翌日も、翌々日も、アタシたちは週末の計画を話し合った。
テーマパークに行く前日のような、ワクワクするような感覚。
週末が待ち遠しかった。
でも…
どこか、上の空な、姉。
勉強中も、プレイの最中も。
時折、ぼーっと考え事をしているのだ。
「お姉、どうかした?」
見かねて、問いかける。
「ん?別に、何でもないよ」
ただ、そう答える姉。
そして、ついに土曜日はやってきた。
姉と一緒に、母を見送る。
しばらくして、姉が首輪を持ってくる。
そして、ソファに座るアタシに、それを差し出す。
でも、アタシはすぐには応じない。
どうすれば、姉を焦らせるか、羞恥心を煽れるか。
恥ずかしそうに顔を赤らめる姉。
そんな姉に、目の前で裸になるよう命じる。
手で、胸と股間を隠す、姉。
「あおい、おすわり」
「わん」
「お母さんが帰ってくるまで、あおいのこと、かわいがってあげるね」
潤んだ目でアタシを見上げるあおいの首元に、手を伸ばす。
何度も繰り返した、行為。
慣れているはずでも、場所が変わるだけで、こんなに背徳感が増す。
日常を過ごす空間の中で、全裸のあおいに首輪を付ける。
なんだか、本当にあおいが犬になったような…
「それじゃ、はじめよっか」
まずは、芸から。
犬として、ご主人様に向けるポーズ。
ひざと腕を軽く曲げたまま、手を、顔の近くで握らせる。
「これが、待機のポーズね」
媚びたような、飼い主の顔色をうかがうような、姿勢。
「そして次は、ヘソ天のポーズね」
さっきの、待機のポーズと似ている。
違うのは、あお向けになっていること。
ご主人様にお腹を見せながら、敵対心がないことを示すポーズ。
「ネットで見たんだけどさ。おへそを天に向けるから、ヘソ天って言うんだって。このポーズも、ちゃんと覚えてね」
情けない表情のあおいが、コクンとうなずく。
ソファに座ったまま、あおいに指示を出す。
待機のポーズ、ヘソ天のポーズ。
言われるまま、あおいが屈辱的なポーズをとる。
「よくできました。今日は、これで飼い犬としての立場を、しっかり教えてあげるからね」
他にもいくつかポーズの案はあったが、今日はこの2つにしておこう。
「次はねぇ…」
靴下を脱ぐ。
そのまま、待機のポーズをとるあおいの鼻先に、持っていく。
「これが、ご主人様のニオイだよ。ちゃんと覚えてね」
今朝、履いたばかりだから、ニオイはまだないはず。
それでも…
「ほら、覚えた?じゃあ、いくよ?」
靴下を少し丸めて…
少し離れた場所に、放り投げた。
「ほら、取ってきな、あおい」
両手を床につけ、四つん這いになるあおい。
靴下のある方へと、這い進んでいく。
形のいいお尻が、左右に振れる。
靴下を口にくわえ、こちらに戻ってくる、あおい。
ソファに座るアタシに向けて、くわえた靴下を差し出す。
「ちゃんと、取ってこれたね。いい子いい子」
靴下を受け取り、あおいの頭をなでる。
嬉しそうに、目を細めるあおい。
「じゃあ、もっかいね」
再び、靴下を放り投げる。
「ほーら、取ってこい、あおい」
嬉々として、靴下のほうへ這っていく。
妹に命じられ、裸になった姉。
放り投げられた靴下を、四つん這いになりながら、取りに行かされる。
ソファに座る妹の足もとで、くわえた靴下を差し出す。
頭をなでられ、本当にうれしそうな顔をする。
アタシだけじゃない。
あおいも、楽しんでいる。
靴下を放り投げては取ってこさせる、ということを何度か繰り返したあと。
「じゃあ、次はお散歩しよっか。それとも、少し休憩する?」
ふるふると、首を横に振るあおい。
首輪にリードを取り付ける。
姉妹として過ごした記憶の強いリビングでの、散歩。
飾られた家族写真。
賞状やトロフィー。
その前を、アタシは飼い主として、あおいは飼い犬として、通る。
