マナドリンカー ~尊厳を搾り取る者~ 第3話

前回のあらすじ
『儀式』のあと、屋敷へ戻ってきたマルレート。
地下室での出来事を思い出し、正体のつかめない不快感に襲われ、いら立つ。
そして再び地下室で行われる『儀式』。
敬虔な信仰者である神官の、もう一つの貌。
秘めた性癖は暴かれ、魔族たちの前で無様な姿を晒す。
サキュバスにアナルを貫かれ、言葉で詰られながら、マナを、尊厳を搾り取られていく。
『儀式』後、マルレートは魔王の側近に声を掛けられる。
記録の魔石を譲渡するという申し出に、マルレートは頭を下げるのだった。

主な登場人物
マルレート・フォン・シュルツ
 吸血族の当主。
 更なる強さを得るため、『儀式』に立ち会い、マナの秘密を知ろうとする。
 その一方で、強さを失うことへの恐怖も抱えている。

ヴァレオン
 魔王の側近で、竜人族の上級魔族。
 もともと竜人族は魔王と敵対していたが、現在はその軍門に下っている。
 高い戦闘能力を有するだけでなく、魔石の扱いにも長ける。

サキュバス
 マナを搾り取るという特殊能力を持つ、下級魔族。
 高い戦闘能力を持たない彼女たちは、代わりに相手を魅了し、篭絡するという特殊な能力を持つ。
 
戦士
 己の背丈ほどもある大きな剣を軽々と振るい、魔族たちを切り伏せる、女傑。
 パーティー内で最年長の彼女は、仲間たちから慕われ、頼りにされている。 


「マルレート様、ヴァレオン様の使いの方がいらっしゃいました」
「分かった、すぐに行くと伝えろ」
竜人族の使者が待つ客室へと向かう。
マルレートの姿に気づいた使者が立ち上がる。
「マルレート様に、我が主からの品を、お届けにあがりました」
重厚感のある、木製の宝石箱。
それと、2冊の書籍。
「ありがたく、頂戴しよう」
使者を丁重に労い、見送る。
自室へ戻ったマルレートは、さっそく竜人族からのプレゼントに手を伸ばす。
木箱の中には、球体の、赤い半透明の石が納められていた。
「記録の魔石…」
机に座り、書籍に目を通す。

魔石は、魔族にはなじみのないものだった。
魔力の低い人間が、それを補うために研究、開発を始めたもので、もともと魔力の高い魔族にとっては必要性を感じないものだったのだ。
魔石の研究が進むにつれ、人間はより高度な魔法を扱えるようになっていく。
勇者たちが使用していた武具にも、それらは活用されている。
魔族にとって脅威となりつつある魔石。
それでも、プライドの高さか、あるいは驕りか、魔石を使おうとする魔族はいなかった。
竜人族をのぞいては。
魔王に下る前から、竜人族は魔石と密接に関わってきた。
魔石は、その種類や産地により、質や能力が大きく異なる。
それらを理解、識別し、能力を最大限に引き出す。
高い知力と魔力が、それを可能にしたのだ。
人間や竜人族が独自に開発してきたそれは、他の魔法とは技術体系がまったく異なる。
魔族の中で魔石を扱う者が極めて少ないのは、扱えるようになるまでのハードルの高さによるところも大きかった。
勇者たちのマナを奪い取る『儀式』。
その指揮を竜人族が任されているのは、魔石を扱えるからというのも、理由の一つなのだろうか。

「だめだ、まったく分からない…」
書籍を閉じ、机に置く。
視覚情報を魔力に変換する。
変換した魔力を、手のひらを通して魔石に『記録』していく。
『記録』した魔力を魔石から取り出し、視覚情報に再変換する。
「ただイメージして、魔力を込めればいいというわけではないのだな」
聞きなれない用語が並んでいる書籍。
仮に、書かれている内容を理解できたとしても、それを実践できるかはまた別の話だった。
もう一方の書籍。
記録の魔石に関する解説書だった。
魔石を扱えるようになるには、魔石それぞれが持つ特性も、理解しなければならない。

なぜ私はこんなことをしているのだろうか。
地下室での、竜人族との会話。
『私にも、扱えるでしょうか?』
なぜ、あんなことを口走ったのか。
ただ、自然と口をついて出たのだ。
「まあ、時間はたっぷりとある。焦ることはない」
それに、いつか役に立つ日が来るかもしれない。


