ポニーガールとご主人様 第四章(2)愛玩動物たちのドッグレース

三脚で固定された、藤崎のスマホ。
藤崎の提案で始まった屈辱的な遊戯は、もちろんしっかりと記録される。

最初は三井から。

ベッドに腰かけたふたりと、その足もとに正座する三井。
私は、三井の横で同じく正座している。
三井が後輩ふたりのくつしたを嗅がされる様を、間近で見させられるのだ。
三井のブザマな姿。
それは、数分後の自分の姿でもある。

三井が、藤崎から手渡されたアイマスクを付ける。
手がふるえ、息が荒い。
緊張ではない。
体が、脳が思い出しているのだ。
藤崎に受けた調教の記憶を。

「ねえ、どうしたんですか、三井センパイ。そんなに息を荒くして」
新田がイジワルそうにたずねる。
「コーフンしてるんでしょ。そうだよね。アッキー?」
「は、はい…」
三井の上ずった声。
こちらにまで伝染してきそうな昂り。

「それじゃ、いきますよ。まずはひとり目ね」
新田が右足を上げる。
そのまま、三井の顔に足の裏をあてる。
「ほら、かぎな?クンクン、クンクン…ご主人様のニオイはどっちかな?」
藤崎がからかう。

三井。
新田の足を両手で持ちながら、息を大きく吸っている。

スーッ…
スーッ…

新田のくつしたのニオイ。
めいっぱい、胸に取り込む。

スーッ…
スーッ…

全頭マスクに馬のコスプレをした女。
首からぶら下がった、学生証。
そこには、凛々しい表情をした三井が写っている。
そんな彼女が今…
新田のくつしたのニオイを一心不乱に吸い込んでいる。
こんな情けない姿をした女が彼女だと、誰が信じるだろう。

「はい。おしまーい!」
「ほらアッキー、離しな」
名残惜しそうに、足から手を離す三井。
「じゃあ次ね。はい、どうぞ」
新田の言葉と同時に、藤崎が足を上げる。
さっきと同じように、両手でつかむ三井。

スーッ…
スーッ…

恥も外聞もなく、ニオイを堪能する三井。

「こうして見ると、ホントにヘンタイって感じがしますね。あの三井センパイがねえ…」

「練習中はあんなに偉そうにしてたクセにね。ほら、クンクン、クンクン…」

「後輩のくつした嗅ぎながらコーフンする、情けないセンパイ?輝かしい未来が、性癖歪まされて台無しにされちゃったね?」

「ほら、腰をモジモジさせんな。ニオイに集中すんの。これで外したらオシオキだかんな?」

スーッ…
スーッ…

三井にとっては馴染み深いはずの藤崎のニオイ。
当てることができるのか。

「はい。おしまーい!」
「ほら、いつまで嗅いでんの。さっさと足離しな」
「ご、ごめんなさい…」

「それじゃ三井センパイ。目隠し、取ってもいいですよ」
アイマスクを外す三井。
「それじゃ、当ててもらいましょうか。まずは最初のくつしたは、誰のだったでしょうか?」
「この人だって思う人の前で土下座しな。アッキー」

ためらうことなく、新田の方を向く三井。
そして…
正座をしたまま、額を床につける。
そんな三井を、ニヤニヤしながら見下ろすふたり。

「はい。じゃあ、ふたり目はどっち?」
三井が、藤崎の方へ向く。
そして。
藤崎に向けて土下座をする。
満足げに笑みを浮かべる藤崎。

「せいかーい」

言いながら、三井の頭に足を乗せる。
「よく分かったじゃん!さすがアッキーだねぇ」
三井の髪をなでるように、足をこすりつける藤崎。
「あっ…ありがとうございます…」

「じゃあ、次は1号、オマエの番な」
新田が、私に向けて言い放つ。
「ほら、1号。さっさと準備しな?」
藤崎。
アンタに1号呼ばわりされる筋合いはない。
エラそうにしてるけど、アンタだって前回のバツゲームでは、あんな姿を…

