あと片付けを終え、藤崎と三井が帰っていく。
それを見届けてから。
新田が立ち上がった。
フロントへ電話し、延長を告げる。
そして、そのままクローゼットの前へと歩いていく。
扉へ手を伸ばし…
「はーい、お疲れ様」
中には、全裸の女。
髪は乱れ、顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「レースで勝てたご褒美、楽しんでもらえた?」
新田の問いに、女は何度も頷く。
「それに、藤崎センパイも気付いてなかったみたいだし。見つからなくてよかったね、2号?」
壊れた機械のように、頷き続ける畑川。
「もし見つかってたら、オマエもゲームに参加させられて、一緒に恥ずかしい動画を撮られてたかもよ?それとも、見つかりたかった?」
今度は、必死に首を横に振る。
「藤崎センパイは、アンタにどんな恥ずかしいことを命令するだろうねぇ」
イヤイヤをしながら、切なげに身悶えする畑川。
眉根を寄せ、右腕を己の股間へと伸ばした彼女。
その指先は、彼女の敏感な部分を擦り続けていた。
「ほら、いつまでやってんの。早くそこから出てきな。貞操帯、付けてあげるからさ」
ご褒美は、オシマイ。
これからまた、彼女にとって地獄のような暗い悦びが始まる。
熱い、ドロドロに滾った情欲に身を焼かれながら。
鎮めることのできない日々。
合同調教は終わり。
この後に待っているのは、新田の、私と畑川への調教。
第二幕の開始だった。
「今日の映像、藤崎センパイが編集して持ってきてくれるってさ。しかも、オマエ用に編集した特製のヤツだよ」
言いながら、畑川に貞操帯を付けていく新田。
「わ、私用、ですか…?」
「そう。ま、詳しくは届いてからのお楽しみだね」
「ふ、藤崎に、私のことは…」
「言ってないって。言うわけないじゃん。今のところは、だけどね」
「あ、ありがとうございます…」
「感謝しなよ?アンタがこんな情けない性癖してるなんて藤崎センパイに知られた日には、どんなことされるか、分かんないよ?」
「は、はい…」
あっという間に、貞操帯が装着されていく。
錠を閉める音。
「あっ…」
切なそうな表情を浮かべる畑川。
貞操帯で管理される、という屈辱に、すっかり魅了されてしまっていた。
「はい、これでオッケー。次、またお前が勝つまで、カギは私が管理してあげるから。感謝しなよ?」
「あっ、ありがとうございます…」
畑川。
顔を赤らめながら、感謝の言葉を口にするのだった。
「それにしても、面白かったなぁ。三井センパイとコイツの勝負。ふたりともムキになっちゃってさぁ」
「は、はぁ」
「コイツが三井センパイに剃毛されてるところなんて、笑いを堪えるのに必死だったよ。顔を真っ赤にして、悔しそうにしてさぁ。ねぇ、コイツのアソコ、見てみたい?」
「…えっ?」
「だからぁ、三井センパイに『おけけ』を剃られてツルツルになった、赤ちゃんオマ〇コ、見てみたいかって、聞いてんの」
「そ、それは…」
畑川が喉を鳴らす。
視線。
チラっと私を見て、慌てて俯く。
「正直に言いな?」
「それは、その…」
「その?」
「み、見たい、です…」
新田の笑い声。
「そっかぁ、見たいんだぁ?」
顔を真っ赤にしながら、畑川が頷く。
「ねぇ、お願いしてみたら?」
「えっ?」
「お願いしたら、もしかしたら見せてもらえるかもよ?」
「そっ、そんっ…なこと、は…」
「見たいんでしょう?中谷センパイのオマ〇コ」
「え、と…」
「見たいんでしょ?見たいって言いな」
「で、でも、その…」
「ほら、言え」
「みっ、見たい、です…見せて、ください…」
「ぼそぼそしゃべるな。ちゃんと目を見て言いな。ほら」
畑川が、私の目を見つめる。
自信なさげで、卑屈な笑みを浮かべて。
「な、中谷センパイの、あっ、アソコ、見せて、ください…」
「アソコ?アソコじゃ分かんないでしょ?」
「お、おま、オマ〇コ…」
「ツルツルの、赤ちゃんオマ〇コね」
「つ、ツルツルの、赤ちゃんオマ〇コ…見せて、ください…」
オドオドとした畑川に、私はキッパリと言い放つ。
「やだ!」
「そ、そんな…」
「あーあ、断られちゃったねぇ。おい、2号」
「はっ、はい!」
「その場で土下座しな。額を床につけて、私がいいって言うまで」
「え、わ、分かりました」
言われた通りにした畑川の背に、新田が腰掛ける。
畑川をイス代わりにしたまま、私の方を見て言い放つ。
「1号は、今すぐ裸になって、待てのポーズしな」
「えっ、あ、はいっ」
「じゅーう、きゅーう、はーち…」
カウントダウンを始める新田。