再び、『儀式』の日がやってきた。
魔法使い、神官と来たら、次はおそらく戦士だろう。
魔王城の地下室に足を踏み入れる。
暗く、重苦しい空気の中、準備は着々と進んでいた。
竜人族に会釈をするマルレート。
マルレートに気づいた竜人族が、ニヤッと笑った。
「ヴァレオン殿、先日は、大変貴重な魔石を頂戴し…」
「いい、いい。気にするな」
言いかけたマルレートの前で手を振り、さえぎる。
「それより、どうだ。少しは扱えるようになったか?」
「それが、なかなかうまくいきません。いただいた本を何度も読み返してはいるのですが…」
「そうか。まあ、さすがに卿とはいえ、いきなり扱うのは難しいかもしれんな」
「はぁ…」
「我々竜人族は、生まれた時から魔石が身近にある。理屈ではなく、感覚でその扱い方を理解しているのだ。馴染みがないものが、わずか数日で扱えるようになるほうが、無理があるかもしれん」
「そう、ですか。ただ、なんとなく、掴みかけているような気がするのです。コツのような…」
「ほう」
「焦らず、気長に取り組んでみます」
「そうしてくれると、私も嬉しいよ」
気難しい印象のある、魔王の側近。
魔族の中でも傑出した能力を持つが、他の魔族に対し、壁を作っているように感じる。
だが、なぜかマルレートに対しては、友好的な態度を示してくる。
「奴が生きていれば、どんなに喜んだだろうな…」
竜人族のつぶやきに、マルレートが声を掛けようとした時だった。
ドアがノックされる。
ヴァレオンの返答。
重苦しい音を立てて、扉が開いていく。

サキュバスに連れられて入ってきたのは、やはり戦士だった。
鍛え抜かれ、ひきしまった肉体。
重量のある武具を軽々と扱うほどの力。
その両腕は、今は手かせによって拘束されている。
身体に刻まれた無数の傷痕が、旅の過酷さを思わせる。
これまで、数多くの魔族を切り伏せてきた彼女。
そんな彼女の、戦士としての終わりの時が、やってきた。
先日の2人のように、彼女もまたマナを吐き出し、搾り取られていくのだ。

屈強な肉体と、それに見合う凛々しい表情。
姉後肌というのだろうか。
勇者一行の中でも、頼られる存在だったようだ。
実際、彼女は勇者の剣術の師でもある。
やや茶色がかった、ベリーショートの髪。
最前列で戦う戦士としては、髪が長いとジャマになってしまうのかもしれない。
ただ、整った顔立ちの彼女に、とても似合っていた。
美しき女戦士が、このあとどのような姿を晒すのか。

サキュバスが取り出したのは、一枚の布切れだった。
それを、戦士の首元にくくりつける。
赤子がつける、よだれ掛けだった。
まだ若いとはいえ、パーティーの中では年長の戦士。
屈強な彼女がよだれ掛けをつけた姿は、どこか滑稽ですらあった。
戦士の表情がひきつる。
あのよだれ掛けも、マジックアイテムの一種なのだろうか。
それとも、彼女の『性癖』に関係するものか…
サキュバスはかまわず、新たなアイテムを取り出す。
『おしめ』だ。
それを、彼女にはかせるサキュバス。
鍛え抜かれた肉体と、相反するものを身につけさせられた女戦士。
プライドを傷つけられたのか、腕に思い切り力を入れる。
手かせがメリメリと音を立て始める。
どんな怪力であっても容易く引きちぎることはできない、頑丈な手かせ。
まして、マジックアイテムによって、力を制限されているのだ。
それなのに、手かせは今にも壊れてしまいそうだった。
慌てて近づいた下級魔族に、戦士が手かせごと、腕を叩きつける。
下級魔族の身体は吹き飛び、部屋の壁に叩きつけられ…
そのまま、動かなくなる。
一瞬の静寂。
今度は、数人がかりで戦士を押さえつける。
さすがの怪力だった。
下級魔族の一人が、戦士の耳元で暗示をかける。
暴れていた戦士が、徐々におとなしくなっていく。
その隙をついて、戦士のくちびるを、サキュバスが己の口でふさぐ。
口に侵入してくるサキュバスの唾液。
口をがっちりと塞がれてしまい、吐き出すことができない。
戦士ののどが、かすかに動いた。
次々と送り込まれてくる、サキュバス特製の媚薬。
欲情の『スイッチ』が、強制的にオンにされる。
耐えがたい、マグマのようなドロドロの性欲が湧き上がってくる。
思考力が削り取られていく。
戦士の目が、トロンとしてくる。
戦士の口元に、己の胸を寄せるサキュバス。
いつのまに持ったのか、左手のガラガラを、戦士をあやすように鳴らす。
その豊満な乳房を、じっとみつめる戦士。
「ペトラちゃん?ママのおっぱい、吸ってもいいのよ?」
乳房の先端にある突起に、目をやり。
「一生懸命がんばったペトラちゃんに、ママがごほうびあげる。いっぱい、いっぱい、ママに甘えてね、ペトラちゃん」
戦士の口が、少しずつサキュバスの乳首に吸い寄せられていく。
そして、しゃぶりついた。
まるで赤子のように、サキュバスの乳首を吸う戦士。
あやすように戦士の頭をなでながら、妖しく笑みを浮かべるサキュバス。

