ポニーガールとご主人様 第二章(3)寝取られマゾ

部室の片隅で、ボンヤリと眺めていた。
取り巻きの2年生たちと一緒に、楽しそうに話している3年生。
変わらない日常。
変わらない風景。
でも。
それはあくまでも表面上のハナシだ。

彼女たちが敬愛しているその先輩は、自分たちよりも年下の少女に屈服し、弄ばれたのだ。
取り巻きの子たちは、思いもよらないだろう。
数日前、彼女がどれほどブザマで滑稽で、屈辱的な姿を晒していたのかを。
未だに脳裏に浮かぶ、三井の情けない姿。

どこか夢のようで、しかし現実に起こった出来事だった。
悔しそうに、恥ずかしそうに、後輩に許しを懇願するその惨めな姿は、彼女のスマホに記録されている。
あんな出来事などなかったかのように、先輩然として振舞っている三井。

部室に、誰かが入ってきた。

その姿を目に捕らえた三井。
一瞬、身を固くした三井は、しかし、何事もなかったかのように再び話し始めた。
入ってきた少女は、そのまま三井たちの座るテーブルまで近寄ってきた。
「三井先輩、こんにちは」
あくまで礼儀正しく。
後輩として、先輩にあいさつする新田。

「こんにちは」
三井もにこやかに返事をする。
その、あるかなきかのぎこちなさに、誰も気付いていない。
三井の取り巻きたちにも、あいさつをする新田。
からいらしい後輩を、2年生たちがかわいがり始める。
それを、こわばった笑みで眺める三井。

新田の本性を彼女たちは知らない。
知っているのは私と三井と畑川のみ。
サディストとしての彼女の声は、己のみじめな姿とともに、三井のスマホに記録されている。
三井は気が気ではないだろう。
自身のあんな姿が後輩たちに知られてしまったら。
敬意は一瞬で蔑みに変わってしまうだろう。


例の勝負から1週間後。
部室には、私と新田と畑川がいた。
私が新田に調教される日。
そして、畑川の罰ゲームを執行する日でもあった。

イスに腰かけた新田。
そしてそのすぐ横に、畑川も座っていた。
ただし新田のように、イスにではない。
床に、正座をさせられていたのだ。

楽しそうに笑みを浮かべる新田とは対象的に、緊張した様子の畑川。
そんなふたりの前で私は立っていた。
新田が、あごで私の後ろを示す。
私はうなずき、後ろを向いた。
ズボンに手をかける。
お尻を突き出しながらクネクネと左右にゆする。
そうしながら少しずつズボンを下へずらしていく。

調教のたびにさせられる、煽情的なダンス。
新田は、私にこれをさせるのが好きだった。
時には、何分も続けてさせられたこともあった。
「手、止めな」
半分ほどずり下げた辺りで、新田から指示が出る。
「お尻は動かし続けなさい。そうそう、そんな風にね」
いつもの調教。
でも、違うのは…

「今日はお客様がいるんだから、いつも以上に心を込めて踊りなよ。分かった?」
「は、はい…」
返事をしながらも、お尻は動かし続ける。
新田にみっちりと仕込まれた、新田を楽しませるためのダンス。
それを、畑川にも見られている。

畑川が新入生のころ、私は彼女に対して厳しく指導してきた。
乗馬の技術以前に、道具の扱い方、先輩後輩としての礼儀、言葉遣い。
時には叱責することもあったのだ。
そんな私が今、1年生に命令されながら、お尻を振っている。
イスに座った1年生の前で立たされ、彼女を楽しませるために。

礼節をわきまえないどころか、先輩に命令するという、あり得ない行為。
しかし私は、彼女を叱るどころか、命令に忠実に従っている。
畑川は今、どんな思いで私を見ているのだろうか。
どんな目で、私を…

「どうですか、畑川センパイ。中谷センバイのお尻ダンス。私が仕込んだんですよ?」

「し、仕込んだって、アンタねぇ…」
「ほらほら、見て?あんな恥ずかしい踊りを、あの中谷センパイがしてるんですよ?普段、あんなにすました顔してる中谷センパイが、ですよ?信じられます?」
新田の無遠慮な言葉が、私の羞恥心をあおる。

