ポニーガールとご主人様 第二章(8)取返しのつかないこと

一見すると、いつもと変わらない日常。
でも、実際は…
三井と、彼女に付き従う取り巻きたち。
その中に、藤崎もいた。
その笑顔の奥に隠された、もうひとつの感情。
三井を見る目に、嗜虐的な色が、ときおり混じる。

そのことに、三井本人も気付いているのだろう。
あえて、藤崎の顔を見ないようにしているようでもあった。
取り巻きたちの、三井を見る目。
藤崎のそれは、明らかに違ってしまっていた。
日も落ちかけた頃。
後片付けをして、帰り始める部員たち。

「三井センパイ、この後少しお時間ありますか?」
藤崎の問いに、三井の顔がこわばる。
「乗馬のことで、教えていただきたいことがあって…」
「あくまで後輩として、下手な態度をとる藤崎。
しかし、有無を言わせないような強引さを滲ませていた。
「あ、あぁ。少しだけだぞ?」

羨ましがる、他の取り巻きたち。
ゴメンと、手をあわせながら、彼女たちに詫びる藤崎。
藤崎と共に、部室を出ていく三井。
どこか楽しそうな藤崎とは対照的に、どこか浮かない表情の三井。
ふたりのことが気になったが、ついていく訳にもいかなかった。

部室を出て、駅へと向かう。
向かう先は、畑川が暮らすアパート。

大学の最寄り駅から2つほど隣の駅で降りる。
閑静な住宅街を5分ほど歩いた先に、それはあった。
どこに住んでいるかは聞いていたが、実際に来るのは初めてだった。

オートロック式のアパート。
入口のパネルに、部屋番号を入力する。
畑川の声。
ドアが開き、中へと入る。
エレベータで目的の階へと進み、畑川の部屋の前まで来る。
インターホン。
再び畑川の声がした後、ドアが開いた。

畑川に導かれ、室内へと入っていく。
広くはないが、片付いていて、小ぎれいな部屋だった。

これまでは部室を使用していたが、今日からは、ここが調教の部屋となる。
ここなら時間帯を気にする必要もないし、何より他の部員に発覚するリスクもなかった。

既に到着していた新田が、ソファに腰をおろしていた。
家主であるはずの畑川は、新田の正面で正座をした。
私も、畑川のすぐ横で、同じように正座をした。

ご主人様として、私たちの上に君臨する新田。
下級生である彼女に対し、まるでドレイのようにふるまう、ふたりの上級生。

いや、今は学年など、何の関係もなかった。
飼い主と、ペット1号、2号。
それが、私たちの全てだった。
「2号、オナニーしたい?」
胸元のネックレスをつまみ、ゆらす新田。
「したいです…」
俯きつつ、上目遣いでカギを見つめる畑川。

貞操帯のカギ。
ゆらゆらと揺れるそれを、畑川の目が追う。
昨日3度目のレース。
あのレースで畑川が負けたら外す、という約束をしていたらしい。
レース中も、レース後も、そして今日も。
頭の中は、そのことで一杯だったに違いない。

「ま、時間はたっぷりあるし、後でさせてあげるね。それまでは、まだオアズケね」
畑川が、少し悲しそうな表情をする。
「ふふっ、そんな顔しないの。後でさせたげるって言ってんじゃん。それまでは、待て、だよ。上手に待てができるかな、2号ちゃんは?」
子どもをあやすような言い方。

「1号、立ちな」
「はっ、はい!」
突然呼ばれて、あわてて立ちあがる。
「オマエも、昨日は頑張ったじゃん」
「あ、ありがとうございます」
直立したまま、返事をする。

‎「まだ、しばらくは1号でいさせてあげる。でも、次に負けたら、降格させるかもよ?そうなりたくなかったら、次も勝ちな。分かった?」
‎「は、はいっ!」
「アンタには期待してるかんね」
めずらしく、新田は機嫌が良かった。

「それで、練習はちゃんとしてきたんでしょうね?」
「し、してきました…」
先日、新田から指摘を受けたこと。
お尻ダンスが、ワンパターン化してきている。
その改善をするよう、言いつけられていたのだ。
新田に楽しんでもらうにはどうしたらいいか。
あれから、必死に考えた。

自室で、鏡に向かって情けないポーズをとる、自分。
こんな姿、誰にも見せられないと思いながら。
新田にバカにされる、嗤われることを想像し、体が熱くなる。
でも、こんなのじゃ、きっとダメだ。
ガッカリさせてしまう。
2号に、降格させられてしまう。
ふと。
思い出す。
昔に見た動画。