戦士のヒミツ。
街に泊まった際、勇者たちの目を盗んでは、夜な夜な出歩いていた彼女。
男装した彼女の行き先は、娼館だった。
部屋で二人きりになった際、変装を解く戦士。
正体に気づき、驚く娼婦に、彼女は多めのチップを渡す。
彼女にしか扱えない、重い武具。
頼りがいのある、姉御としての仮面。
それらを脱ぎ、放り出して…
勇者一行のクールビューティーは、自分よりもはるかに小柄な女性の前で、赤子に戻る。

娼婦の胸を吸い、持参したよだれ掛けをベトベトに汚し。
赤ちゃん言葉であやされながら、ママに甘える戦士。
ママに見守られながら、おしめの中に放尿する彼女は、赤子そのものだった。
おしめを外され、お尻をぬぐってもらう戦士。
羞恥心で耳まで赤くした彼女は、そのあとも一晩中、ママに甘やかしてもらうのだ。


戦士としての、パーティーの年長者としてのプレッシャー。
日に日に強さを増していく魔族を相手に、勇者たちの剣として、盾として戦わねばならない。
神官や魔法使いは、魔法抵抗力こそ高いものの、直接攻撃には弱い。
彼女たちを守りながら、強敵を相手に死闘を繰り広げる。
それは、非常に神経を消耗することだった。
しかし、プライドも責任感も強い彼女は、パーティー内では弱音を見せられなかった。
酒を飲まない仲間たちを宿に残し、酒場で独り、不安を紛らわせる彼女。
ある日、近くのテーブルに座った客同士の会話が聞こえてきた。
その街にある、娼館についてだった。
『誰々がかわいい』
『お気に入りのあの子と、こんなことをした』
自分が命を懸けて闘っているというのに、こいつらは、こんなことをしている。
これまでストイックに生きてきた戦士。
性に対して疎く、奥手な彼女にとっては、嫌悪感を覚えるような内容だった。
翌日、街を出る勇者一行。
しかし、彼女の頭の中で、ある言葉が頭から離れなかった。
昨日、酔客の一人が話していたこと。
他の客にからかわれつつ、照れながら話していた内容。
旅が過酷になるにつれ、その言葉はより鮮やかに、魅惑的に光を放っていく。

次の街に到着した一行。
宿に仲間を残し、消耗したアイテムの買い出しへと出かける彼女。
魔法の使えない彼女にとって、回復アイテムは必需品だった。
見つけたのは、旅のアイテムだけでなく、日用雑貨も置いてある、よろずやだった。
子育て中の客も、よく訪れるのだろう。
そこで、彼女は見つけてしまった。