「あの耳も、見て?あんなに赤くなって。きっと恥ずかしくて仕方ないんですね。ゆでだこみたいな顔も、見てて楽しいんですよ。こっちを振り向かせましょうか?」
「い、いい!見たくない!先輩にあんなことさせて…」
「そうですか、残念です。畑川センパイなら楽しんでくれると思ったのに」

「楽しいわけないでしょ!」
「ちょっと中谷センパイ!畑川センパイがつまらなそうにしてるんですけど。ご主人様に恥をかかせる気ですか?」
「ち、ちょっと新田。アンタ…」
「中谷センパイには、キツーいおしおき、しないとですね。ほら紗枝、さっさとそれ脱ぎな」
新田の声色が変わった。

「はっ、はい…」
いそいそと、下着ごとズボンを脱ぎすてる。
「お尻、叩いてあげるから、テーブルに手つきな」
言われたとおり、目の前にあるテーブルに両手をつく。
そして、再びお尻を突き出すような姿勢になった。
新田がイスから立ち上がる気配がした。

「畑川センパイ見て?こいつのお尻、キレイでしょ?これからこのお尻が真っ赤っかになっちゃうから。よく見ててね」
「中谷先輩…」
新田が鞭を手に取った。
「勝負のこともあったから、最近は叩いてあげてなかったけど。今日は思う存分たたいてあげるから。覚悟しなよ?」

鞭でピタピタと、私のお尻に軽く触れる。
たったそれだけで。
私の全身が、細胞の一つひとつが、思い出す。
鞭で打たれたときの衝撃を。
情け容赦ない新田の責めを。
暴力的に支配されることの屈辱と、悦びを。
意思とは関係なく、私の体が新田に媚び始める。

どれだけ否定しても、消そうとしてもムダだった。
私の性癖。
私の願望。
どれだけ知識を得ても、技術を磨いても、立場が上だったとしても。
この子には、敵わない。
鞭の先端でお尻に触れられるだけで、簡単に屈服してしまう。

なぜ興奮してしまうのか。
そう思えば思うほど、悔しくて悔しくて、もっといじめてほしいと思ってしまう。
屈辱と怒りと羞恥心とが、私の頭の中をグチャグチャにかき乱す。
「もう息が荒くなってるよ?期待してんの?ヘンタイだね」
屈辱の炎が、私の下腹部をグツグツと煮えたぎらせていく。

「ねえ、まだ叩いてないんだけど。なんでそんなにサカッてんの?先輩のくせに、雑魚すぎでしょ」
軽蔑しきった新田の声。
それがまた、炎に薪をくべていく。
「それとも、畑川センパイに見られてコーフンしてるのかな?」
1年生に詰られて、発情している情けない姿。
畑川に、見られている。

「初めて三井センパイと畑川センパイの前で乗ってあげた時もさぁ。コーフンしてたでしょ」
ふーっ、ふーっ…
「人に見られると余計にコーフンしちゃうんだ?やっぱヘンタイじゃん。どうしようもないヘンタイだよ、お前」
ふーっ、ふーっ…

「ほら、畑川センパイ、見てください。こいつの太もも、濡れてるでしょ。こうして言葉でイジメてあげると、とってもよろこぶんですよ」
新田が、私の耳もとに顔を寄せてくる。
そして…

「お前がどんだけマゾなのか、畑川センパイに見てもらおうね」

ゾクゾクッとした。
「もっとも、とっくにバレてるけどね、アンタがマゾだってことは」
イヤイヤをする。
態度とは裏腹に、身も心も求めていた。
畑川の前で、新田にプライドを踏みにじられることを。

「ねえ、なんでこんなに濡らしてんの?鞭でちょっと触っただけだよね?それでこんなにビショビショにするって…どんだけゆるいの、アンタのココは?」
ツンツンと、ムチの先で『そこ』を軽くつつかれる。
「あうっ」
「いっちょまえに感じてんの?ヘンタイマゾのくせに。

お前みたいなどうしようもないヘンタイ、私が鍛え直してあげる。歯、食いしばりな」
ピタピタとお尻を叩いてから、鞭がふり上げられる。
そして…
ビシッ!
勢いよく、お尻に叩きつけられた。
目の前が一瞬、真っ白になる。
脳天までひびくような衝撃。

