ポニーガールとご主人様 第四章(8)負け犬の貢物~藤崎視点~

合同調教から、約1週間後。
私は、新田の住むアパートに来ていた。

深呼吸をしてから、インターホンを押す。

「お待ちしていました。どうぞ、中へ入ってください、藤崎センパイ」

案内されるまま、室内へと進む。
ベージュを基調とした、落ち着いた部屋。

円形の木製テーブルと、その奥にはやはり木製の机と椅子。
椅子に腰かける新田。
テーブルの手前には、座布団が1つ。
笑みを浮かべたまま、顎で示す。
そこに座りなさい、と。
座布団の上に、正座をする。

「何か飲みます?お茶か、コーヒーか」
「だっ、大丈夫。来る途中、コンビニで買ってきたから…」
「そうですか」

「それで、例のものは?」
「あっ、こっ、コレ…」
バッグから、ポーチを取り出す。
その中にある、SDカード。

私がここに来た理由。

カードの入ったケースごと、新田に渡す。
「どっ、どうぞ…」
普段の、先輩と後輩としての態度。
口調。
消え失せていた。

目の前にいるのは、後輩ではない。
勝者であり、支配者でもある。

悔しさと羞恥心。
プライドが、刺激される。
その一方で、体が思い出す。
己が何者なのか。

彼女によってプライドをへし折られた、負け犬。
屈辱を刻み込まれ、マゾとしての悦びに目覚めたヘンタイ。

今の私は、彼女に仕える存在であり、ペットだった。
そのことを、改めて実感する。

両手で捧げ持つように、カードケースを差し出す。
手が、震えている。

緊張か。
恐怖か。
期待か。

分からない。
でも、私は彼女に負けたのだ。
そして、彼女に命じられたとおり、貢物をする。
今の自分が置かれた状況。
そして、この後に訪れるであろう、屈辱と羞恥に塗れた甘美な時間。

飼い主の前で芸をした犬が、褒めてもらいたがっているように、尻尾を振る。
それと同じように。

私の表情。
目の動き。
声。
態度。

私が何を考えているか。
何を期待しているか。

見透かされてしまう。

新田が手を伸ばし、私の手からカードケースを摘まみ上げる。

「じゃあ、チェックしてあげる」

新田の口調が変わった。
先輩に対して、ではなく。
下の立場の者に対する、ソレへと。
それを自覚し、胸がキュッと締め付けられる。
体が熱くなる。
スイッチが、入った。

ケースからSDカードを取り出す新田。
それを、机上のノートパソコンに差し込む。

表示されたフォルダの中には、更に2つのフォルダがあった。
そのうちの1つ、『合同調教』というフォルダのほうに、マウスカーソルが動く。

カチカチッという、マウスのクリック音。
新田の後ろ姿。
心臓の音。

中には2つの動画ファイル。
1つは『通常版』という名前。
もう1つは『検閲済』という名前。

新田が、『通常版』をダブルクリックする。

動画の再生ソフトが立ち上がる。

私からも見えやすいよう、ノートパソコンの位置をずらす新田。

まず映ったのは、楽しそうに話す新田と私。
その下には、四つんばいになった、水着姿の女性ふたり。
乗馬服を着た女性が、水着姿の女性に腰かけている、異様な光景。

水着姿の女性は、全頭マスクを付けており素顔は見えない。
しかしその正体は、我々の先輩であり、それぞれの指導担当なのだ。
そんなふたりを、私たちはまるで椅子のように扱っている。

場面が切り替わる。

くつしたのニオイあてゲーム。
ベッドに腰かけながら、先輩ふたりをオモチャのように弄ぶ後輩たち。
後輩に揶揄われながらも、必死に競い合う、2頭のマゾ犬。

画面に映るそのどちらも、私を刺激してくる。

サディストとしての残渣。
マゾヒストとしての本性。

自分よりも上位だった存在を、服従させ、弄ぶ。
自分のほうが上位だったはずなのに、屈服し、ひれ伏す。

憧れの存在が、自分に媚びを売り、命令ひとつで芸をする。
後輩に、弱みを握られ、立場が逆転してしまう。

倒錯した感情が、脳を痺れさせる。
腰の奥が、チリチリと熱せられる。

後輩に揶揄われ、嘲笑されながら床を這うマゾ犬たち。
本当は、彼女たちは馬術部のエースなのだ。
それが、あんなミジメな姿に…
普段のふたりを知っているだけに、落ちぶれた姿が余計に憐れで…
私の中にある被虐的な願望が刺激されるのだ。

レースに負けて、新田の馬となったあの日。
あの時に刻まれた屈辱と興奮。
思い出すたびに、どうしようもなく昂ってしまう。
思い知らされる。
自分が、本当はどちらなのか。

