ポニーガールとご主人様 プロローグ お馬さんごっこ

きっかけは、私がまだ幼い頃。
友人と、アニメを観ていたときだった。
女の子が幼い妹をあやしているシーン。
妹を背中に乗せ、お馬さんゴッコをする姉。
姉のお尻を叩きながら、はしゃぐ妹。
やれやれという表情をしつつ、部屋をはい回る姉。

どうということはない、微笑ましいはずのシーン。
なぜか、ドキドキが止まらない。
友人を見ると、楽しそうに笑っている。
ドキドキしているのは、自分だけか。

その夜、寝る時。
例の、アニメのシーンが頭から離れない。
妹にお尻を叩かれながら、部屋をはい回る姉。
何度も脳裏に浮かぶ。

その日以来、お馬さんごっこに対し、妙に意識してしまうようになった。
テレビで見かけるたび。
学校で、男子がふざけ合って馬乗りになっているたび。
言いようのない感情がこみ上げてくる。

あのアニメのシーンをもう一度観たい。
しかし録画はしていなかった。
頭の中で、何度も再生する。


中学生になった。
自然と、性に関する知識も増えていく。
もしかしたら、自分はマゾなのでは、と思うようになった。
しかし、痛いのは嫌いだし、貶されるのも好きではなかった。
むしろ負けん気は強いほうで、言われたことを倍にして言い返すくらいだった。

ある日、クラスの男子が騒いでいた。
兄が持っているエッチな漫画を、学校に持ってきたらしい。
数人で輪になって、漫画を読んでいる。
口々に、感想を言い合う男子。
それを、呆れた目で見る女子。
私もその一人だった。
しかし、ある男子の一言で、状況は一変する。

「俺さ、あの漫画が一番興奮した。友達の姉を馬みたいに調教するやつ」

周囲の女子の、軽蔑するような視線。
他の男子も若干引き気味だった。
「なんでだよ。エロかったじゃん。特に馬用の鞭で…」
「分かった分かった。お前がヘンタイなのは分かったから」
担任の先生が教室へ入ってくる。
没収されるのを恐れた男子は、漫画を慌てて机の中へ隠す。

『友達の姉を馬みたいに調教するやつ』
『特に馬用の鞭で…』

さっきの男子の言葉。
授業が始まってからも、その言葉が頭を占める。
どんな漫画だったんだろう。
読んでみたい。
でも、言える訳ない。
読ませてほしい、なんて。
そんなこと言ったら、私はその日からヘンタイ女と呼ばれるだろう。
女子からはケイベツされ。
ただでさえ、男子から性的な視線を感じることが増えていたのだ。
それがさらにひどいものになるなど…

帰宅後、私は自室へと籠った。
そして、着ていたものを全て脱ぎ去る。
中学に入ってから知った、オナニーという行為。
体の中で渦巻く性欲を、発散させるための手段。
馬として調教される私を、想像する。

『友達の姉を馬みたいに調教するやつ』

友達の姉を、自身に置き換える。
四つんばいになりながら、部屋をはい回る。
そんな私にまたがりながら、鞭を振るう人物。
女の子だった。
友人の妹を背に乗せ、お尻を叩かれながら這いまわる、己の姿。
目を閉じ、指の腹でクリトリスを撫でながら…
お尻を突き出し、手のひらで叩く。

『紗枝さん、遅い!もっと早く進んでよ!』
パシッ!
「ご、ごめんなさい…」

年下の女の子にまたがられ、お尻を叩かれ、早く進めと急かされ…
胸が苦しい。
悔しいような、苦しいような。
それでいて、もっと欲しいと思ってしまう。

オナニーの時、想像の中の私は決まって馬になる。
相手は、いつも女の子だった。
友人の妹の時もあれば、学校の後輩の時もあった。
私がこんなこと考えてるなんて、誰も思ってもいないだろう。

中学を卒業後、私は女子高へと進学した。
日に日に大きくなる乳房。
それを、男子から性的な目で見られるのがイヤだったというのもある。
そしてもう一つ。
私の性的嗜好。

