ポニーガールとご主人様 第四章(14)調教師の目覚め

「ほら、進め!」

パァン!

再び、手を振り下ろす。

馬が再び進み始める。

時間にして、ほんの数秒の出来事。

「どうしたんだろ?」
不思議そうに見つめる、浜本。

何が起こったのか。
胸騒ぎがした。

まさか…
いや、でも…
藤崎にとっては、絶対に避けたかったこと。

鳥越は、気付いたのだろうか。
ポニーの正体を。

馬のコスプレをしながら、ブザマに床を這う女。
マゾ女だと嘲っていた相手が、自身のよく知る人物だったことを。

最初、藤崎の首元を気にしていた。

何かを見つけたのか。
ホクロか、あるいは傷や痣か。
日頃から藤崎と交流のある彼女なら、そんな些細なことでも気付くきっかけになってしまうかもしれない。

あるいはちょっとした仕草に、藤崎らしさを感じたのか。
分からない。
ただ、もしかしたら、鳥越はポニーの耳元でこう囁いたのではないか。
「藤崎センパイですよね」
と。

動揺して、思わず立ち止まってしまった藤崎。
藤崎と分かって、自身の先輩であると分かって、それでなお、鳥越は彼女の尻を叩いたのか。

かつて、レースに負けた三井のマスクをはぎとった藤崎。
今度は、後輩である鳥越に、正体を知られてしまったのだとしたら。

これを、因果応報と言っていいのかどうか。
もし、そうなのだとしたら。
藤崎と鳥越の今後の関係は…

鳥越が、再び馬の耳元に口を寄せる。
馬が首を横に振る。

鳥越の目。
スッと細くなる。

パァン!

馬の尻に、鳥越の手が振り下ろされる。

馬が立ち止まり、かすかに体を震わせる。
息を詰まらせたまま、また進み始める。

そんな鳥越を咎めるでもなく、手綱を持って歩く畑川。
歓声を上げる浜本。

ようやく1周し終えた3人。

鳥越が馬から降りる。
労うように、馬の頭をポンポンと叩く。
畑川に手綱を引かれた馬とともに、こちらへ戻ってくる。

「ごめんね。楽しくなっちゃって、つい」
本人にではなく。
新田に、馬を叩いたことを謝る鳥越。

「いいのいいの、気にしないで。それに、この子もそうされるのが好きだから」
藤崎が慌てて首を左右に振る。
全身は小刻みに震え、動揺を隠しきれていなかった。
「でしょ!そうだと思った」
悪びれるでもなく、笑いながら答える鳥越。

スポーツ少女らしい明るさ。
その奥に、ゾッとするほどの残虐さを垣間見た気がした。
浜本。
「ねえ、ポニーに何か言ってなかった?」
「んー?ああ…さっき畑川先輩がこの子のお尻叩いてたでしょ?私も叩いていい?って聞いてたの」
「ふぅん」

鳥越の言葉を信じたのかどうか。
気のない返事をしながら、ポニーを見つめる浜本。

「いいなぁ。私も乗ってみたかったなぁ…」
「じゃあさ、次回も来なよ」
「え、いいの?やった!次こそ、当てるぞー!」
無邪気に喜ぶ浜本。

鳥越。
「あのさ、私も参加したい」
「いいよ、風香もおいで」
「あ、いや、そうじゃなくてさ…私もレースに出てみたい」
「えっ…」
「最初に見た時は、正直ちょっと引いてたの。なんか、悪シュミだなって…」
「うん…」

「でも、レースを見てて思ったんだ。羨ましいな、私も乗ってみたいなって。それで、この子に乗ってみたら…従わせるって、こんな感じなんだって、ゾクゾクしちゃった。乗馬しているのとはまた違う、感覚…こんなの知っちゃったら、もう…」
興奮を抑えきれない様子の鳥越。
「そ、そうなんだ。でもなぁ…」

「それに私、この子のこと、気に入っちゃった。語り掛けた時とか、お尻を叩いた時の反応、気持ちの変化が、手に取るように伝わってくるの。それが可愛くて、仕方ないの。この子に乗って、今度はコースを思いっきり走ってみたい。ねえ、いいでしょ、新田」
「うーん、どうしようかなぁ…」
「お願い!」

「私はいいんだけど、他のメンバーと相談してみるね」
「やった!ありがと、新田!」
「もしOKだったとしても、色々と守ってもらうルールがあるからね。でも、風香にそこまで楽しんでもらえてよかったよ」

こうして、5回目のレースは終わった。

三井の体調不良。
藤崎の、ポニーとしてのデビュー。
畑川の、サディストとしての覚醒。
そして…
浜本と鳥越という、新たな参入者。
私と新田の始めたポニーごっこは、大きなうねりとなって馬術部メンバーを巻き込んでいく。

さっきまではこちらを阿っていたはずの相手に、跪き、詰られ、尻を叩かれる。
競走馬として見せ物にされ。
あるいは貞操帯によって尊厳を奪われ。
排泄器官であるお尻の穴を晒すよう命じられ、何度も敗北と恥辱を刻まれる。
年頃の女性が、同性である女性に。
しかも相手は年下なのだ。

屈辱がもたらす、胸を締め付けられるような苦しみと快楽。
一方で、人を弄ぶ悦びを知ってしまった者もいる。

観戦後の興奮と、次回レースへの期待とで、無邪気に笑う浜本。
目を細め、口元に嗜虐的な笑みを浮かべる鳥越。
本来なら知るはずもなかった背徳的な愉しみを、知ってしまった。

自分の身近で、こんな倒錯的な宴が繰り広げられていたなんて。
しかも、次回は参加できるかもしれないのだ。

同年代の女性に跨り、まるで馬のように扱う。
本来なら、決してできないこと。
倫理的にも、体裁的にも。
何より、そんな可哀想なことできない…

違う。

まるで馬のように這うこの女たちは、自ら望んでこうしているのだ。
人に跨られ、詰られ、尻を叩かれることに、悦びを感じてるのだ。
だから、別に可哀想だと思う必要はないのだ。

…いや。
それだって、まだどこか本心を誤魔化している。

誰も見ていない場所。
誰に非難されることもない、評判を下げることもない。
人を跪かせ、服従させるという行為。
しかも、相手は自身の知っているかもしれない人で。
もしかすると、普段自分がセンパイとして敬っている人かもしれないのだ。

そんな背徳、この上もなくゾクゾクするような甘美な状況。
考えるだけで、ドーパミンが溢れる。
知ってしまったら、もう、戻れない。

ポニーとなって床を這う経験も。
ポニーに跨りコースを駆ける経験も。

本来なら、一生経験することのないような強烈な感情を、彼女たちにもたらした。

それが、彼女たちの人生にどのような影響を与えてしまったのか。
楽しそうにはしゃぐ後輩たちや、屈辱に喘ぐ藤崎を眺めながら、この会の行く末を思うのだった。

コメント

  1. 匿名 より:

    鳥越様の覚醒、、、めちゃいいです..!!

    • slowdy より:

      ありがとうございます。
      この後も、鳥越が藤崎をたっぷりと可愛がる予定ですので、お楽しみに!