「ほら、お礼は?」
「あっ、ありがとうございます…」
「畑川センパイ。聞いてました?コイツ、叩かれてるのにお礼言うんですよ。笑えるでしょう?」
「それは、アンタが言わせてるからでしょうが」
「それにしても、残念でしたね、センパイ。センパイが勝てば、コイツを私から助け出すことができたのに。おかげで、まだお尻を叩かれて悦ぶヘンタイさんのままですよ」
「あ…アンタねぇ!」

「それとも…センパイ、本当は見たかったんじゃないですか?」
「な、なにを?」
「コイツが、私に調教されてるとこ」
「ち、調教って…」
「もう分かってるんでしょ、私とコイツとの関係?」

「そんな…でも、中谷先輩はアンタにムリヤリ…」
「ふうん。ここまで見せてるのにまだそんなこと言うんだ?」
「ち、違う、中谷先輩は…」
「畑川センパイがそう思いたいなら、どうぞご自由に。でも、今日の調教を最後まで見たあとでも同じことが言えるかな?」
鞭が再びお尻にあてられる。

「ほら、頑張りなよ?お前のこと信じてくれてる、けな気な畑川センパイのこと、裏切るんじゃないよ?」
鞭をふりかぶる音。
ピシッ!
目の奥がチカチカした。
「まだ2発だよ。ほら、頑張れ、頑張れ!」
ふたたび、鞭をふりかぶる新田。
ビシッ!
「3回!」
連続して叩かれる。
あまりの痛みに、思わずうめき声をあげる。

「ふふっ。いい声で鳴くでしょ、この子。どうです、気に入っていただけましたか、畑川センパイ?」
「よ、よしてよ。そんなわけない…」
「そうですか?それにしては、くい入るように見てましたけど?」
「みっ、見てない!」

「素直じゃないなぁ。ほら、見て、センパイ?この子のお尻。叩かれた所が赤くなってきてるでしょ?」
鞭の先端を、お尻をなでるようにうごかす新田。
「これがね?真っ赤っかになっちゃうの。白いところがなくなっちゃうくらいにね」
ピタッ、ピタッ…
鞭で、軽く触れるように。

もっかい鳴かせるから、よーく聞いててね。畑川センパイ?」
鞭がお尻から離れる。
そして…
ビシッ!
「5回!」
ビシッ!
「6回!」
ビシッ!
「7回!」
続けざまの衝撃。
足をバタバタさせながら、堪える。
「あはは!ほら、また鳴いた!」
「や、やめて、やめてよぉ…」
畑川の声。

「ホントにやめちゃっていいの?もっと聞きたいんでしょ?」
「そんなわけ、ないって…」
‎「ウソウソ。コーフンしてますよね、センパイ?」
「してないったら!」
‎「じゃあなんで、そんなにモジモジしてるんです?トイレをガマンしてるわけじゃないでしょう?」
「こ、これは、その…」

「太もも同士、スリスリこすり合わせて。潤んだ目で中谷センパイのこと見て。エッチな気分になっちゃったんでしょ?ちゃーんと分かってるんですよ?」
「い、いいかげんなこと言うな!」
「まだそんなこと言うんだ?じゃあ誓えますか?エッチな気分じゃないって」
「そ、それは…」

「どうせ、エッチなお汁で下着濡らしてるんでしょ?それとも、私、確かめてもいいですか?」
畑川が黙り込んだ。
「なんて、ごめんなさい。言いすぎました。中谷センパイが叩かれてるのを見てコーフンするような、ヘンタイじゃないですもんね、畑川センパイは?」
「う、うん…」

ふふっ。
新田が鼻で笑った。

「ほら、誰が休んでいいって言った?」
鞭がお尻に押しあてられた。
そのまま、グイッと押される。
「お尻は、ここ。姿勢、崩すなよ?いいって言うまで、そのままでいるの。次、姿勢崩したら、もっとキツいオシオキするから」
新田が、冷たく言い放つ。