年下らしき女の子の前で、滑稽に踊る女性。
全裸で、マヌケ面を晒しながら。
『いっちに、さんし』
右手を上に、左手を下に、90度に曲げて。
ガニ股気味に足を開きながら、左右にステップを踏む。
さすがに、ダメでしょ…
手が、震える。
そんなことしたら、終わる。

女の子に嗤われながら、滑稽なダンスを続ける女性。
その姿が、自分と重なる。
新田の前で、恥も外聞も捨てて踊る自分。
ダメ。
やっては、いけない。
やめなさい、紗枝。
やめて…
気持ちとは裏腹に、手が動く。
脚が、動く。
そして…
鏡に映った自分が、左右へとステップを始める。

「いっちに、さんし」
喉から絞り出すような、かすれた声。
「にぃにっ、さんし」
右に、左に揺れる。
こんなの、見せちゃダメ。
もっと別の。
あるはず、他にもっと適切なやつが…
必死に考える。
「さんにっ、さんし」
どうしても、思いつかない。
脳裏に浮かぶ、新田。
笑い声。

ただでさえ屈辱極まりない、恥知らずなダンス。
でも、あの動画には続きがあった。
もし、自分がアレをしたら。
終る。
確実に、私の中の何かが、終わる。

そして、今日。
ソファでふんぞり返る新田の前で。
私は、服を脱ぎ始めた。
おや、という表情をする新田。
下着姿になる。

ブラを取り。
ショーツを脱ぐ。
靴下は脱がず、それがかえってミジメさを助長させる。
じっと私を見つめる新田。
私の頭の中で、声が聞こえる。
私を必死に止める、もうひとりの私。
聞こえないフリをする。
もう、止められない。
止められるような状況ではない。

体の奥底からこみ上げてくる、劣情。
熱く、粘性のある液体が、全身を巡る。
体の神経が鋭敏になっていく。
その一方で思考は鈍っていく。
右手を上に。
左手を下に。
90度に肘を曲げる。
左右の足を、ガニ股に開く。
ふーっと、大きく息をしてから。
左右へと、ステップを踏み始めた。

「いっちに、さんし」
掛け声に合わせて。
「にいにっ、さんし」
左右へと揺れる。

一瞬、呆気にとられた新田。
そして…
「ぷっ…ふははっ…ちょ、ちょっと待っ…あはっ、あはは!」
お腹を押さえて笑う新田。
「あーあ、マジで面白い」

笑ってくれた。
いや、嗤われているのか。
「女として終わりでしょ。ってか、人としても…あはは!あー、お腹痛い…」
やった。
やってしまった。
後悔とともにこみ上げる恥辱。
どこか現実味がない。
フワフワとした、地に足がついていないような感覚。
「そうだ!スマホで撮ったげるね」

スマホを取り出し、こちらに向けて…

ピロンッ

撮られている。
私のブザマな姿。
誰にも見せられない。
見せちゃいけない姿。
それが、撮られている。
永久に、残ってしまう。
女を、人としての尊厳を捨てた、私の姿が。
ひとしきり笑った新田。

「あー、面白い。でも、それで終わり?もっとないの?もっと見たいなー」
私を煽る。
ただ、私をからかうために言った言葉だったのかもしれない。
でも…
あるのだ、続きが。
絶対に。
絶対に、やってはいけない、続きが。
「あっ、あり、ありますっ」
呂律の回らない舌で、応える。

「えっ、ホントに!見たい!見せて見せて!」
前のめりになり、無邪気にせがむ少女。
「わっ、わか、わかり、ましたっ」
強烈な羞恥心と後悔と、興奮とで。
正常な判断はできなくなっていた。
バッグから、財布を取り出す。
そこから、とあるものを取り出す。
1枚のカード。
学生証だった。

あの動画の女性が、したこと。
目の前に座る少女に煽られて、1枚のカードを取り出し…
顔の真横に掲げながら、再び滑稽なダンスを踊り始めた。
『み、見てっ、見てくださいっ!わた、わ、わたしの、めん、めんきょっ、めんきょしょっ!』
やはり、呂律の回らない舌で。

