ポニーガールとご主人様 第三章(3)マゾ犬ビフォーアフター

『5日目』の文字。
映ったのは、部屋を這いまわる三井の姿。
これまでと違うのは、首輪にリードが付けられているということ。
リードの先は、藤崎の手。
藤崎に引かれるようにして、部屋を這い進む三井。

カメラの前を通るたび、神経質そうにこちらを見る。
部屋を10周ほどしただろうか。
ソファに腰かける藤崎。
その前で、待ての命令をする。
蹲踞をして、肘を曲げて、両手を胸元で揃える。
ご主人様からの、次の命令を待つ忠犬。
藤崎が、あごで床を示す。
その場で仰向けになる三井。

藤崎の足もとに、三井の顔。
その顔に、藤崎が両足を乗せる。
フゴフゴと、鼻息を荒くする三井。
と、そこで画面が2分割された。
右側には、先ほどのブザマな三井。
左側に映し出されたのは、凛々しい顔つきをした、昔の三井。

ハキハキと喋り、取り巻きを引き連れる左側の三井。
その取り巻きのひとりに顔を踏まれ、恍惚とした表情を浮かべる、右側の三井。
キャプションが浮かび上がる。
左側には、before。
右側には after。
左側も右側も、どちらも三井だった。
でも…
見較べてしまうと、思ってしまう。

本当に同じ人物なのか。
それほどまでに、右側の三井は滑稽でブザマで憐れだった。

左の三井が颯爽と馬に跨る。
その一方で、右の三井は藤崎に跨られ、尻を叩かれている。

左の三井が、馬の首をなでる。
右の三井が、藤崎のくつ下を顔に押し付けながら鼻をならす。

左の三井が、取り巻き達に囲まれる。
右の三井が、藤崎に跪き、尻を振りながら、つま先を舐める。

左の三井が、体幹トレーニングをしている。
右の三井が、待てのポーズをしている。

左の三井が、鞭の手入れをしている。
右の三井が、藤崎の鞭に舌を這わせている。

左の三井が
 『ほら、グズグズするな!』
後輩を叱責する。

右の三井が
『ほら、章乃、グズグスするな!』
『も、申し訳ありません…』
『人の言葉を喋っていいって誰が言ったの?わん、でしょ?』
『わ、わん!』

左の三井が、経営学に関する本を読んでいる。
右の画面で、藤崎が、全く同じ本を読んでいた。
『ふぅん。難しい本、読んでたんだねぇ』
その足元で。
三井。
土下座をしていた。
本を読みながら、両脚を三井の頭に乗せている藤崎。
頭を踏まれ、ジタバタともがく三井。

『ほら、こうされるのがいいんだよね?』
『あうっ、あうっ…』
『今まで詰め込んできた知識も、全部出しちゃおうね?』
『あっ、バッ、バカになりゅっ…』
『そうそう。全部出してバカになっちゃおうね』
『だ、ダメッ…わた、わたし、おやのかいしゃ、つがなきゃっ、いけ、いけないのっ!』

『そうなんだぁ』
『そうっ、そうなのっ!』
『じゃあ、代わりに私が継いであげるよ。それならいいでしょ?』
『だ、ダメダメッ、わた、わたしがっ、つぐのっ!そのた、そのためにっ、がんばってっ、きたのっ!』

『でも、こうされると気持ちいいんでしょー?こうして、足の裏で頭ゴシゴシされるの。ほーら、ゴシゴシ、ゴシゴシ…』
『だっ、やめっ、やめろっ、ダメッ、ダメだって、ばっ、バカになっ、なっちゃう、からっ!』
『気持ちいいんでしょう?好きだもんね、踏まれるの』

『す、すきっ、だから、やめてって、いってんのっ!』
『なんでぇ?いいじゃん、好きなんでしょう?』
『なに、なにも、かんがえ、かんがえられなく、なりゅっ、なるから、ダメ、なのっ!』

『何も考えられなくなるほど、気持ちいいんだぁ。気持ちよくて、バカになっちゃうんだぁ。バカになっちゃったら、親の会社、継げないねぇ』
『そ、そう、なのっ!だ、だから、やめっ、やめるのっ!』
『でもさぁ、そんなに強く踏んでないよね?イヤなら振り払えばよくない?』

『そっ、それ、それわぁ…』
『ねえ、なんで?踏まれたらバカになっちゃうんでしょ?』
『そ、そうだけどぉ…』
『やっぱり、ホントは踏まれたいんだぁ』
『ち、ちがう…』