姉ではなく、犬なのだと。
あおいに、そのことを改めて分からせる。
「疲れちゃったね。ちょっと、休憩しよっか」
ソファに腰かける。
「あおいは、ヘソ天のポーズね」
言われたとおり、あお向けになり、ヘソ天のポーズをとる。
アタシはゲーム機を取り、ゲームの続きを始める。
しばらくすると、足もとにいるあおいが、ソワソワしだす。
構ってほしいのかな。
気にはなったが、敢えて気にしないフリをする。
ついに、ヘソ天のポーズをやめ、アタシの足をちょんちょんと、つつき始める。
「あーあ、言いつけが守れなかったね。悪い子には、オシオキ、しないとね」
少し不安そうな表情をする、あおい。
「もっかい、ヘソ天のポーズして?」
あお向けになったあおい。
アイマスクを取り出し、あおいに付ける。
「まだ、そのままね。今後はガマン、できるかな?」
ゲームの電源は、付けたまま。
画面は見ず、足もとのあおいの様子を眺める。
けなげにも、じっとしたまま、ポーズをとり続けるあおい。
ちょっと心配だったけど、大丈夫そうかな。
そのまま、あおいを眺める。
モジモジと、腰を動かす、あおい。
5分ほど経っただろうか。
「よく頑張ったね。今、外してあげる」
アイマスクを外す。
拗ねたような顔をしたあおいが、頭をアタシの足に擦りつける。
「ふふっ。ごめんね、あおい。でも、今度はちゃんと言いつけ守れたね。えらかったね。ご褒美あげるから、こっちにおいで」
アタシは、自分のヒザを、ポンポンと叩く。
ソファへ身を乗せ、頭をヒザにのせる、あおい。
「いい子、いい子」
頭を、優しくなで続ける。
「そろそろ、休憩は終わりにしよっか」
あおいの頭をポンポンと軽く叩いてから、立ち上がる。
「散歩の続き、しよ?」
あおいが、何か言いたげな目で、こちらを見つめる。
「ん、どうした?」
「わ、わん…」
恥ずかしそうにモジモジしながら、視線を部屋の外へと移す。
「もしかして、オシッコ、したくなっちゃった?」
「わん…」
「そっか。じゃあ、散歩の前に、オシッコしちゃおっか」
コクン、とうなずく、あおい。
リードを引きながら、部屋の外へと出る。
廊下。
ドアの前で、アタシは止まった。
トイレではなく、そこはお風呂場の前。
不思議そうな表情のあおい。
アタシは、ドアを開ける。
「さ、入って」
戸惑うあおいに、アタシは…
「ここでオシッコするの」
目を見開く、あおい。
「ニンゲンのトイレでしたかったの?ダメだよ。あおいはワンちゃんなんだからさ」
あおいが下唇を噛む。
「だからって、お風呂場ならいいのかって話だけど…ちゃんと洗い流せば、まあ大丈夫でしょ」
ズボンの裾をめくり、タオルを持って浴室へと入る。
「ほら、おいで、あおい」
恥ずかしそうにモジモジしたまま。
なかなか、入ってこない。
プライドか、羞恥心か。
そもそも、お風呂場でオシッコをするということに抵抗があるのか。
ただ、本気で嫌がっているようには見えなかった。
葛藤しているように見える。
モジモジと、太ももを擦り合わせるあおい。
尿意が高まってきたのだろう。
そして…
意を決したように、浴室へと入ってきた。
「排水溝に向けて、片足を上げながらオシッコするの。分かった?」
「わ、わん…」
消え入りそうな声。
「大丈夫だよ。オシッコするところ、ちゃんと見ててあげるからね」
恥ずかしそうな、非難するような目でアタシを睨んだあと。
排水溝に対して、お尻を向ける。
片足をあげて…
「んっ…」
あおいが、放尿を始めた。
シャーっという、音。
よほどガマンでしていたのか、あおいがホッとした表情をする。
「いっぱい、ガマンしてたんだね。たくさん、オシッコ出てるね」
顔を赤くしたあおいが、アタシを睨む。
『黙ってなさい』
目が、そう言っているように見えた。