モザイクが掛かっていて、はっきりとは見えなかったが。
彼女の免許証らしかった。
『とら、撮れちゃってるっ、わた、私の、こじん、こじんじょうほっ…』
『だ、ダメなのに、ダメなのにっ!こんなっ、取返しがつかないのにっ!』
それでも、左右のステップを止めない女性。

『ダメッ!ダメダメダメッ!撮っちゃ、ダメッ!撮らないでっ!お願いだから、撮らないでっ、くださいっ!』
『撮らないで欲しいんだ?』
『撮らないでっ!撮らないでっ!』
『だったら、やめればいいじゃん』
『そっ、それはっ!だってっ!』

『だって何?好きでやってんでしょ?強制してないよ、アタシ?』
『そ、そのっ…それはっ…』
脳裏に浮かぶ、ふたりの会話。

免許証は持っていないので、代わりに学生証を掲げる。
右手で学生証を持ちながら、例のダンスを踊る。
「うそっ!嘘でしょ!?学生証だよ、ソレ!分かってんの?」

目を見開く新田。
「わ、分かっ、分かって、ますっ」
あの女性と同じように、呂律の回らない舌で。
取り返しのつかないことを、している。
それが分かっていながら、止められない。
撮らないで欲しいと願いながら。
それでも、止められない。

「いやぁ、ビックリ!そこまでするとは思ってなかったよ!すごいポテンシャル持ってんじゃん!」
「あ、あり、ありがとっ、ござい、ますっ…」
「あはは!ちゃんと言えてないけど、大丈夫?舌、噛まないでね?あはは!」

笑いながら、スマホを向け続ける新田。
「ほら、学生証もキレイに撮ってあげる」
スマホを近づけて、学生証と私の顔を交互に撮る。
「学生証の顔写真はすました顔してるのに、本人はマヌケな顔してるの、ホント受けるんだけど!あは、あはは!」
心の底から、可笑しくてしかたないのだろう。

「自分からそんなことしちゃうなんて。これでもう、一生私に逆らえなくなっちゃったね。ほら、顔だけじゃなくて、大学名はおろか、本名までパッチリ映ってる。こんなの、もう絶対言い逃れできないやつじゃん」
人としての、女としての尊厳。
それを、新田に差し出す。

取り返しのつかないことをしている、という現実。
分かっている。
いや、本当に分かっているのか。
やはり、どこか現実味がない。
頭がぼんやりする。
曖昧になった先にある、確かなもの。
恐らく、それが現実というやつか。
曖昧なまま、目を背ける。

「デジタルタトゥーって知ってる?こんなの出回ったら、どうすんのよ?」
そう言いながら、楽しそうな新田。
‎「むしろ、見て欲しいのかな?1年のグループチャットで晒してあげよっか?」
「や、やめ、やめて、くださいっ!」

「またまた、そんなこと言ってぇ。晒して欲しいから、そうしてるんでしょ?ちゃんと分かってるよ?」
やばい!
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!
思っても止められない。
「ほら、言いなよ。晒してくださいって」
「そ、それだけは…」
「晒して欲しいんでしょ?」

「ち、ちがっ、ちがっ…」
「見られながら、バカにされたいんでしょ?1年生に?」
「ちがうちがうちがうちがうちがうちがう…」
「中谷センパイって、こんなヘンタイだったんだぁ!サイテー」
「ちがうちがうちがうちがうちがうちがう!」

‎「3年生のクセに、1年生にバカにされたいなんて、ホント終わってるね。そんなにバカにされたいならさ、オネダリしなよ。ほら」
「そっ、そんなぁ…」
「ほら、スマホに向かってさ。早く」
「や、やばいっ、やばいって、ホントにっ!」

「中谷紗枝は、3年生をやめて、新入生からやり直します。先輩である1年生の皆さんに、楽しんでもらえるよう、オモチャとして、いじめてください。ほら、言ってみ?」
「や、やだやだやだやだ!」
「言えよ。撮ってやるから。見て欲しいんだろ?見て、みんなで笑ってやるから、ほら、言え」

「やばいやばいやばいやばいやばい…」
言ったら終わる。
見られたら、終わる。
止まれ!
私の口、勝手に動くな!
「さ、3年生をやめて…」
動くなったら!
「新入生から…やり直します…」
あぁ…!
ダメなのに…!
私の顔も、学生証も写っているのに…!
言っちゃダメなのに…!