そして、想像する。

イジワルな笑みを浮かべた新田の前で、乗馬服を脱ぐ私。
馬のコスプレを身につけて、全頭マスクを付けて…
四つんばいになる。
その頭上で、くつしたを放り投げる新田。

『ほら、取ってきてください』

先輩としてではなく、ペットとして扱われている。
屈辱と悦びとで胸を締め付けられながら、私は這い進む。
ご主人様の身につけていたもの。
練習後の、汗と汚れに塗れたそれを、口に咥える。
そして、ベッドに腰かけている飼い主へと、それを返すのだ。

微かに残ったプライドと、先輩としての記憶。
それが、羞恥心を刺激する。
そんな私の心情を見透かしながら、ご主人様は接してくる。
自身の上級生である、藤崎センパイとして。
自身に忠誠を誓う、マゾペットとして。

『エライですね、藤崎センパイ。さすがです。ほら、もっかいですよ』

差し出したくつしたを取り上げ、再び放り投げる。
あくまでも、先輩としての立場は忘れさせず。
その一方で、私のプライドをすり潰し、ペットとしての立場を繰り返し刻み込む。

そこには、三井センパイも、1号も、畑川麻友もいなかった。
新田と私のふたりだけの空間。
だったら…

『ふふっ。いいカオしてんじゃん。ほらマゾ犬、取ってきな』

ご主人様に尻尾を振り、媚びる存在へと堕ちていく。
私の心情を察した新田が、口調を変える。

『すっかり負け犬っぷりが板についてきたねぇ』

タメ口。
ゾクゾクする。
もう、逆らえない。

私を見下しながら新田が告げる。
『それじゃ、もうひとり増やそうか。私と一緒にアンタを揶揄うご主人様か、アンタと一緒にくつしたを取り合うマゾ犬か。どっちがいい?選ばせてあげる』

映像を編集しながら、そんな妄想を何度したことか。

新田と一緒になって、ベッドに腰かける誰か。
それは、同期の時もあれば、後輩の時もあった。
普段とは打って変わり、私を言葉や態度で残虐に弄ぶ『ご主人様』たち。

『舞ちゃんて、ソッチだったんだ』
『藤崎センパイ、ご自分が何してるか、分かってますぅ?』

『ほら、これがご主人様のニオイだよ?しっかり覚えな、ヘンタイ?』
『いいニオイでしょう?部活中、センパイが扱いてくれたおかげで、すっかり汚れちゃいましたよ。たっぷりとお礼、してあげますからね』
生暖かい足の裏が顔に押し付けられる。
そんな己の姿を想像し…
編集の手を止める。

部屋着であるジャージの中に、手を差し入れ…
昂りを鎮めるために、『行為』に耽る。

『ほら、マゾ犬、取ってこーい』

『舞センパイ、カワイイー。ホントにワンちゃんみたいですぅ』

『こんなので興奮してんの?どうしようもない変態だねぇ、アンタは』

『後輩にこんなことされて、悔しくないの?プライドってもんがないの、舞ちゃん?』

『ほら、ご主人様に媚びてみな?そうしたら、また遊んであげる』

『センパイのこんな姿を知っちゃったら、もう元の関係には戻れませんよ。でも、もう遅いから。その覚悟があるから私を呼んだんでしょ、ヘンタイさん?』

「そっ、そうですぅ…」

同期や後輩たちの嘲笑、罵倒を想像しながら。
下着の中で手を動かす。

「ホントは、こんなヘンタイなんですぅ…」

プライドを、自らの足で踏みつける。
屈辱と羞恥心を、掻き立てるために。

「ごっ、ご主人、さまぁ…これからも、舞を、ヘンタイマゾを、可愛がって、くださいぃ…」

目を閉じながら。
瞼の裏に浮かぶ、ご主人様に対して。
懇願し、忠誠を誓う。
下唇を噛みしめながら。
屈辱に身を浸す。
そして…
体を痙攣させる。
脳が、スパークする。
全身に電流が走る。

しばらくして。
気だるさとともに、起き上がる。
自己嫌悪。
翌日、部活中に顔を合わせることの気まずさを想像する。
なんで私が、こんなことを…
そんなことを思うが、先ほどまでの自分の痴態を思い出し、舌打ちしそうになる。
そして、編集作業に戻る。

ようやく、最後のシーンまで編集が終わった。
後は、映像をチェックしながら、細かい部分を修正していく作業。
椅子に座りながら、映像を見返す。

劣情。

編集をしながら繰り返したオナニーによって、体が反応してしまうようになっていた。

チェックのはずが、気がつけば『おかず』にしてしまっている。

映像を一時停止し。
下着ごと、ズボンを脱ぎ捨てる。
椅子を半回転させ。
バスタオルを4重にたたみ、座面に置く。
背もたれを抱くような姿勢で、椅子に跨る。
座面に、股間を押し付ける。
そして…