オシッコのニオイ。
風呂場の窓は閉め切ったままで、換気扇も付けていないことに気付く。
排水溝に流れていく、黄色い液体。
恥ずかしそうに俯く、あおい。
勢いのよかった放尿は、それでも次第に弱くなっていき…
「はい、よくできました。キチンとオシッコできて、えらかったね、あおい」
言いながら、あおいの頭をなでる。
風呂場の窓を開け、換気扇を回す。
シャワーで、浴室の床やバスタブを流していく。
「キレイにしてあげるから、こっちにお股、向けてね。はい、待機のポーズ」
先ほど教えた、待機のポーズをとるあおい。
「いっぱい出たね。スッキリしたね。ご主人様が、キレイにしてあげるからね」
流し終えたあと。アタシは、シャワーであおいの体を流していく。
タオルで、あおいの体を拭き取っていく。
「はい、オッケー。お疲れ様でした。じゃ、リビングに戻ろっか」
リビングに戻ったアタシたちは、再び散歩を始めた。
部屋の中を、ただ歩くだけの行為。
それが、なぜこんなに楽しいのか。
こんなに満たされるのか。
姉が、一緒だから。
あおいと過ごす時間が、アタシは好きなのだ。
しばらく散歩をしたあと、休憩をはさむ。
ソファに座ってゲームをするアタシの前で、待機のポーズをとり続ける、あおい。
放置プレイ、という言葉を聞いたことがある。
それを意識しているのだが、加減が分からなかった。
ゲームを楽しんでいる風を装いながら、あおいの様子を窺い続ける。
飽きてはいないだろうか。
疲れてはいないだろうか。
今のところ、その兆候は見えない。
散歩中。
家族写真を気にしたり、カーテン越しに見える窓の外を気にしたりする、あおい。
休憩中。
アタシの顔色を窺いながら、従順にポーズをとり続ける、あおい。
「ほら、取ってこーい」
靴下を放り投げながら、次は何をしようか、考える。
ご主人様の前で、靴下をくわえたあおいがしっぽを振る。
実際にはしっぽなどないのだが、振っているように見えるのだ。
あおいも、ちゃんと楽しんでくれている。
そのことが、アタシをホッとさせる。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
犬のような、あおいの息づかい。
犬になりきったあおいが、発情しているサインだった。
「あおい、イクイク、したい?」
コクンとうなずく。
「じゃあ、こっちにおいで」
連れてきたのは、家族写真の前。
数年前。
アタシが、まだ中学生になる前に撮った写真。
今よりも、少しだけ若い、父と母。
姉も、まだ中学生だった。
「みんなに、あおいがイクイクするところ、見ててもらおうね」
そう言って、あおいに手を差し出す。
家族写真とアタシの手を、チラチラ見る。
「恥ずかしがらなくていいんだよ。あおいは、お姉ちゃんじゃなくて、ワンちゃんなんだから。ご主人様の手でイクイクするのが大好きな、とってもお利口で、エッチなワンちゃん。そうでしょ?」
顔を赤くしながらうつむく。
「いつもみたいに、ご主人様の手でイクイクするところ、見てもらお?こんなに上手にイクイクできるんだよって、みんなに見てもらおうね?」
あおいの息が荒くなっていく。
「ほら、見える?この人が、アタシの尊敬するお姉ちゃん。とっても頭がよくって、ちょっと口うるさいけど、優しくて、自慢のお姉ちゃんなんだ」
あおいが、潤んだ目で見つめてくる。
「名前も、葵っていうの。あおいと同じだね。今日は、葵お姉ちゃんに見てもらいながら、イクイクしようね」
ふーっ、ふーっ…
「はい、またがって」
改めて、あおいを促す。
写真の中の、少し幼い自分を見つめながら。
あおいが、アタシの手にまたがった。
そして、ゆっくりと、腰をゆすり始める。