おしゃぶり。
哺乳瓶。
よだれ掛け。
ガラガラ。
おしめ。

彼女の中で、何かのスイッチが入った。
そんな彼女に、店主が声をかける。
子育て中の母親だと思われたのだろう。
否定しようとした彼女の口から出た言葉は、彼女自身まったく意図しないものだった。
「ああ、娘の育児用品を買いに…」
仲間は今、宿屋にいる。
店主も、私のことは知らないようだ。
戦士自身も驚くほど、口から嘘がスラスラと出てくる。
最近引っ越してきたばかりの、新米ママになりきる彼女。
比較的大きな街ということもあり、そんな人も珍しくはないのだろう。
店主は、まったく疑問に思わなかったらしい。
店主のススメで、一通りのものを購入する戦士。
仲間に見つからないよう、こっそりと宿に戻り。
買ってきたものを、バッグの中に詰め込む。
嘘をついてしまったという罪悪感。
仲間に隠し事をしているという、背徳感。
それらを胸に押し込み、街のマップを取り出す。
これだけ大きな街なら、ひとつやふたつはあるはずだ。
マップを眺めながら、とあるお店を探す。
あった。
飲み屋街の近くに、娼館が並ぶ通りがある。
かつて感じたことのない高揚感。
あの日『赤ちゃんプレイ』という言葉を知ってから、ずっとこうすることを望んでいたのだ。
戦士には、はっきりとそれが分かった。
誰にも弱音を吐けず、仲間たちの前では頼れる年長者を演じ。
命を懸けて、人類のために闘っているのだ。
そんな自分が、誰かに甘えたいと思って、なにが悪いのだろう。
問題は、娼館の利用方法だった。
女の自分でも、利用できるのだろうか。
いくら、持っていけばいいのだろうか。
『赤ちゃんプレイ』は、してもらえるのだろうか。
男の恰好をしていけば、怪しまれないかもしれない。
通常より多めにお金を渡せば、希望をかなえてくれるかもしれない。

夜。
娼館が並ぶ道を、早歩きで進む。
奥まったところにあるお店に、彼女は入った。
受付の男。
50台後半から60台前半だろうか。
表面上は笑顔だが、どこか値踏みをするような視線を、戦士に送ってくる。
初めての利用であることを告げると、男は簡単な説明をしてくる。
恥ずかしさをこらえながら、戦士は一つの質問をする。
「赤ちゃんプレイというのは、その、できるのだろうか」
それを聞いた男が、ニヤッと笑う。
「ええ、できますよ、もちろん」
そして、一人の娼婦と引き合わされた。
煽情的なドレスに身を包んだ女性が、蠱惑的な笑みを浮かべている。
化粧のせいで大人びて見えるが、同年代か、もしかすると自分よりも年下かもしれない。
この子に、今から私は恥ずかしいお願いをするのだ。
不安と緊張と、期待。
「じゃあ、行きましょう?」
戦士の手をとり、部屋へと案内する娼婦。
緊張で、手に汗が滲む。
そんな戦士の様子に気づいたのか、娼婦が笑う。
「お兄さん、こういうお店、はじめて?」
「あ、ああ…」
「ふふっ。緊張しなくても大丈夫よ。これからたっぷりと、気持ちいいことしてあげる」
なんと言っていいか分からず、顔を赤らめながらうつむく戦士。
「照れちゃって、カワイイ。でもよかった、私、お兄さんみたいな人タイプなの。今日はいっぱいサービスしてあげるからね」
腕を絡ませ、甘えるような声で戦士にささやく。
相手は同性で、しかもおそらく同年代の女の子。
それなのに、なぜ自分はこんなにもドキドキしているのか。

部屋へ到着する。
変装を解き、自身が女であることを告げる戦士。
驚く娼婦に、どこか祈るような気持ちで、自らの『性癖』を告白する。
そして、用意しておいたチップを娼婦に渡す。
切迫した表情の彼女に、娼婦はうなずいた。
突然のことで驚きはしたが、娼婦にとっては通常の『仕事』よりも楽なものだった。
それに、相場を大きく超えた対価も得られるのだ。
断る理由がなかった。
「ほら、お嬢ちゃん、こっちにいらっしゃい」
戦士の手をとり、部屋の奥へといざなう。
「ママに甘えたくて、ここまで来たの?」
「う、うん…」
「そうなんだ。こんなに傷だらけになって、頑張り屋さんなのね。頑張ったぶん、今夜はママにいっぱい甘えていいのよ?」