動画の再生ボタンをクリックする。
映像を見つめながら、揺するように腰を動かし始める。

中学生の時に覚えた、自慰の方法。
今も時々、そのスタイルは続けていた。
昔と違い、人目を気にする必要はない。
思う存分、癖をさらけ出すことができた。

正座をしながら、後輩たちに顔を踏まれる先輩たち。
四つんばいになりながら、くつしたを取り合う先輩たち。
それを揶揄い、嘲笑うナマイキな後輩たち。

視覚。
聴覚。

それらを取りこぼさないよう、目を見開き、耳を澄ましながら。
バスタオルに擦りつけるように、腰を動かす。

前後に。
左右に。
時には、こねくり回すように円を描きながら。
脳に、快楽を送り続ける。

そして。
目を閉じる。

ご主人様たちの目で、ペットとして振舞う己の姿。
ライバルとともに、ご主人様の前で張り合い、競い合う己の姿。
ライバルは、様々だった。
後輩の時もあれば、先輩の時もあった。

負けた時の屈辱。
特に、後輩に負けた時のそれは凄かった。

勝者である後輩が、私を見下しながら、ご主人様の寵愛を受ける。
それを私は、黙って見ているしかできない。

『センパイのくせに、こんなカンタンなゲームでも勝てないんですね』

『負け犬のセンパイは、そこで指を咥えて見ててくださいね』

クソッ!
クソッ!

悔しがる私をあざ笑う後輩。

『今度は手加減してあげる。よわーいセンパイでも、それなら勝てるでしょ?』

しかし…
再び負けてしまった私は…

『あんなにハンデをあげたのに、勝てないなんて。センパイ雑魚すぎ』

『私に負けたくて、ワザと負けたんですかぁ?』

クソッ!
クソッ!

『次は、もっとハンデあげる。でも、それでも負けた場合はぁ…』

『これからは私のこと、先輩って呼ぶんですよ?』

クソッ!
クソッ!

『あーあ、負けちゃったね。やっぱり、ワザと負けたんでしょ?ほら、約束どおり、私のこと先輩って呼びな。ほら』

ナマイキな後輩。

顔を真っ赤にしながら、私は口にする。
彼女の名に、先輩という敬称をつけて。
爆笑する後輩。
はらわたが煮えくり返りそうになるほどの悔しさ。
脳を焦がしていく。

『ほら、舞。これからは私が先輩だかんな?お前は後輩なんだから、私の言うことには従うんだぞぉ?分かったかぁ?』

クソォッ!

『先輩が分かったかって聞いてんだから、返事しろって、舞』

「わっ、分かりましたぁ…」
言いながら、全身を震わせる。

「わかりました、先輩ぃ…」
「先輩の言うこと、何でも聞きますぅ…」
「私のこと、キツく扱いてくださいぃ…」

勝ち誇る元後輩。
土下座しながら服従し、懇願する元先輩。

翌日、部活中にその後輩と顔を合わせる。
気まずさと背徳感とを押し隠しながら、あくまで先輩として振舞う。

私が昨日、あんな妄想をしながら自慰に耽っていたことなど、思いもよらないだろう。
目の前の先輩が、妄想のなかで自分に対し、どんな態度を取っていたか。

もし知ったら…
この子はどう思うだろうか。
軽蔑するだろうか。
それとも、妄想の時と同じように『先輩』として私をイジメてくれるだろうか。

「あれ?なんか先輩、顔、赤くないですか?」
「そっ、そう?」

全身から冷や汗が出る。

「もしかして、体調悪いですか?」
「い、いや、そんなことないけど…」
「そうですか。でも気を付けてくださいね、最近、風邪が流行ってるみたいですから」
「う、うん。ありがとう」

練習後の部室。
着替えをする部員たちの中に、例の後輩の姿。
ふと、足もとを見る。
汗と汚れをたっぷり含んだくつした。

練習後のソレは、誰のものであれニオイを放っている。
彼女のくつしたも例外ではない。
そんな、くつした。
目が離せなくなっていた。

パイプ椅子に腰かけた後輩。
その足元で、正座をする私。
後輩が、足を上げる。
汚れた足の裏が、視界に入る。
それが、私の顔面目掛けて近づいてくる。
ジメっとした、生温かさ。