「先輩である…1年生のみなさんに…楽しんでもらえるよう…お…オモチャとして…いっ、いじめて、ください…」

「あーあ、言っちゃったね」
あ、あぁ…

‎「コーフンし過ぎて、頭のブレーキがこわれちゃったのかな?でも、言ったのは自分だからね。そんな蕩けた顔しちゃって。どう、とりかえしのつかないことしちゃった気分は?」
「やっ、やばやばやばっ…やばいって!けっ、けして!けしてくださいっ、おね、おねがいっ!」

「ぷっ!今更、何言ってんの?」
新田が爆笑する。
「マジでサイコーなんだけど。なに、消してほしいの?」
「おっ、おっ、おっ、おね、おねがい、しますっ」
「おっ、おっ、おっ、って!なに、その鳴き声みたいな声。じゃあ、そのダンス、止めたら?」

「や、止めたら、けして…けして、くれます、かっ…」
「消すわけないじゃん!泣いて懇願しても、消してあげない」
「そっ、そんなぁ!」
「マゾって、みじめだね。やばいって分かってても、止められないんだ?自分が何してるか、ホントに分かってる?

やばいやばいって言いながら、学生証持って変なダンス踊って。サイコーに情けなくて、ブザマだったよ?あとで他の1年生にも見てもらおうね?」
「それだけは…やめて…」
「もう、1年生の前で偉そうにできないね。だって、1年生のほうがオマエより偉いんだもん。オマエは3年生なのにね」

「うぅ…」
「それどころか、来年入ってくる新入生と一緒に、研修受けさせてあげようか?これまでは研修する側だったのにね?」
「や、やだやだ、そんなのっ!」
「新入生のみんな、不思議に思うだろうね。4年生なのに、自分たちと一緒に研修受けてる、オマエのこと。

それに、後輩に対して『先輩』呼びしてるなんてさ」
「なんでも、なんでもしますからっ、おねがい、おねがい、しますっ」
「軽々しく、そんなこと言わない方がいいよ?とんでもないことさせちゃうけど、いいの?」
新田が、イジワルに笑う。

「ま、いいわ。今日はこの辺にしといてあげる。私はすごく楽しかったんだけど、2号には目の毒だったみたい」
畑川。
泣きそうな顔をしながら、太ももをこすりあわせている。
「ほら、もう我慢の限界ってカンジ」
顔を上気させ、切なそうに息をしている。

「あ、そうだ!ねえ1号、私の前であお向けになりな」
「は、はい」
私はダンスを止めて、言われた通りにする。
「頭をこっちに向けてね。そうそう…」
ソファに座る新田が私を見下ろす。-
「私がいいって言うまで、そのままだかんね?」
言いながら、足を上げる。
新田の足の裏。

顔に近づいてくる。
「うっ」
私の顔を覆うように、新田が足を乗せる。
「このソファ、私にはちょっと座面が高くてね。でも、ちょうどいい足置きが見つかったわ」
新田の靴下から伝わる、少し湿った感触。
「今日は練習のない日だったけど、今度は練習後にしてあげるね」

そう言いながら、足の裏を私の顔に擦りつける。
頭を、顔を踏まれたことなど、生まれてきてから一度もなかった。
跨られたり、お尻を叩かれるのとは全く違う感情。
プライドを、尊厳を踏みつけられている。
そんな感情。

「汗でムレた私の足のニオイで、中谷センパイの頭の中、一杯にしてあげます。どうする、クセになっちゃうかもよ?」
私をからかいつつ、足を動かし続けてる新田。
足で口も鼻も覆われ、苦しそうにする私を見て、楽しそうにはしゃぐ。

「ねぇ、2号」
「は、はいっ」
「コイツのどんな姿を見ながら、オナニーしたいの?」
「えっ…」
「せっかくオナニーさせたげるんだからさ。いっぱいガマンしたんでしょ?だったらぁ…気持ちよーく、オナニーしたいんじゃない?」
「そっ、それは…」

「こうして、顔を踏まれてるのがいい?それとも、さっきみたいなマヌケなダンス、させようか?」
「え、えぇ、と…」
「そんなんじゃ、もう興奮できない?じゃあさ、さっきスマホで撮ったコイツの動画、グループチャットに流してみよっか」
「ち、ちょっ…むぐっ…」

言いかけた私の口を、新田が足で抑えつける。
「さっきさぁ、すっごく興奮してたじゃん。こいつが動画撮られてる時とか、新入生からやり直すって宣言してる時とか。あれ、してなかった?私の勘違い?」
「それは、その…」
「ハッキリ言いなよ、グズ。オナニーさせたげないよ?」