幼い頃に母を亡くして二十数年、甘えることを許されなかった戦士。
一方で、剣士である父のもと、厳しい修行を課せられ。
若くして名をあげた彼女は、その能力を遺憾なく発揮し、出世していく。
頑張れば頑張るほど、強くなればなるほど、周囲からの嫉妬、嫌がらせも増えていく。
甘えるということを知らなかった彼女は、それでも修行を欠かさず、気付けば彼女に敵う者はいなくなっていた。
幼き勇者に引き合わされてからは、剣術の師として厳しく指導にあたり。
旅に出てからも、使命のために、ずっと自分を犠牲にしてきた。

そんな彼女の目の前に現れた、母親。
『プレイ』だと分かっていても。
かりそめのものだと分かっていても。
彼女にとっては十分すぎるほどの幸せだった。
ママの胸に飛び込み、おっぱいを吸う。
柔らかくて、温かい。
「いい子、いい子…」
頭を撫でられる。
かつて、感じたことのないほどの幸福感。
安心感。
「ほら、お洋服も、ぬぎぬぎしましょうね。おててを上にあげて、バンザイ、できるかな」
「うん、できる…」
子どものような口調の自分に、不思議な感覚に陥る戦士。
でも、それでいいのだ。
ここには、ママと自分の2人しかいない。
誰にも、勇者たちにも知られず、好きなだけ甘えていいのだ。
両腕をあげる。
娼婦が、戦士の服を脱がせていく。
上着を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、下着を脱ぎ…
生まれたままの姿になる。
「えらいね、ちゃんとママの言うこと聞けて、お洋服も、ちゃんとぬぎぬぎできたね」
「えへへ…」
戦士が持参した、赤ちゃんグッズ。
おしゃぶり。
哺乳瓶。
よだれ掛け。
ガラガラ。
おしめ。
意図を理解し、それらを巧みに使う娼婦。
この時間、彼女は戦士としての使命、頼れる年長者としての重責から解放された。

その日から、彼女の『赤ちゃんプレイ』は始まった。

己の性癖を告白するときの気恥ずかしさも、戦士は好きだった。
反応は、娼婦によってさまざまだった。
母性を全開にする者。
好奇な目を向けてくる者。
そっけなく、淡々としている者。
今回、彼女を相手にする娼婦は…
「へぇー、そうなんだぁ」
どこかイタズラっぽい笑みを浮かべ、戦士を眺めてくる。
おそらくは戦士よりも年下であろう娼婦。
そんな彼女に弱みをさらけ出し、無防備になる感覚は、背徳的で、どこか淫靡ですらあった。
持参したグッズを見せる。
「これで、いつもどんなことしてるの?」
その一つ一つを、戦士に解説させる娼婦。
「ふぅん、そうなんだぁ」
Sっ気があるのかもしれない。
ワザと、羞恥心を煽るような言い方、表情をしてくる娼婦に、なぜか戦士はドキドキしてしまう。
娼婦の前で、一糸まとわぬ姿になる。
一方、娼婦は服を着たまま。
「ママが、おしめ、付けてあげるね?そこのベッドで横になって、ペトラちゃん?」
ペトラは、彼女の本名ではない。
娼館で過ごすときに名乗る、本名を少しもじってつけた偽名。
ただ、今ではすっかり彼女になじんでいた。
ベッドの上で、あお向けになるペトラ。
きれいに割れた腹筋。
女性にしては太く、筋肉で盛り上がった四肢。
傷痕だらけの、鍛え上げられた肉体。
見るからに、歴戦の強者といった感じだった。
過酷な修行と、どれほどの修羅場を潜り抜けてきたのか。
そんな彼女が、おっぱいも、女性器も、お尻の穴も、全てを無防備にさらしている。
腕力では到底かなわない。
でも今は、そんな彼女より自分のほうが立場が上なのだ。
そう考えた瞬間、娼婦は言いようのない昂りを覚えた。
「ねえ、ペトラちゃん。ママ、いいこと思いついちゃった」
黒々と茂った陰毛を見ながら、娼婦がささやく。
娼婦の提案に驚くペトラ。
想像し、恥ずかしくなったのか、顔を赤らめる。
そして、コクンとうなずいた。
自身のムダ毛を処理するための、カミソリと石鹸、ハサミを取り出す娼婦。
「ほら、ママに見えやすいよう、両脚を開いてね、ペトラちゃん」
膝を上に曲げた状態で、股を開く。
いわゆる、M字開脚。
屈辱的なポーズに、羞恥心を刺激されるペトラ。
そんなペトラの心情を、手に取るように理解する娼婦。
「ペトラちゃんの大人オ〇〇〇、カワイイこどもオ〇〇〇にしてあげるからね」
娼婦の口調、視線に、ペトラが反応する。
そんな彼女に、娼婦の嗜虐心が更に刺激される。
「じゃあ、始めるわね」
まずはハサミで、ペトラの陰毛を短く刈る。
その後、石鹸を泡立て、ペトラの陰部に塗っていく。
「いい、じっとしてるのよ?」
泡の塗られた陰毛に、カミソリをあてていく。
慣れているのか、ペトラの敏感な部分を傷つけることなく剃っていく。
おしぼりで、ペトラの陰部をぬぐう。
「ほら、見て、ペトラちゃん」
黒々と生え茂っていた陰毛は消え。
現れたのは、赤ちゃんのような、ツルツルのアソコ。
自身が本当に赤ちゃんになったような気がして、羞恥心や屈辱感、背徳感に襲われるペトラ。
そんなペトラを、満足げに見下ろす娼婦。
「本当に赤ちゃんみたいになっちゃったね。かわいいよ、ペトラちゃん?」
「う、うん…」
「じゃあ、次はこれ、付けてあげるね」

