ポニーガールとご主人様 第一章(2)ドミナント

そして、翌週…

乗馬服を着た新田。
その足元に跪く。
四つんばいになり、背中をかがめ…
新田が跨る。
そして…
ギュっと太ももで合図する。
言葉は不要だった。

新田を乗せ、部室内をはい回る。
新田の手が私のお尻にふれる。
そして…
パシッ
お尻に衝撃が走る。
私が教えた乗馬の技術で、私を調教する。

ヒトではなく、馬として作り変えられていく。
いや、本来の姿に近づいているのか。
私の尻を叩き、叱咤する新田に、遠慮はなかった。
言葉はない。
でも、お互いの気持ちは十分に伝わった。

尻を叩かれるたび胸が締め付けられる。
衝撃が、音が、痛みが。
私を溶かしていく。
形作っていく。


何度目かの調教。
「今日はこれで叩いてあげる」
乗馬服を着た新田。
手には、乗馬用の短鞭。
「ほら、早くしなさい」
「は、はい…」
新田の命令が、私の身体を熱くさせる。
繰り返される調教のなかで、すっかりと刷り込まれてしまった。
命令されることの快感を。
服従することの悦びを。

私も乗馬中に使う、鞭。
新田に使い方を教えたのも、私だ。
その鞭で、つつかれ、撫でられ。
焦らすように。弄ぶように。

こんな使い方は、馬にはしない。
でも、間違ってはいない。
私を調教するにはこうするのがいいことを、彼女は知っているのだ。

手のひらとはまた違う、鋭い衝撃。
私にこびり付いた、年上としての、先輩としての矜持。
それが、鞭で丁寧に、執拗に叩き落とされていく。
痛みとともにじんわりと広がっていく、新田への忠誠心。
私の中で芽生えたそれは、スクスクと育っていく。

テーブルに手をつき。
新田に向けて、お尻を突き出す。
新田の鞭。
焦らすように、ピタ、ピタ、と。
くっついては離れ、離れてはくっつく。
円を描くように、鞭がお尻を撫でる。
体が、反応する。
腰が、勝手に動いてしまう。
新田の笑い声。

ヒュッという、空気を切り裂くような音。
パシッという音とともに、お尻に衝撃が走る。
鋭い痛み。
それが、ゆっくりと広がっていく。
再び、鞭がお尻に触れる。
ピタピタと、合図を送る。
ここを叩くぞ、と。
歯を食いしばる。
そして…
パシッという、音。
刻まれていく。
削ぎ落されていく。
作り変えられていく。
後輩の女の子に、調教される己の姿。

調教のない日も。
お尻に残る鞭の痛みが、愛おしくて、切なくて。
毎夜、一糸まとわぬ姿で鏡の前に立つ。
新田に付けられた、鞭の跡。
赤く腫れあがったお尻も、日ごとに元へ戻っていく。
調教の日を待ちわびながら、私は体を熱くさせる。

「中谷先輩、今日もよろしくお願いします」
普段は、あくまで礼儀正しい後輩としてふるまう新田。
そんな彼女に対し、厳しい先輩としてふるまいながら。
私は待ちこがれる。
この子に、ご主人様に躾けていただける日を。

新田が鞭を手に取る。
小柄だが、堂々とした気品のある姿。
そんな彼女を見て、私の胸は高鳴る。
「ん?どうかしましたか、先輩?」
鞭でビュッ、ビュッと空気を切り裂きながら。
わざとらしく、とぼけてみせる新田。

数日後の部室にて。
乗馬服を着た後輩の前で、私は立ちつくしていた。
「ほら、ご主人様にごあいさつしな?」
「き、今日も、紗枝のこと、厳しく躾けてください」
仁王立ちする新田に、背を向けて立つ。
私はお尻を左右にふりながら、ズボンをゆっくりとずり下げていく。
テーブルの縁に両手をのせ、お尻をつき出す。

「紗枝ちゃんのお尻、白くておっきくて、やわらかいお尻。いつ見てもキレイで、エッチでうらやましいな。ずっとこうして見てたいくらい」
「そんな、こと…」
「さっきみたいにお尻ふってよ。フリフリ~って。そのおっきなお尻で、私のことエッチに誘ってみせて?」
「は、恥ずかしいです…」
「そりゃそうでしょ。そのためにさせるんだからさ。それとも、お尻をひろげて見せるのがいい?紗枝ちゃんがお尻の穴まる出しにしてるとこ、写真で撮ってあげようか?」
「や、やります!やりますから!」

あわてて、お尻をふり始める私。
背後からは、新田の笑い声。
「あはは!冗談だったのに…でも、それもアリか。いつか撮ってあげるね?」
恐ろしいことを、平気で口にする後輩。