『いいじゃん、素直になりなよぉ。好きなんでしょ、コレ?大丈夫、誰も見てないよ?この部屋には章乃ちゃんと私のふたりだけ。そうでしょう?』
『そう、そうだったっけ…』

『そうそう。ほら、もっと気持ちよくなろ?気持ちよくなって、頭のなか、カラッポにしよ?ほら、章乃ちゃんの頭の中から、知識がどんどん溶けて、流れていくね?悔しいね?気持ちいいね?』
『くやしぃ…きもちいぃ…』

『バカになった章乃ちゃんじゃ、親の会社は継げないから、代わりに私が継いであげるね。よかったね、先輩想いの後輩がいて』
『ありがとう、ございましゅ…あぁ、バカになりゅ…くやしぃのに、だめなのにぃ…』

『そうそう。くやしいね。全部搾り取ってあげるからね。感謝してね。だから、もっともっとバカになって、私を楽しませてね』
『だ、ダメッ、やっぱり…』
『ダメじゃないでしょ?』
藤崎が、足にグッと力を入れた。
『あああぁぁぁっ!それ、ダメ、ダメダメッ、おかしくなるっ、からっ!』

『だったら力づくで抵抗しなよ。その鍛えた体でさぁ。私の足、どけてみな?ほら、ほらほら!』
『ダメダメッ、ダメだってっ!』
『悦んでんじゃん!ヘンタイ!』

頭が追いつかない。
スクリーンに映る。左右の三井。
あまりにも、かけ離れていた。

3年近く、共に過ごした三井。
ライバルではあるが、どこか眩しい存在でもあった。
私にはない魅力を持つ、ストイックな女性。
彼女がどれだけ努力を重ねてきたか、知っているつもりだ。
馬術しかり。
卒業後は親の後継者となるべく勉強をしていることも。

『イキそうなんでしょ?いいよ、イキな!』
『く、クセになりゅっ…ぜったい、ダメなやつっ…こんなの、おぼえたら、もう、おわりゅっ、イキ、イキたくな…』
『頭を踏まれながら、知識もプライドも溶けて消えていくのを感じながら、ブザマにイけ、マゾ女!」
更に足に力を入れる藤崎。

『イッ、イグッ、イグイグイグッ…』
左の画面では、取り巻きのひとりに過ぎない後輩。
その後輩に、グリグリと頭を踏まれる三井。
三井が声にならない声をあげる。
歓喜の雄たけびのようでも、断末魔のようでもあった。
足もとでビクビクとけいれんする三井を、楽しそうにながめる藤崎。

画面が切りかわる。
左右の分割がなくなり、一面に三井が映る。
突き出された藤崎の足。
つま先に鼻を寄せ、そのニオイを一心不乱に嗅いでいる。
『ねえ、わんちゃん。くつ下のニオイ好き?』
『わん…』

嫌がっているそぶりはなく、ニオイを嗅ぐことに集中している三井。
『そうなんだぁ!すっかりクセになっちゃったねぇ!』
『わ、わん…』
『最初はあんなに嫌がってたのに。今では、嗅がせてほしくてオネダリしちゃうくらいだもんね』
フンッフンッ、と鼻を鳴らす三井。

『アンタがどんなふうにオネダリしてたか、次から撮ってあげるね』
三井が、切なそうな、恥ずかしそうな表情で藤崎を見上げる。
『ほら、休むな。ニオイを嗅いでろ、ポチ』
『あうっ…』
『そんな態度じゃ、もう嗅がせてあげないよーん?』
つま先を、三井の顔の前でクルクルと動かす。

動きに合わせて三井の視線も動く。
『ほらほら、嗅がせて欲しいんでしょー?』
『わ、わんっ!』
『嗅がせて欲しかったらさぁ…さっきのアレ、やりなよ?』
『わ、わうっ…』
トロンとした目で藤崎を見上げる。
その表情は、藤崎を非難しているようでも、何かを期待しているようでもあった。

画面が切りかわる。
ソファに座る藤崎。
その前に、テーブルがあった。
いや、よく見ると…
よつんばいになった、三井。
背に、ガラス製の板を乗せていた。
板には、お菓子の袋とジュースが乗っている。
『こぼさないでくださいね?こぼしたら、オシオキですよぉ?』

三井の言葉はない。
ただ、コクコクと頭を前後に振ることで、意思を示す三井。
その口には、鞭が咥えられていた。
『ご主人様の大切な鞭も、落としちゃダメですよぉ?分かってますかぁ?』
頭を動かし、必死に意思表示をする三井。
『そう。それじゃ、始めましょうか』