考えても仕方ない。
新田が、私のご主人様が、それを認めているのだ。
どんな事情があるにせよ…

アイマスクを三井から受け取る。
三井の得意げな表情。
アナタに、当てられるかしら。
そう言っているかのような…

ふたりの前へと移動する。
アイマスク。
付ける。
視界が制限された分、他の感覚が鋭くなった気がする。

目の前にいる、ふたりの気配。
濃厚に、伝わってくる。

ドッ…
ドッ…
ドッ…

心臓の音。

同性の、後輩のくつした。

しかも、練習後の汗と汚れにまみれた…

それを、今から顔に押し付けられる。

嗅がされる。

心の準備ができていない。

でも…

「ほら、いくよ。まずはひとり目ね」
藤崎の声。
「ホレホレ、当てないと、キツいオシオキだぞぉ?」
ご主人様の声。

何かが、顔に近づいてくる。

足。

生暖かいそれを、顔面で受けとめる。

両手でつかむ。

ドッ…
ドッ…
ドッ…

「ほら、さっさと嗅ぎな?アッキーみたいに、クンクンするの。1号ちゃんにできるかな?」
藤崎が、バカにしたように煽ってくる。

息が苦しい…
思い切り、空気を吸い込む。
酸素とともに、鼻腔を抜けて通ってくる。

ツンと鼻をつく、ニオイ。
生乾きの雑巾のような、納豆のような…
微かな甘さと、それを遥かに上回る、酸っぱい臭い。
汗で湿ったそれが、私の顔を汚していく。

と。

私はあることに気付いた。

足の大きさ。
小柄な新田の足と、一般的な大きさの藤崎。
比較をすれば、すぐに分かるはずだった。

迷うことなくニオイの主を当てた三井と、それをすごいと思ってしまった自分。
種を明かせば、そんなものか。
後輩ふたりが、そのことに気付いているのか。
おそらくこれは新田の足だろう。

「はい、おしまい」
藤崎の声。
両手を離す。
足が離れていく。

もう、顔面に足の裏はない。
それでも、ニオイは消えない。
息をするたび、あの臭いが鼻腔を抜けてやってくるのだ。

次は、藤崎のはず。

この後、藤崎に顔を踏まれる。
くつしたのニオイを嗅がされる。
お前も、マゾのくせに…

笑い声。
藤崎が笑っている。

私を1号などと呼んでいるが、彼女は私の正体を知っている。
部活中の、先輩として振舞う私。
今の、滑稽でブザマな私。
比べているのか。
笑い声。
また!

でも、逆らえない。
私や三井と同じマゾ。
でも、私たちより格上の。
同じマゾでも、そこには序列があるのだ。

「1号、準備はいい?」
藤崎の声。
屈辱を堪えて、うなずく。

「じゃあふたり目ね。誰だろー?1号ちゃんに、分かるかな?」
バカにするな!

足。
顔に乗せられる。
両手でつかむ。
大きい。
さっきの足より、明らかに大きな足。

「1号、ニオイ嗅ぎな」
ご主人様の命令。
藤崎の笑い声。

スーッ…
スーッ…

藤崎のニオイをおもいきり吸い込む。

「ほらほら、1号、さっきのニオイとの違い、分かるかな?ちゃんと嗅いで、ご主人様に褒めてもらおうね?」

悔しさとともに、取り込んでいく。

染み込んでいく。

藤崎のニオイ。

「はーい、そこまで!」

両手を離す。
「まだ、目隠し外すんじゃないよ」
ベッドの上で、ふたりが身じろぎをする。

「よし、いいよ。目隠し、外しな」

ご主人様の声。
アイマスクを外す。

「ちゃんと分かっただろうね、1号」
ご主人様。
その様で、藤崎がニヤニヤしている。
三井を見る。
アンタなんかに負けないんだから…
笑いながら、目でそれを伝える。
ふふん、と、三井が鼻で笑った。

「ほら、よそ見すんな1号」
藤崎に怒られ、頭を下げる。
「じゃあ、答え合わせね。最初のくつしたは誰のかな?」

すかさず、新田のほうを向く。
そして、深々と頭を下げる。

「よぅし。じゃあ、ふたり目は?」
頭を上げて、藤崎に向き直る。
そして…
再び、額を床につける。

「それが、1号の答えね?」
藤崎の声に、沈黙で応える。

しばしの間。

もったいぶっちゃって。

焦らさないでよ。

しかし…

「ざんねーん!」

藤崎の声。
えっ!?
あわてて顔を上げる。

う、うそでしょ!?
うそですよね!?
ご主人様を見る。
口もとに笑みを浮かべたまま。
首を横に振るご主人様。

だって、一人目はご主人様だったはず…

「じゃあ、正解発表ね。ひとり目は確かに新田だったけどぉ…」

そこまで言われて、ようやく気付いた。
もう一つの可能性。
でも…
でも、そんなことって…

「ほら、こっちに来な」
藤崎に呼ばれてやって来たのは…

「ふたり目は、アッキーでしたぁ!」

三井。
全頭マスク越しの目。
笑っている。
さっきの薄ら笑いの意味を、ようやく理解した。
はらわたが、煮えくり返る。

「アハハ!ごめんごめん!そんなに怒らないでよ」

悔しい!
悔しい!