「は、す、すみません!こっ…興奮、してました」
「でしょ?」
「は、はい…」
「さっきの動画、編集しないでそのまま流したら、みんな、どんな反応すると思う?顔も声も、学生証もバッチリ写ってたし」
「そ、それは…みんな、ビックリすると思います…」

「だよね。それか、1年生を集めて、本人の前で動画観てもらう?みんなの顔が、尊敬から軽蔑に変わっていくところを見るのもさ、楽しそうじゃない?直前までは3年生としてエラそうにさせてさ、動画を観せた後に、告白させるの。実はマゾの変態でしたって」

どうしてそんな恐ろしいことを思いつくのか。

「オマエもさ、とんでもない変態を好きになっちゃったねぇ。さっきの見てたでしょ?やばいやばい言いながら、学生証持ってさ。そのあげく、あんなこと言ってさ。ほら、見てよコイツ。顔踏まれて、こんなに嬉しそうにして。1号、アンタのご主人様になったのが私でよかったね。そうじゃなかったら、お前みたいなしょうもない変態、誰も相手にしてくれないよ?」

言いながら、足の裏を私の頭に擦りつけてくる。
「ほら2号、立ちな。私の前で服を脱ぐの」
「は、はい」
畑川の立ち上がる気配。
衣擦れの音。

「ブラも取るの。当然でしょ?」
「すっ、すみません…」
「そうそう。おてては頭の上ね。鍵、外してあげるから、腰をこっちに突き出しな」
「は、はい、ありがとうございます…」
金属同士が触れあう音。
そして…
「はい、外れた!ほら、オナ猿、好きなだけオナニーしな」

声にならない声で返事をする畑川。
「さっき撮ったコイツの動画、観せてあげる」
しばらくして。
『ほら、学生証もキレイに撮ってあげる』
新田の声。
『学生証の顔写真はすました顔してるのに、本人はマヌケな顔してるの、ホント受けるんだけど!あは、あはは!』
先ほどの映像。

こうして改めて聞くと、本当に撮られてしまったのだといることを痛感させられる。
「キレイに撮れてたみたいだね。学生証の写真も名前もハッキリ映ってる。よかったね、1号。これで誰が見ても、コイツがオマエだって分かっちゃうよ。1年生に観てもらうのが楽しみだね」
「だっ、ダメダメダメ…ダメです…ヤバいって…そんなこと…むぐっ」
「ほら、足置きは喋るな!」
再び、足で口を塞がれる。

「今度のレースからはさ、学生証も使おうよ。首からぶら下げて、この大学の学生だって分かるように。でも安心して?アンタはまだ正体がバレてないから、顔写真や名前は隠させてあげる」

想像する。
私の首にかかった、1枚のカード。
四つんばいの私を取り囲む、1年生。
笑い声。
‎「あとは、そうだなぁ…学生証の発行日だけ、隠さないとか。そうすればお前が何年生なのか、分かるでしょ?」

1年生のひとりが、ソレに気付き…
『えっ、3年生なの?』
黄色い声をあげる後輩たち。
『3年生なのに、そんなカッコしちゃうんだ?』
『プライドとか、ないんですかぁ?』
『もしかして、バカにされて興奮してます?ヘンタイだね』
『ほらセンパイ、可愛がってあげるから、こっちに来な』

「また想像しちゃったの?ホントに分かりやすいね、オマエ」
楽しそうに笑う新田。
その近くで、畑川が切ない声をあげている。
スマホから流れる音声。

『3年生のクセに、1年生にバカにされたいなんて、ホント終わってるね。そんなにバカにされたいならさ、オネダリしなよ。ほら』
『中谷紗枝は、3年生をやめて、新入生からやり直します。先輩である1年生の皆さんに、楽しんでもらえるよう、オモチャとして、いじめてください。ほら、言ってみ?』
『あーあ、言っちゃったね』
『やっ、やばやばやばっ…やばいって!けっ、けして!けしてくださいっ、おね、おねがいっ!』

畑川の声が、艶を増していく。
水の音。

「2号、ストップ!」

突然の、新田の声。
「えっ…で、でも、まだ…」
「イったら、もう2度とオナニーさせないよ?」
「そんっ、そんなぁっ、だって…」
「はい、口ごたえしたから、1か月はオアズケね」
「まっ、待って、だって、でも、こんなの…」