藤崎がリモコンのスイッチを押す。
テレビに映像が映る。
『ほら、これが今までの三井先輩ですよ。カッコよくてみんなの憧れで。ポチとは…あっ、ごめんなさい。今のセンパイとはずいぶん違いますね?同じ人とは思えないくらいですよ?』
うなだれた三井の尻を、つま先でつつく藤崎。

再び、三井がテレビに視線を戻す。
『カッコよかったころの三井センバイには、もう二度と戻れないでしょうけど…せめて、みんなの前ではこれまで通り振舞えるよう、この映像を見て思い出しましょうね?三井センパイが、どんな人だったのかを』
テレビには、いつものメンバーが映っている。

『みんな、センパイがこんなヘンタイだなんて思ってもいないんですよ?可愛い後輩を騙して、悪いセンパイですね』
三井が、首を振る。
『騙してないの?じゃあ、今の姿、みんなに見てもらいますか?』
三井が、更に激しく首を振る。

『ふふっ。そんな必死になっちゃって…でも、いつかはお披露目会をやろうと思ってますよ?私の忠犬として、みんなに紹介してあげますからね?』
首を振り続ける三井。
『ほーら、テレビに集中してください?』
再び、三井の尻をつま先で小突く。

『それがイヤなら、元のセンパイに戻ってくださいね。戻れれば、ですけど。そうしないと、全部搾り取られちゃいますよ?知識も、プライドも、お金も、将来も、何もかも。私に貢ぎながら生きていくの。イヤなのに、ダメって分かってるのに、私に大切なものを差し出しちゃうの。頭がおかしくなっちゃうくらい悔しいのにね、やめられないの。やめなきゃ、やめなきゃって思ってても、その一方で、次はなにを差し出そう、奪われちゃうんだろうって、期待しちゃうの。ほら、想像してみて?自分が自由に使えたはずのお金も、あるはずだった将来も、ぜんぶ私に捧げて。後輩たちからは、蔑みの目で見られて。それなのに、私は当然のような顔をしてるの。当然な顔をしてお金を使うし、当然な顔をして、三井センパイをこきつかうの。自分が座るはずだった社長の席に、私が座ってるの。でも、自分は平社員のまま。後から入社してきた後輩たちにまで、バカにされて、こきつかわれて…そんなのイヤでしょう?』

首を前後に振る三井。
その時。
『あっ…』
咥えていた鞭が、床に落ちてしまった。
『あーあ、落とすなっていったのに。私の言いつけが守れませんでしたね。オシオキですよ?』

画面が切り替わる。
土下座した三井。
その頭に足を乗せる藤崎。
『そういえば、アンタの親、ビル持ってなかった?』
『親の、っていうか、会社の、です…』
『どっちでもいいよ。でさ、その中に借りられそうな部屋はないの?少し広めなやつ。次のレースはそこでやろうよ』
『そ、そんな…』

『そうすれば、誰かに見られる心配もないでしょ?いいアイディアじゃない?』
『で、でも、お金が…タダじゃ、借りられない…』
『ご主人様がお願いしてるのに?ダメ?』
『う、うぅ…』
『お願いきいてくれたらぁ、くつ下のニオイ、もっと嗅がせてあげてもいいよ?』
『そ、それは…』

『それにぃ…こうやってグリグリ踏まれるの、好きだもんね?ほらほらー』
『ダッダメ!そんっ、そんなにつよくっ踏まれたらっ』
『踏まれたら、どうなの?』
『そっ、ダメ!ダメなやつだってっ!マジで後戻りできなくなるからっ!」

『大げさじゃない?そんなに必死になっちゃって。頭、踏んでるだけだよぉ?』
『ちっ、ちがうちがうっ!おおげさ、じゃないっ、から…それ、ダメっ!ホントにアタマおかしなっちゃうのっ!』
『踏まれると、アタマ、おかしくなっちゃうんだ?』

『そっ、そうなのっ!アタマ、ぼーっとして、なにもかんがえられなく、なっちゃう、から…バカになっちゃうからぁ!』
『そうなんだ?そんなに気持ちいいんだ?この前踏んであげたときも、そうだったの?』
イジワルな笑みを浮かべたまま、足を動かし続ける藤崎。