「先週あんなに真っ赤にしてあげたのに、1週間経つと元に戻っちゃうんだね。でも、そのほうが叩きがいがあるか。今日もいっぱい叩いてあげるからね。中谷センパイ?」

部室内に響く、肉を打つ音。
一週間、待ちに待った衝撃、痛み、屈辱…
脳の中で、熱いものが広がっていく。
「ほら、勝手に動くな」
クネる私のお尻に、鞭を押し当てられる。
そのまま、グイっと元の位置に戻される。
「次、勝手に動いたらオシオキだからね」
ゾッとするような、冷たい声。
「ご、ごめんなさい」
合図を送るかのように、ピタピタと、お尻に鞭が当てられる。
来る!来る!
鞭を振り上げる気配。

全身に力が入る。
衝撃。
遠のきそうになる意識を必死に保ちながら。
お尻がクネらないよう、歯を食いしばって耐える。
しかし、結局お尻をクネらせてしまった私は…

足を組みながらイスに座る新田。
その前で、下半身を晒したまま立ち尽くす私。
足を肩幅に開き、両手を頭に乗せた、なんとも滑稽な姿。
「紗枝ちゃんも、すっかり従順になったね。普段はあんなに厳しい先輩なのに、お尻を真っ赤になるまで叩かれて、こんな情けないカッコまでさせられて。それはそれでいいんだけど…ちょっとモノ足りなくなってきたかなぁ」
「そ、そんな…」

「やっぱりさ、どうせやるなら、ただ調教するだけじゃなくて…そうだなぁ、競争とか」
言ってから、閃いたという表情をする。
「うん、競争!競争馬として調教してあげる。紗枝ちゃんも、競争馬になってみたくない?」

高校生のころ、よくした妄想。
体育館で後輩たちに囲まれながら。
バレー部の部長とともに、後輩を背に乗せて競争させられる。
負けてしまい、後輩たちに嗤われながらオシオキされる。
そんな妄想。

「でも、そうなると競争相手が必要か。騎手と調教馬がもう1組。でも、馬のほうは心当たりがあるの」
そう言って、ドアのほうをチラっと見る。
「騎手の方はどうしようかな…私の同期の結花ちゃんとかどう?あの子も、調教師としての適性がありそうじゃない?」

溝口結花。新田ほどではないが、小柄な1年生。
ちょっとナマイキそうな印象があり、先輩に対してもタメ口で話しているのを見かけたことがある。
ただ、騎手としての素質はあると聞いたことがある。

「それか、2年の高倉先輩とか。高倉先輩とは仲良かったよね。慕われてる後輩から競走馬として扱われるのって、屈辱的じゃない?好きでしょ、そういうの」
高倉小乃実。元気いっぱいで明るい2年生。
いつも屈託のない笑顔で、私にも懐いている子犬のような後輩。

「あとは、中谷センパイと同期の三井先輩とか。いいじゃん、ライバル対決。でも三井先輩は騎手で、中谷センパイは馬として、だけどね」
三井章乃。私と同じ3年生。
入部当時から何かとライバル視してくる彼女を、私は何度も返り討ちにしてきた。
そんな彼女に競走馬として扱われるのか。

「3人のうち誰がいいか、センパイに選ばせてあげる。でも、時々ペアを交換したりもしたいから、その人にも調教してもらうことになるかも。だから、そのつもりで選んでね」

アンケート結果

翌週の部室。
そこには、私と新田のほかに、もうふたり部員がいた。
ひとりは3年生の三井章乃。
先週の調教で、提示された3人のうちひとりを選ぶよう新田から言われていたのだ。

三井章乃。
たびたび私をライバル視してくる、同期の女の子。
背丈は私より低いが、勝気そうな顔つきをしている。
私自身、彼女に負けないよう意識してきた部分はある。
そんな彼女に、情けない姿をさらすことになる。
その時、どんな目で私を見るだろうか。

そしてもうひとり。
畑川麻友。
2年生で、私が初めて指導を担当することになった女の子だった。
物覚えもよく、明るく社交的な子で、2年生の中では中心的人物のひとりだった。
それと…
私への好意も、時々感じられる。

それを、ありがたさと、申し訳なさと入り混じった感情を持ちつつ、気付かないフリをしてきた。
そんな畑川が、どこか強張った表情を浮かべながら、目の前にいた。
新田が、馬のほうは心当たりがあると言っていたが、彼女のことなのだろうか。

何故ここに呼ばれたのか、いぶかしがるふたり。
新田に促され、私は説明を始める。

とある勝負をしたいが、私と新田だけではできないこと。
そこで、ふたりにも参加してもらいたいということ。
ただ勝負するだけではなく、もしふたりが勝ったらなんでも言うことを聞くということ。
参加するしないに関わらず、このことは他言無用にしてほしいこと。

ますます疑わしそうな顔の三井に、新田が答える。
「馬術部らしく、馬に乗って勝負するんですよ、三井先輩」
「勝負の内容がわからないと判断のしようもないだろうから、今から実演してみせる」

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