってくるわよ。見てもらったらどう?」
階段を上ってくる音が聞こえてきた。
「いじわるしないで…」
そう言っても、湧き上がる期待は膨れ上がる。
茜はそんな私を見て微笑み、そっと口付けしてきた。
クローゼットを閉め、茜は何食わぬ顔で松山を迎えた。
再び会話を始める二人。
息苦しいほどに鼓動が速くなっている。
呼吸を整えなければ。
そう思った途端、秘部に電流が流れた。
「きゃふっ」
入ったままになっていた飛びっこに、茜がスイッチを入れたらしい。
またもや不意打ち。
スイッチが切れほっとした瞬間、またスイッチが入れられる。
それが何度も何度も続いた。
必死に声を我慢するほど、気持ちが高ぶってくる。
茜は何食わぬ様子で松山と会話している。
スイッチを入れるタイミングが絶妙で、その度に声を出しそうになる。
いつ松山にバレてもおかしくない、そんなスリルさえ快感に変わってしまう。
『松山さんに見てもらいたいんじゃないの?ありのままの友子さんを』
さっきの茜の声が頭の中でリフレインする。
クローゼットの中の私を見つける松山。
驚いた松山の顔がやがて軽蔑へと変わり、私を罵り始める。
跪く私を松山は嘲笑し、やがて命令をくだす。
惨めな私は言うがままになり、松山に尽くすのだ。
つま先に口付けし、松山の大事な部分を舌で丁寧に清める。
それから…
妄想はさらに広がり、次第に現実と交じり合った。
夢か現かも分からぬ世界で、私はただただ後輩に辱められ続けた。

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