『そう、なのっ!アタマ、ぼーっとして、くやしくて、ダメなのに、ふまれることしかっ、かんがえられなく、なっちゃうのっ!』
『そうなんだぁ。踏まれることしか考えられなくなっちゃうんだぁ。じゃあ、もっと踏んであげるね』

『なっなんでっ?ちがう!ふんじゃダメッ!ばかになっちゃうから!ふむな!もう、ヤなのっ!これいじょうはっ!アタマ、ぼーっていて、何も考えられなくなるのっ!』
『ふーん、そうなんだ?』
『そうなのっ!だからっ…』
『それってさぁ、私は別に困らないよね?』
『…えっ』

『アンタの頭が、バカになるってだけでしょ?今よりもっとバカになって、私にもっと逆えなくなっちゃうんでしょ?それってさ、私にはメリットしかないじゃん』
『そっ、そんっ…えっ…』
『それにさぁ、二度と戻れなくなっちゃうとか言うけど。もう遅いって。とっくに手遅れなの。自分でも気づいてるでしょ?頭、踏まれたいんでしょ?私に。ほら、見なよ、こっち。この足で、グリグリって、されたいんでしょ?ほら、見ろって。この足で、踏まれたいんだろ?目ぇ逸らすなよ?』
『あ、あぁぁ…』

『踏んで欲しかったら、会場押さえな。コネでもなんでもいいからさ。ダメならポケットマネーでもいいよ』
『う、うぅ…』
藤崎が、つま先を三井の鼻に押し付ける。
『ほら、お前の大好きな、くつ下のニオイだよ?』
三井が鼻息を荒くする。

『会場押さえてくれたら、好きなだけ嗅がせてあげてもいいよ?』
『わっ…分かりました』
目をトロンとさせたまま、三井が返事をする。
『はい、決まりね。じゃ、ごほうびにソレ、貸したげる。好きなだけクンクンしな?』
『あ、ありがとうございます…』
くつ下を脱いで、三井の前に投げ捨てる。
床に落ちたソレに鼻先を近づける三井。

再び三井の頭に足を乗せる藤崎。
『いっぱい嗅いで、脳みそトロトロに溶かしちゃおうね?』
『は、はいぃ…』
裸足で三井の頭をなでる藤崎。
『会場押さえたら、証拠見せてね?そしたら、この足でグリグリ踏んであげるから』

画面が暗転する。
映像は、そこで終わりのようだった。

コメント

  1. 佐々木 より:

    これは、おねだりと、さっきのアレは超みたいですね!三井さんがどんどん引き返せなくなっていくのが良いです。

    • slowdy より:

      >佐々木さん
      ありがとうございます!
      プライドの高い三井が葛藤しつつも堕ちていく姿をどう描くかを考え、このような形になりました。

      『さっきのアレ』は、今後の展開の中で書けたらと思っていますので、少々お待ち下さいませ。

  2. 匿名 より:

    ビフォーアフター演出最高っす!
    左の三井が
     『ほら、グズグズするな!』
    後輩を叱責する。
    右の三井が
    『ほら、章乃、グズグスするな!』
    『も、申し訳ありません…』
    自分が指導してた後輩に躾けられる先輩無様すぎる!
    立場逆転ってエロいすね

    • slowdy より:

      >匿名さん
      ありがとうございます!
      後輩に逆らえないという、ただでさえ情けない状況で、それが自分が教えてきた方法(言葉)だったら…
      更に悔しくて惨めな感じがするだろうなぁと思い、書いてみました。
      それを更に分かりやすく表現するために、ビフォーアフターという形をとってみました。

  3. 匿名 より:

    最初は中谷を蔑んで見てたはずの三井が今ではこのザマ!
    SとMは紙一重ですね。プライドの高さ故に堕ちた時の反動がものすごい!

    • slowdy より:

      >匿名さん
      返信が遅くなりました💦

      そうですね。やっぱり落差があればあるほど、惨めさがあってエッチだと思います。
      プライドが高いが故に、自分がMであることを認められず、でも意思に反して体が反応してしまう。
      それを藤崎に見抜かれ、嘲笑われながらプライドを踏みつけられ、興奮してしまい、ついに自身がマゾであることを認め…

      この先、三井はどこまで堕ちていってしまうのでしょうか。

  4. てつ より:

    毎回楽しく見ています!
    今後どうなって行くのでしょう!
    たのしみです

    また早めのアツプおねがいします!

  5. 匿名 より:

    このテーマの記事の続き待ってます😊

  6. 匿名 より:

    このテーマの記事の続き待ってます!