高校生になった私は、女子からモテた。
周りに男子がいない、というのもあったと思う。
その中でも、他の女子に比べて背が高く、運動のできる私は、魅力的に映ったのかもしれない。
特に二年生になってからは、後輩の女子から告白されるようになった。
従順そうな、子犬のような女の子たち。

頼りがいのある、お姉様的な存在に映ったのか。
あるいは、王子様的な存在を求められていたのか。
キャーキャー言われるたび、自尊心が刺激される。
でも…

満たされない。
だって本当は…

帰宅後、いつものように自室でオナニーに耽る。
スマホを手に入れた私は、エッチな動画を観漁った。
四つんばいになりながら、部屋をはい回る女性。
突き出したお尻を、鞭や手のひらで叩かれる女性。
スパンキングという言葉を、その時知った。

パドル、ばら鞭、そして乗馬用の鞭。
イジワルな笑みを浮かべた女の子が、それらを振るう。
突き出されたお尻が、真っ赤に腫れあがっていく。
見ているだけで痛々しい。
それなのに…

彼女たちはうめき声をあげながら、お尻をくねらせる。
そして、もっと叩いてほしいと態度で示す。
くねくねと動くお尻に、鞭をピタッと当てて…
それを振り下ろす女の子。

『紗枝センパイ、お尻、こっちに突き出してください』

後輩が私に命じる。
顔を赤らめながら、従順にしたがう。
手に持った鞭を、私のお尻に当てて…

『いきますよ?覚悟してくださいね?』

そう言ってから、思い切り振り下ろす。
ピシッという音とともに、鋭い衝撃が伝わる。

『この鞭で、センパイが私のお馬さんだってこと、分からせてあげますね』

鞭が振るわれるたび、削ぎ落されていく。
先輩としての、年上としてのプライド。
そして刻まれていく、屈辱的な悦び。
馬としての自覚。
ご主人をこの背に乗せ、はい回りたい。

学校で。
後輩たちの黄色い声。
彼女たちは知らない。
私の、本当の願望を。
本当の姿を。
知ったら、どんな顔をするだろう。
軽蔑するだろうか。
嗤うだろうか。
それとも…

『紗枝センパイのこと、誤解してました。本当はこうして欲しかったんですね』

私にまたがりながら、鞭を振るう後輩。

『あー、紗枝センパイにこんなことできるなんて、すごい優越感』

ゾクゾクする。

『ほら、進むのが遅いぞ?オシオキされたいの?』

慌てて、進む速度を上げる。
笑い声。

『他の子にも教えてあげよっかな。教えてもいいでしょ?だって、紗枝センパイもそうされたいもんね?』

体育館で。

『ほら、紗枝部長、四つん這いになってください』

「う、うん…」
両手を床についた私の背に、後輩の体重が加わる。
私の隣には、バレー部の部長。
私と同じように、四つん這いになっている。
いつものクールな彼女ではなく。
目をトロンとさせ、ヒクツそうに周囲を窺っている。
その背にまたがっているのは、彼女の後輩である、バレー部の一年生。

『ほら、紗枝部長、頑張ってください』

耳元で、後輩に囁かれる。

『練習の成果、見せてあげましょうね』

スタートの合図とともに、這い進む。
後輩を乗せ、歯を食いしばって進む二頭の競走馬。
それを、後輩たちがはやし立てる。

『ほら!紗枝センパイ遅いぞ!』

尻に衝撃が走る。

『部長としての意地を見せなさい。それともバレー部に負けてもいいの?』

デッドヒート。
歓声をあげる、後輩たち。

『紗枝、負けるな!』
『負けたらオシオキですよ!』

頑張りも空しく、僅差で負けてしまう。

『あーあ、負けちゃった…』
『ほら、オシオキするよ。お尻出しな?』

私を取り囲む、後輩たち。
ニヤニヤと笑う彼女たちに向けて、私はお尻を突き出す…

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