おしめを付けた戦士に、部屋の中をハイハイさせる娼婦。
「ほら、ママはこっちよ?ここまで来れるかな?」
手を広げながら待つ自分に向かって、目を輝かせながら這い進む、屈強な女性。
ペトラが近づくたび、わざと距離をとり、ふたたび手を広げる。
そのたび、自分に向かって一生懸命這い寄るペトラに、ゾクゾクする娼婦。

「ママ、おちっこ…」
「ペトラちゃん、おちっこ、したくなっちゃったの?」
「うん…」
「じゃあ、こっちにおいで?」
シートを敷き、その上にあおむけになるペトラ。
「ママが見ててあげるね」
「うん…」
恥ずかしそうにうなずくペトラ。
「ママ、出る…」
「いいよ、おちっこ、いっぱい出して、スッキリしようね、ペトラちゃん」
顔を真っ赤にしながら、ママを見上げるペトラ。
そして…
小さなシミができたと思った瞬間、おしめの中に勢いよく放尿するペトラ。
恥ずかしそうな、気持ちよさそうな、気の抜けた顔をしている。
どれだけため込んでいたのか、いっこうに勢いは衰えず。
吸収しきれなくなったおしめから、尿が溢れだす。
溢れた尿が、シートに吸収されていく。
「もう、どれだけガマンしてたの、ペトラちゃん?おしめから、こぼれちゃったよ?」
「ごめんなさい…」
屈強な女が、放尿しながら恥ずかしそうに目を伏せる。
部屋の中に、ニオイが立ち込める。
そして、ようやくお腹の中のオシッコを全てを出し切るペトラ。
「ペトラちゃん、たくさんおちっこでたね。きもちよかった?」
「うん、きもちよかった…」
「でも、こんなにおちっこ出して、おしめどころか、シートもペトラちゃんのおちっこまみれになっちゃったよ?」
「ごめんなさい…」
「シートを汚したペトラちゃんには、オシオキしないとね」
「オシオキ?」
不安そうに見上げるペトラに、こみあげてくる優越感を押し殺しながら言う。
「悪い子には、お尻ペンペンしないとね」
おしめを脱がせ、ペトラのお尻をおしぼりでふき取る娼婦。
嗜虐心と期待とで、ゾクゾクする。

娼館には、いろいろな性癖を持った客が訪れる。
そんな彼らの願望を見抜き、ニーズに応え、満足させ、とりこにする。
そして、リピーターになってもらうのが、娼婦としての腕の見せ所だった。