「今のはさすがにイジワルだったね。だからオシオキは勘弁してあげる」

ご主人様の言葉で、ようやく怒りがおさまってきた。
でも…
三井。
許せない。
ふたりと一緒になって、私をバカにして。
睨みつける。
三井も、負けじと睨みかえしてくる。

「あら?ペット同士、対抗心をむき出しにしちゃって」
藤崎が笑う。

「じゃあ、次のゲームしよっか。今度は1号と三井センパイ、一緒にさせるかんね。負けたほうにはオシオキだから、覚悟しなよー?」

望むところだった。
ゼッタイ、負かす。
それで、アンタの情けない顔を見て、嗤ってあげる。

ベッドに腰かけた新田と藤崎。
ふたりに尻を向けるように、四つんばいになる私と三井。

「ルールはカンタン。私たちのどちらかが投げたものを、口にくわえて持ってきたほうの勝ち。歩いちゃダメよ。ハイハイしながら取ってくるの。分かった?」
「はい」
三井が返事をする。
私もうなずいた。

「さっきも言ったけど、負けたほうはオシオキだかんね!いくよ…」
「それっ!」
黒い影が、私たちの頭を越えて飛んでいく。
と。
「ほーら、早く取りにいけー!」
ご主人様の号令。

部屋の隅に落ちたそれに求めて、2匹のペットが這い進む。
幸い、『それ』が落ちた場所は、私のほうが近かった。
勝った!
『それ』に顔を寄せて、くわえる。

布。
いや、ポリエステルか。

口内に苦みが広がる。
鼻腔に嗅ぎ覚えのあるニオイ…

くつしただった。
くつしたを取ってこさせられているのだ。
ただ、考えていても仕方ない。
急いで、ご主人様たちのもとへと戻る。

藤崎。
片足だけ裸足だった。

と。
三井が体をぶつけてきた。
少しよろけたが、なんとか持ちこたえる。
そして…

藤崎の足もとで、顔を上げる。
私がくわえていたものを、持ち主が取る。

「勝ったのは、1号!」

やった!
勝った!

三井を見る。
悔しそうに、私を睨んでいた。
ふふっ、いい気味。
ご主人様たちと一緒に私を嗤った罰だ。

「それじゃ約束どおり、負けてしまった三井センパイにはバツゲームが執行されまーす」
「ねえねえ、何させるの?」
興味津々な藤崎。
三井は不安そうに新田を見上げている。

「剃毛です」
「ていもう?」
「そう。平たく言えば、毛を剃ることですね。で、どこの毛かというと…」
「え、もしかして…?」
「ふふっ。アソコの毛、です」
「う、嘘でしょ…」
「三井センパイのアソコ、ツルツルにしてあげますね?」
「アッキーに拒否権なんてないんだよ?ほら、観念しな」

床に敷いたバスタオルの上で、仰向けになった三井。
下半身には、なにも纏っていない。
ムダ毛カット用のセーフティハサミ。
私はそれで、三井の陰毛を短くカットしていく。

屈辱か、羞恥心か。
下唇をギュっと噛みながら、天井を睨む三井。

蒸しタオルによって毛を柔らかくした後、シェービングクリームを塗っていく。
「んっ…」
微かに、三井が反応した。

左手で、三井の皮膚を軽く引っ張って伸ばす。
そして、クリームの乗った場所に、カミソリをあてる。
皮膚を傷つけないよう、最新の注意を払いながら。
毛の向きに沿って、カミソリを動かす。