畑川というギャラリーがいるからか。
あるいは、三井という強敵を屈服させたことで自信をつけたのか。
今日の新田は、いつも以上に横柄だった。
時に、ランダムに。
時に、リズミカルに。
鞭をふりおろす新田。

鞭で叩くフリをして、直前で止め。
反射的に体を震わせる私を見て、嘲笑う。
「ほら見て、畑川センバイ?センパイが負けちゃったせいで、大好きな中谷センパイのお尻、こんなに真っ赤になっちゃいましたよ?」
「なっ!なにを言って…」

「次の勝負では、もっと頑張ってくださいね?中谷センパイのお尻がこんなに腫れてるところ、もう見たくないでしょう?」
「ううぅ…」
「ねえ 畑川センパイ」
新田が、私から離れた
畑川のほうへ歩み寄っていく。
そして、何かを囁いた。
声が小さくて、内容は聞き取れなかった。

「なっ!?ふっ、ふざけるな!誰が、そんなこと!」
「大丈夫ですよ。ここには私と畑川センパイと、中谷センパイしかいません。それに、中谷センパイはむこうを向いてるから、畑川センパイのほうは見えません。私もふり向かないから、誰も畑川センパイが何をしてるかなんて、分かりません」

「だからって、そんなこと…」
「したくないんですか?」
「したいわけ、ないでしょうが!」
「そう、そんなに嫌なんだ」
「あ、あたり前でしょ!」
「じゃあ、次の再戦の条件はそれにしようかな」
「えっ?」
「だからー。もし次の勝負で負けたらぁ、ここで、してくださいね、オナニー」

「なっ、なんでそうなる!」
「また勝負するなら、条件があるのは当然でしょ?それに、センパイが嫌がることじゃなきゃ罰ゲームにならないじゃない。それとも尻尾巻いて逃げる?三井センバイ、せっかくあんな思いまでしたのに不戦敗なんてかわいそう…」
「わ、わかった。それでいいから…」

「了解です。それと、勝ちの条件は前回と同じでいいですか?」
「ああ…」
「次は救えるといいですね、中谷センパイのこと。もし負けちゃったら…大好きな先輩がお尻を叩かれてるところを見ながら、オナニーですよ?そんな屈辱的で情けないところ、イヤでしょう?」
畑川の返事はない。

「オナニーしてるところ、中谷センパイに見てもらう?それとも、私にバカにされながら見られるのがいいのかな?」
「お、お前っ!」
「どんな顔しながらオナニーするのかな、畑川センパイは?悔しそうな顔かな?それとも恥ずかしそうな顔かな?」
「い、いい加減に…」

「見られるのが恥ずかしいなら…ドアの向こうでさせてあげてもいいですよ?」
畑川が、声にならない声をあげた。
「ドアの隙間から覗きながら、オナニーするの。でもそれはそれで、ミジメじゃない?部屋に入ってくる度胸もない、いくじなしの負け犬オナニー。

救うと言っておきながら、そんな情けないことできませんよね?あれ、どうしたんですか、俯いちゃって?」
「アンタ、やっぱり…」
「え、なんですか?」
「な、何でもない…」
後ろを向いていても、分かった。
真っ赤になった、畑川の顔。
それを、面白そうに見下ろす新田。

もはや、ふたりの力関係は歴然としていた。
私という生餌を使って、畑川という新たな獲物を捕らえた新田。
一度捕まったが最後、がんじがらめにされ、二度と抜け出すことはできない。
新田というサディストによって、彼女もまた、性癖を拗らせていくのだ。

三井があんな思いをしてまで手に入れた再戦の権利。
しかし、勝敗はすでに明らかだった。
誇りを取り戻すどころか更に深みにはまっていく。
私や畑川だけでなく。
三井もそうなってしまうのか。
ぞんざいに扱われるほど体を昂らせてしまう人種。

むしろプライドが高い三井のことだ。
私たちよりも、もっともっと深く、低いところまで堕ちていってしまうかもしれない。
「ほら、言ったそばから姿勢崩すなよ、マゾ女。ホントにグズだねお前は。そんなんでよく3年生を名乗ってられるね。新入生からやり直す?」
「ごっ、ごめんなさい!」