私は、慌てて下に履いているものをずり下げる。
「なーな、ろーく…」
ズボンも下着も足から引き抜き、床へと落とす。
「ごーお、よーん…」
上着を脱ぎ捨て、ブラを外す。
「さーん、にーい…」
腰を少し落として、両手を胸元のあたりで揃える。
「いーち…」
「で、できましたっ!」
「よーしよし、ギリギリ間に合ったじゃん」
「は、はいっ!」
「じゃあ、その場で回りな。その姿勢のまま、ね」
「はい!」
小刻みに足を動かし、新田の前で回転する。
「2号?アンタの目の前で、中谷センパイが裸で立ってるよ?アンタの見たがってたアソコも、お尻も、胸も、お腹も、おへそも、太ももも、ぜんぶさらけ出してね。見たい?」
「み、見たいです!」
「そうなんだぁ。でも、ダーメ。見せてあげなーい」
「そんなぁ…」
畑川が、情けない声をあげる。
「アンタはそうやって、這いつくばりながら、キモイ声で鳴いてるほうがお似合いだって。後輩の許可がなければオナニーもさせてもらえない、ようやくさせてもらえたとしても物陰に隠れてコソコソ、コソコソ。バレないように声を押し殺して、聞き耳を立てながら負け犬オナニー。で、言われるがまま、貞操帯を付けられてさ。恥ずかしくないの?悔しくないの?いい歳してさ。自分がどんな格好してるか、分かってる?後輩に命令されて、土下座して、イスにされてんだよ?そんなヤツにウジウジしながら『中谷センパイの赤ちゃんオマ〇コ、見せてくださ~い』なんて言われた日にゃ、ゾッとするね。ほら、謝ったほうがいいんじゃない?中谷センパイにさ」
新田の声が、熱を帯びていく。
目には妖しい光が宿っていた。
少し…ほんの少しだが、怖いと思ってしまった。
「ごっ、ごめんなさいぃ…」
「一生のうちに、一度は見れるといいね。でも、その時には何歳になってるかな。周りが結婚して子どもができたり、職場で重要な仕事を任されるようになっても、アンタは今のまま。頭の中は、中谷センパイの赤ちゃんオマ〇コのことだけ。自分にできる仕事は、私にバカにされながら、イスとして私を乗せることだけ。そうしながら、いつか見せてもらえる『かもしれない』ことに期待しながら、年を取っていくの」
「う、うぅ…」
畑川の、すすり泣きが聞こえる。
「え、ウソ!泣いちゃったの?あーあ、もう。泣かないの。ちょっと言いすぎちゃったかな。ごめんごめん」
言いながら、畑川の頭を撫でる。
「私も、ちょっと熱が入り過ぎちゃったかな。ほら、もう時間だし、今日はもう帰りましょうか」
立ち上がり、畑川を立たせる。
ハンカチを渡しながら、なおも頭を撫でている新田。
私も、床に脱ぎ捨てた服を拾い始めた。
合同調教という特殊な雰囲気に、新田もあてられてしまったのだろうか。
頭をかきながら、どこかバツの悪そうな新田。
私も、なんとなく気まずくて、無言のまま、帰る準備を始める。
藤崎という新たな人物も加わり、私たちの活動は規模が拡がっていく。
我々は、どこに向かっているのだろう。
どこに行きつくのだろう。
「なんか、お腹すいちゃったな」
新田が、ボソッとつぶやく。
「帰りに、どこかで食べて帰りますか」
何となく、口に出ていた。
「えっ」
意外そうな表情をする新田。
「そ、そうね…それも、いいかもね」
新田が頷く。
「畑川も、どう?一緒に来るでしょ?」
「え、と…いいんですか?」
「いいに決まってるでしょ」
「じゃ、じゃあ、行きます!」
畑川が、ニコッと笑う。
ホテルを出て、夜の街を3人で歩く。
何を食べようかと、話し合いながら。
口々に別の食べ物を言い合って、笑い合う。
1年近く一緒にいて、でも、こういう風に話すのは初めてだったかもしれない。
冗談を言って、畑川を笑わせる新田。
言いながら、チラチラと畑川の様子をうかがっているのが分かった。
さっきのことを、気にしているのか。
こうしてみると、新田も年相応の女の子なのだと感じる。
むしろ、どこか不器用で、繊細で。
妹のような、娘のような存在。
見守りたくなるような。
そんなことを言えば、ナマイキだと言って怒るかもしれない。
新田はドミナントで。
私と畑川は、サブミッシブだった。
サディストと、マゾヒスト。
騎手兼調教師の新田と、彼女に従う2頭の調教馬。
数日後には、再び彼女に服従し、卑屈に媚びるという将来が待っているのだろう。
でも今は、こうして普通の先輩後輩として過ごす時間を大切にしたいと思った。
この子たちもそうであって欲しいと思いながら。
ふたりの後ろを歩くのだった。


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