カミソリを洗面器に入れて、キレイにする。
再び、クリームの乗った場所に、カミソリをあてる。

そうやって、少しずつ、陰毛を剃っていく。
そして…

「ほら、キレイになった」
「かわいい!小さい子みたい」
「アッキー、見てみな?ツルツルでしょ?」

藤崎が手鏡を三井に手渡す。
ふたりの笑い声。
三井も、毛のなくなった場所を見て、泣きそうな顔をしている。

「1号も、お疲れさん。ばっちいから、それ片付けたら、手、洗ってきな」
「ばっちいって。そんなこと言ったらアッキーがかわいそうだよぉ。ははっ、なんちゃって」

2回目。

さっきと同じように、四つんばいになって待つ、私で三井。
違うのは、三井が身につけているもの。
下に何も履いていない。

「章乃ちゃんの赤ちゃんオマ〇コ、見えちゃってるよ」
「アッキー、負けんじゃないよ!連続で負けたら、ただじゃおかないからね!」
「ううっ…」
三井がうつむく。

恐ろしい。
もし負けていたら、私がああなっていたのだ。

「1号!負けたらアンタも剃毛だかんね!三井センパイも…今度負けたら、お尻の穴、ですよ?」

新田の言う、お尻の穴。
あれは確か、2回目のレース後。
初めて馬として参加し、そして負けた三井。
新田の前でお尻をつき出しながら敗北宣言をさせられていた。

恐らく、三井にとって生まれて初めて刻まれた屈辱。
そして、マゾに目覚めるきっかけにもなった。
あれを、またさせるというのか。

「うそ…うそうそ…うそでしょ…」
つぶやく三井。
よほどイヤなのか。
目が、あやしい光を帯びていた。
かわいそうだが、負けるわけにはいかない。

「ほら、ふたりとも、準備しろー?」
「いくぞ?よーい…スタート!」

影が飛んで行く。
同時に、私たちも動き出す。
落ちたのは、ちょうど私からも三井からも同じ距離の場所。
キビシイか。
でも、ほんの少しだけ、私がリードしていた。
勝てる!
『それ』の前で、顔を近づけようとする。

と。
横から強い衝撃。

視界が回る。
体当たりされたのだ。

くそっ!
卑怯者!
慌てて体を起こすが、すでに手遅れだった。
新田の前で、くつしたをつき出す三井。
それを取った新田が、三井の頭をなでた。

頭に血が昇った。

ご主人様たちのもとに戻り、目で訴える。
こんなの、ズルい!
反則です!
しかし…

「なに?不服なの?」
藤崎。
「体当たりしちゃダメなんて言ってないでしょ?」
三井の頭をなでながら、ご主人様が言った。

そんなの…
あんまりです…

「じゃあ、今度は1号の罰ゲームね。アッキー?1号に剃られたアソコの毛の恨み、晴らしちゃいな」
「ふふっ…はい」
三井が笑みを浮かべる。
「ほら、今度はアンタの番よ。さっきはよくも、バカにしてくれたねぇ」

屈辱。
でも、受け入れるしかない。
悔しくても、納得がいかなくても。
それがルールなのだ。

バスタオルの上で、仰向けになる。
三井。
ニヤニヤしながら、私を見下ろしている。
私に仕返しができるのが、嬉しくて仕方ないのだろう。
悔しさを堪えながら、下に履いているものを脱ぎ去る。

セーフティハサミ。
今度は私が切られる番だった。
毛を刈っていく、ハサミの音。
浮かんだのは、子どものようになった、三井のアソコ。
私も、ああなるのだ。
そしてそれを、3人の前で晒される。
揶揄われる。

早く、終わってよ…
無心になろうとする。
しかし…

「ほら、アッキー。ゆっくり、丁寧にね」

「お揃いの、ツルツルのアソコにしてあげようね」

「はい…」

ご主人様たちからの無慈悲な言葉責めが、私の羞恥心を掻き立てるのだった。

「はい、次ね」
3回目。
よつんばいの姿勢。
今回は、私も下に何も履いていない。

「うわあ、これは引くわぁ」
言いながら、ゲラゲラ笑う藤崎。

「いい歳した女ふたりが、ツルツルのアソコを突き出してるって。すごい光景」

恥ずかしすぎる。
ただ見られているだけではない。
毛を剃られているのだ。
まるで、小学生に戻ったかのような…
それを、後輩ふたりに見られている。
撮られている。

「でも、分かりやすくていいね。お尻の赤いほうが1号。白いほうがアッキー。タグを見なくても分かるわ」
「次、負けたほうはカメラの前で恥ずかしいことさせっからね」
「撮った動画は、どうしよっかなぁ。次のレースの時、公開しちゃおっかなぁ」

「ひっ」
思わず、三井が声を漏らす。
「アハハ!ひっ…だってぇ」
「恐いの、三井センパイ?だったら負けられないねぇ」
ケラケラ笑う後輩ふたりと、翻弄される3年生ふたり。

「ほらほら、いくよ!よーい…スタート!」
熾烈な戦い。
互いに何度も体をぶつけあう。

必死だった。
ふたりの笑い声。
どうでもいい。
気にする余裕などない。
激しい息づかい。
互いの息が、汗がからみあう。

そして…

「1号の勝利ぃ!」
かろうじて、尊厳を守ることができた。

三井。
怯えながら、イヤイヤをしていた。

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