「謝っても遅いんだって。それとも、ホントに新入生からやり直す?結花ちゃんたち、呼んでこようか?『溝口先輩、新田先輩、こんにちは。新入生の中谷紗枝です。昨日まで3年生だったけど、グズでドジなので、新入生としてやり直すことになりました』ほら、言ってみな」
「うぅぅ…」

「ほら、言えよマゾ女」
ビシッ!
勢いよく、鞭が叩きつけられる。
「早く言わないと、ホントに呼ぶよ?」
「わ、分かりましたから…呼ばないで…」
「こっち向いて、私の顔を見ながら言いな」
お尻をかばいながら、振り向く。

新田がイスに腰かけ、腕を組みながら私を見上げる。
その横で、泣きそうな目で私を見上げる畑川。
ふたりとも、私が指導をしてきた後輩だった。
そんなふたりの前で…
「溝口先輩、新田先輩、こんにちは。新入生の中谷紗枝です…」
屈辱的なセリフ。

「そうだ。撮ってあげるから、もっかい言いな」
スマホを取り出し、私に向ける。
「え、あの…」
「大丈夫、誰にも見せないから。ほら、早く早く!」
期待に満ちた目で、画面越しに私を見つめる新田。
「え、でも、その…」
「三井センパイみたいに、お尻をフリフリさせながら撮られたい?」

「わ、分かりました」
再び、屈辱極まりないセリフを言わされる。
今度は、新田のスマホに記録されながら。
「帰ったら、これ見て嗤ってあげるね。畑川センパイもこれ、欲しいでしょ?」
「あ、えと…」
潤んだ目で私を見つめながら、太ももを擦り合わせていた畑川。

「いいよ、あげる。このレースに付き合ってくれたお礼と、これからもよろしくの気持ち。受け取って?」
「わ、私は、その…」
「あはは!さっきまでだったら迷わず拒んでたのにね。ようやく素直になってきたじゃん、畑川センパイ。今日はそれ見てオナニーするんだぞ?」
「ち、ちが…私は…」

「でも、取扱いには気を付けなよ?そんな動画がもし馬術部内で出回りでもしたら…」
ゾッとした。
「その動画の内容が、現実になっちゃうかもよ?」
畑川が唾を飲み込んだ。
「中谷センパイが1年生を先輩呼びしてる姿なんて、見たくないでしょ?」

絶対に逆らえなくなるような、弱みを握られていく。
脳裏に浮かぶ、後輩たちの顔。
あんな動画、もし他の後輩に見られでもしたら…

『中谷センパイ、動画観ましたよ』
酷薄な笑みを浮かべた後輩たちに取り囲まれ。
『新入生からやり直すそうですね』

『後輩になるんだから、これからは私たちのこと先輩って呼んでくださいね?』
『私たちもセンパイのこと、紗枝って呼びますから。ほら、そうしないと他の部員に示しがつかないでしょ?』
『分かったら返事しな、紗枝?』
『ドジでグズな紗枝のこと、私たちが厳しく躾けてあげるね』

恥ずかしそうに返事をした私を、面白そうにケラケラ嗤う『元』後輩たち。
絶対に握られてはいけない、握られたくない弱み。
それを、気まぐれな小悪魔に握られてしまった。
そんな絶望的な状況に置かれたことにすら欲情してしまう。
「ホントは見られたいんでしょ?見られるの好きだもんね」

新田の声。
全てお見通しだった。
「ちがっ、違います…やめてください…」
「じゃあなんでそんなエッチな顔してんの?自分の顔、鏡で見てみる?」
「それは…」
「今なら許してあげるから、ホントのこと言いな」
「その…」
「見られちゃうかもって思うと、コーフンしちゃうんでしょ?」

「は、はい…」
「ふふっ。正直ないい子は、私好きだよ」
「中谷先輩…」
畑川の情けない声。
初めて、畑川にイラッとした。
私を救うとか言っておきながら、新田にあしらわれ発情しているマゾ女。
意気地のない負け犬。
見せつけてやる。

私は、新田に思いっきり媚びた。
新田が、私の頭をなでる。
私は、嬉しそうに甘えた声をあげた。
「中谷先輩…」
また。
私は、自分のことを棚に上げながら。
被虐心と嗜虐心との間で、たゆたっていた。

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