『こうされたかったんでしょう、センパイ?』

揶揄うような、後輩の言葉。

『ほら、ニオイ嗅いでいいんですよ?』

私は、思い切り鼻から空気を取り込む。
鼻腔を抜ける、脳を刺すような臭い。

『私のニオイ、堪能してくださいね?』

声にならない声で、返事をする。

『こんな言葉遣いは違うか。ご主人様のおみ足の香りを、しっかりとその脳に刻み付けとくんだぞ、マゾ女』

ううっ…

『ほら、豚みたいにフゴフゴ鼻鳴らしてないで、お礼を言いなよ。ほら!ほら!ほら!』

私の顔に擦りつけるように、足裏を前後に動かす、後輩。
いや、元後輩であり、今は彼女が先輩だった。
後輩へと成り下がった私に、イジワルな言葉を投げかける、先輩。
そんな彼女に、私は…

「舞先輩、どうしたんですか?」
「えっ、あっ…」

気付くと、目の前には例の彼女が立っていた。
心配そうに、私の顔を覗き込んでいる。

「せっ、せんぱい…」
口にしてから、しまった、と思った。
不思議そうな表情を浮かべる後輩。
そして、ふふっと笑う。

「やっぱり、今日の先輩はどこかおかしいですよ」
「う、うん、そうかも」
誤魔化すように、私も笑みを浮かべる。

「ホントに体調、大丈夫ですか?」
「うーん、言われてみると、やっぱりちょっとヘンかも…今日は早めに寝るわ」
「そうしてください」
どこか心配そうな表情をする後輩に、胸が痛みつつ。

帰宅後、私は映像編集の続きをする。
そして、いつものように、途中で中断する。

椅子に跨りながら、腰を揺する。

丸められたくつしたが、放り投げられる。
ご主人様の掛け声とともに、床を這いまわる、2匹のマゾ犬。
そのうちの1匹は、私だった。
もう一匹のマゾ犬と競い合いながら、私は部屋を這い進む。
ご主人様のくつした。
口に咥え、持ち主へと届ける。

期待に満ちた目で、見上げる私。
そこにいたのは…

『やっぱりマゾだったんですね、舞センパイ』

例の後輩だった。

見られてしまった。
知られてしまった。
しかし、言い逃れのできる状況ではなかった。

「う、うん…」
『うん、じゃなくて、はい、でしょ?』
「は、はい…」
『ほら、ご主人様のくつした、返しな?』

ご主人様が、手を伸ばす。
例の、くつした。
部室で見た、薄汚れたくつしただった。

『よく勝てたねぇ、舞。ゴホウビ、あげよっか?』

「う、うん…じゃなかった、はい、欲しいです…」

「ずいぶん素直じゃん。トロンとした顔しちゃって」

私から取り上げたくつしたを、再び足に履く。

『ほら、ニオイ、嗅ぎたいんでしょ?』

「はいぃ…」

『部室で、モノ欲しそうに見てたもんねぇ』

「はいぃ…」

『上手にオネダリできたら、嗅がせてあげよっかなぁ』

「お、オネダリ…?」

『そ。私の後輩になった証に、ね』

「そっ、そんなぁ…イジワルしないで…」

『イジワルしないでください、でしょう?』

「い、イジワル、しないで、ください…」

『そんなこと言って、イジワルして欲しいんでしょう?顔に書いてあるよ』

「ううっ…は、恥ずかしい、です…」

『でも、嬉しいんでしょ』

「はい、はいぃ…」

『マゾだもんね、舞は。ヘンタイマゾの、負け犬マゾ。新田ちゃんに負けて、負けグセがついちゃったんでしょう?これからは、私がもっと負けさせてあげる。ほら、私の前で芸をしな、負け犬さん?』

瞼の裏に浮かぶ私が、膝立ちになる。
そして、両手を軽く握りながら。
胸の前で揃える。

オネダリのポーズ。

『そのまま、口を開けて、舌を出しな?』

言われたとおり、舌を出す。

『ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、って、口で息をするの。ワンちゃんみたいにね』

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

『アハハ!動画で撮ってあげる』

スマホを私に向ける、ご主人様。

『このあと、顔を踏まれてるところも撮ってあげるからね。あとでデータもあげるから、それ見ながらオナニー、してもいいぞ?嬉しい?』

「はっ、はいっ…」

『その代わり、オナニーするときはちゃんと私にお伺いをたてること。これから、負け犬オナニーさせてくださいって。で、終わったらちゃんと報告すること。いい、分かった?』

「はいぃ…」

屈辱と興奮とともに、波が近づいてくる。

『ふぅん。イキたいんだ?いいよ、イッても。よし、許可する。イキな、舞』

「あっ、ありがっ…くぅ、んっ…」

『その情けない顔も、ちゃんと撮ってやるからね。アホ面を晒しながらビクビク震えてる自分を見ながら、思い出しオナニーするんだぞ?』

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