「2か月に延ばしてやろうか?」
「わっ、分かりました、止めますぅ!」
「ほら、貞操帯も付けな?」
「えっ…えっ?本当に?」
「ホントだよ。なに、逆らうの?」
「い、いえ…でも、私、イってない…です…」
「オナニーさせたげるって言ったけど、イかせてあげるとは言ってないでしょ?」

「そ、それは…」
「ほらほら。いい子だから泣いてないでパンツ履きましょうね」
「う、うぅ…」
再び、金属のこすれる音。
カチッ…
カチッ…
「はい、オッケー!なに、まだ満足できないの?しょうがないなぁ。じゃあ、もっかい動画観せてあげる」
「えっ?」
「満足できてないんでしょ?」

カツッ…
カツッ…

何かが軽くぶつかる音。
「あうっ…」
「ほらほら、観たいんでしょ?いいよ、好きなだけ観な?」
カツッ…
カツッ…
「うっ、は、はい…」
スマホから、再び音声が流れる。

『これでもう、一生私に逆らえなくなっちゃったね。ほら、顔だけじゃなくて、大学名はおろか、本名までバッチリ映ってる』
『デジタルタトゥーって知ってる?こんなの出回ったら、どうすんのよ?』
『1年のグループチャットで晒してあげよっか?』
『ほら、言いなよ。晒してくださいって』

しばらくして。
畑川がうなり声をあげた。
「わ、ビックリした」
ガチャガチャと音がした。
「そんなことしたって外れないよ。でも、もし私に触れでもしたら…」
ガチャガチャという音が、やんだ。
そして…
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ…
床に、何かを打ちつける音。

「ちょっ、アハハ!何やってるんです、畑川センパイ?ア、アハハ!」
新田がケタケタと笑う。
「あー、面白…撮りたいけど、スマホが…あ、そうだ!」
新田の足が、私の顔からどけられた。
「1号、オマエのスマホで撮ってあげな」
「え、は、はい」
起き上がる。

畑川。
スマホを床に置き、うつぶせになっている。
おたけびのような声をあげながら、腰を床に打ちつけていた。
変わり果てた、後輩の姿。
「ほら、はやく撮りなよ」
「は、 はいっ…」
慌てて、スマホを取り出す。

「次のレースの条件、これにしよっかな。畑川センパイ、次負けたら藤崎先輩に今の姿見せますよ?いいですか?」
涙でグチャグチャの顔。
聞こえているのか、いないのか。
ケモノのような、うなり声をあげながら。
スマホを睨み、腰を床に叩き続けるのだった。

コメント

  1. ファンボ より:

    Twitter楽しませてもらってます!!
    『とある女子大の秘密サークル』の設定が好きで、調教シーンや調教後がなくて残念でしたが、この作品で部活の後輩に服従する先輩達が見れてメチャクチャ嬉しいです!

    章乃が藤崎に屈服してしまったことをみんなに必死に隠そうとしてる姿が滑稽でいいですね!
    1週間の調教内容とても楽しみです!
    最初は先輩ズラして反抗してたんだろに・・・

    • slowdy より:

      >ファンボさん
      ありがとうございます!
      『秘密サークル』のほう、お待たせしてしまい申し訳ないです💦
      秘密サークルでもこういったシチュを描く予定ですが、どちらかというと信頼関係だったり、シチュのバリエーションが多い感じです。
      その分、こっちはハードな内容にできたらと思っています。

      プライドの高かった三井がただ堕ちてしまうのではなく、M転する過程だったり、心理描写などもなるべくしっかりと描写できたらと思っています。
      ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです。

  2. 佐々木 より:

    自分のサド性癖にドストライクです。続きが楽しみです。畑中ちゃん無様かわいいですね。

    • 匿名 より:

      畑川ちゃん!名前間違え失礼しました。

    • slowdy より:

      >佐々木さん
      ありがとうございます!
      どちらかというとM視点の読者の方が多いと思っていたので、S視点の方のご意見は新鮮に感じました。
      中谷や三井もですが、畑川も今後さらに無様な目にあっていく予定ですので、ぜひ愛でていただけたら嬉しいです。

  3. テツ より:

    いつも楽しませてもらってます!
    三井が藤崎に調教されるといくところが楽しみです!

    次のアップ楽しみにしてます!
    早くおねがいします。

    • slowdy より:

      >テツさん
      大変お待たせしました!本日、アップいたしました。
      三井が調教されていく様を、楽しんでいただけたら嬉しいです。