「イクイク、気持ちいいね。いっぱいお散歩して、オシッコもきちんとできて。あおいはエライね。イクイク、イクイク、気持ちいいね」
耳元でささやく。
一心不乱に腰を動かしながら、目は一点を見つめる、あおい。
写真の中の、自分。
それも、まだ中学生だったころの…
「葵お姉ちゃんにも、褒めてもらおうね。ほら、イクイク、イクイク…」
ふーっ、ふーっ…
あおいの興奮が、高まっていく。
己の写真から、目を離さないあおい。
ふと、イジワルな感情が芽生える。
「いっぱいイクイクできて、エライね。でも、もっとガマンしたら、葵お姉ちゃん、もっと褒めてくれるかも。イクイクしたくても、ちゃんとガマンできてエライね。雫のワンちゃん、イクイクのガマンもできるの?スゴイねって。葵お姉ちゃんに、一緒に褒めてもらおうね」
あおいが、歯を食いしばる。
「もう、イクイクしちゃいそう?まだ、イクイクしないよね?あおいは、我慢強い子だもんね。そうでしょ?ほら、イクイク、イクイク…」
我慢を強いながら、あおいを煽る。
「イクイクのガマンできて、エライね。カッコイイよ。ほら、イクイク、イクイク…」
口の端から、よだれを垂らしながら。
それでも、必死に耐えるあおい。
「ねえ、もしかして…イクイク、しちゃいそうなの?ウソだよね?もっとガマン、できるよね?ほら、葵お姉ちゃんも応援してるよ?イクイク、イクイク…」
顔をまっ赤にしながら、耐える。
それでも、キツくなってきたのか。
「ほら、イクイクの動き、止まってるよ」
再び、あおいが腰を動かし始める。
「とっても気持ちよさそう…イクイク、大好きだもんね。ほら、イクイク、イクイク…アタシがいいよって言うまで、ガマンしてね。ガマンできなかったら、オシオキだからね。イクイク、イクイク…」
目に涙を浮かべながら、腰を動かし続ける、あおい。
必死のガマンもむなしく。
「えっ、ウソ…ウソでしょ?まだガマンできるよね。もしかして、もうイクイクしちゃうの?お願い、ガマンして。ガマンだよ、あおい。イクイクしたら、オシオキだよ。ほら、そんな顔しないで、ガマンして。ダメ?もうイクイクするの?しちゃうの?もう、ガマンできない?…そう。そうなんだ。イクイクしちゃうんだね。うん、いいよ、イクイクしよ?いっぱいガマンしたぶん、いっぱい気持ちよくなろ?ご主人様の前で、葵お姉ちゃんに見られながら、イクイク、しようね。ほら、葵お姉ちゃんに報告して?イクイクします。ガマンできずにイクイクするところ、見ててくださいって。ほら、言えるでしょ?」
「あ、あお、あおひ…」
「なんでニンゲンの言葉しゃべるの?違うでしょ?」
「わ、わん、わんわんわん!わん!」
髪を振り乱しながら。
呂律の回らない舌。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。
やがて、太く低い、ケモノのような声で。
あおいが、全身を痙攣させた。
「あー、イっちゃったね。イクイクするとこ、見られちゃったね」
荒い呼吸をしながら、なおも体を震わせるあおい。
その耳元で、ささやく。
「ガマン、できなかったね。オシオキだよ、あおい」
コメント
妹視点でのやりとりだけでなくペットプレイや羞恥プレイなどしっかり描かれていて引き込まれました。
お仕置きの内容や今後の展開がとても楽しみです。
特に今回の写真を見ながらのイクイクがよかったです。
>ロムさん
ありがとうございます!
ここ最近、twitterでの短編投稿が続いていたので、本作についてはプレイや心理描写をもう少し丁寧に描こうと思いながら書いてます。
リビングならではのプレイを考えたとき、写真の活用を思いつきました。
気に入っていただけで嬉しいです。
物語は終盤ですが、最後まで楽しんでいただけるような内容をお届けできればと思います。