過去の一かけら

ファミレスで友人と遅くまで話し込んだ。
別れてから自宅へ戻ろうとしたのだけど、不案内な上に来た時と違うルートで帰ろうとした為迷ってしまった。
何処かも分からない夜道を自転車で走る。
と、懐かしい場所に出た。
サークルの先輩達が新入生を招き親睦会を開いたことがあった。
思い切って参加してみたものの、元来人見知りな私はうまく馴染む事ができずやるせない思いを持て余していた。
楽しそうに話す同じ新入生。
大人の余裕を持った先輩。
居心地の悪さを必死に隠す自分。
タイミングを見計らって抜け出し、駅の方角も分からないまま逃げ帰った。
自分の勘がいかに当てにならないかを思い知りながらさ迷い歩く。
同じ新入生への羨望、嫉妬。
同い年なのに先輩という存在への焦り、怒り。
自分勝手だと思いつつも、溢れてくる感情を止めることが出来なかった。
悲しいような、それでいて妙に気分が高まったような不思議な感覚。
不意に涙が浮かんでくる。
傘を振り回しながら「上を向いて歩こう」を口ずさんだ。
二年後の自分も、こうして同じ道に迷い込んだのが可笑しかった。
ただ、あの頃より少しは人付き合いが上手くなった。
あの時楽しそうにしていた新入生の何人かは掛け替えのない友人になっている。
未熟さを嘆くばかりだけど、たまには自分を褒めるのもいいかもしれないと思った。

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