ベッドに腰かける娼婦。
そのふとももの上に、覆いかぶさるようにうつぶせになるペトラ。
オーバー・ザ・ニーという姿勢。
左手でペトラの身体を押さえる。
そして、右手をペトラのお尻にあてる。
「いい、ペトラちゃん。これはオシオキなんだからね」
顔を耳まで赤くし、息を荒くするペトラ。
優等生で生真面目な彼女は、どちらかと言えば他の模範として見られることが多かった。
このようにオシオキされることは、彼女の人生において一度もなかったと言っていい。
それが今、年下の女性の前で、自身だけ裸の状態で。
情けなさと、恥ずかしさと、屈辱。
彼女の前で性癖を告白した時から、既に立場の違いは生じていた。
それが、剃毛され、赤ちゃんのようなアソコをさらし。
おしめを付けて、ハイハイする姿を晒し。
お漏らしする姿を晒し。
そして今、臀部をさらしながら、『オシオキ』されるのを待っている。
身の丈ほどもある大剣を振り回し、どのような強敵も切り伏せてきた戦士。
人間界では、おそらく彼女ほどの剣士はいない。
上級魔族でさえ、彼女の太刀裁きについてこれず、恐怖を顔に浮かべながら最期を迎えるのだ。
勇者の剣の師であり、いずれは魔王を倒す者のひとり。
そんなことは露知らず、イジワルな笑みを浮かべ、自分を見下ろしている娼婦。
これまでの経験も、圧倒的な力の差も、まったく役に立たない。
ただ、絶対的な存在として、そこにいた。
彼女からの『オシオキ』を、緊張で身をこわばらせながら待つよりほかないのだ。

娼婦の手が、ペトラのお尻に振り下ろされる。
パシッという乾いた音が、室内に響く。
手首にスナップを効かせ、慣れた手つきで、ペトラの臀部を叩く。
時には立て続けに、時には焦らすように。
いつ訪れるか分からない『次』に備え、身を固くするペトラ。
叩かれるたび、ペトラの口から悩ましげな声が漏れる。
そんな彼女を弄ぶかのように、娼婦の手がペトラのお尻を撫でる。
「ペトラちゃん、ごめんなさいは?」
「ごっ、ごめんなさい…」
「声が小さいよ!」
バシッ!
「ごっ、ごめんなさい!」
なぜ、自分は謝っているのか。
「悪いことしたら、オシオキされるの。ペトラちゃんがいい子になるように、ママがオシオキしてるのよ」
そう言って、ペトラの臀部に手を振り下ろす。
「ごめんなさい、ママ!」
叱られる、という経験がほとんどない彼女にとって、新鮮な体験だった。
何度も、何度も謝罪の言葉を叫び、その度にお尻を打ち据えられる。
屈辱感と羞恥心と幸福とが入り混じった、不思議な感情。
ペトラの臀部が、赤く腫れあがっていく。
打たれるたびに拡がる衝撃と痛み。
なぜか、やめてほしくないと思ってしまう。
このまま、お尻の皮が破けるまで、叩いてほしい。
いつもなら考えもしないことが、頭に浮かんでくる。
そんな彼女の被虐心を見抜いた娼婦は、なおも彼女のお尻を打ち据える。
「ペトラちゃん、もしかして、お尻を叩かれて悦んでるの?そんなんじゃ、オシオキにならないでしょ」
「ご、ごめんなさい、ママ」
「ほら、アソコからエッチなお汁がどんどん溢れてきてる。ママの太ももが、ペトラちゃんのお汁でビショビショになっちゃったじゃない」
「だって…」
「だってじゃ、ありません!」
パシッ
「あうっ!」
何度も叩かれて敏感になったお尻に、更なる痛みが走る。
痛いのに、なぜか、身体が熱くなる。
「ほら、またエッチなお汁が出てきた。どうしてそんなにエッチな子になっちゃったの?反省しなさい!」
パシッ
「ごっ…ごめんなさい!」
倒錯的なシチュエーション。
それと、許容量を越えた痛みが、ペトラの脳に麻薬を分泌していく。
屈辱が、痛みが、敗北感が、快感に変換され、脳に刻まれていく。
「ペトラちゃんみたいな子のこと、なんていうか知ってる?」
娼婦の声。
うつぶせになったペトラからは見えないが、その顔はありありと想像することができた。
「ペトラちゃんみたいに、お尻を叩かれてエッチな気持ちになっちゃう子のことをね、マゾっていうの。ペトラちゃんは、マゾさんなのね」
そんなこと…
「会った時から、分かってたのよ。あ、この子はマゾだなって」
イヤイヤをするペトラ。
「多くの子は、お尻を叩かれるのなんてイヤなの。でも、時々、ペトラちゃんみたいに、お尻を叩かれるのが好きになっちゃう子もいるの。でも、大丈夫よ。変なことじゃないの。ペトラちゃんだけじゃない。ママはペトラちゃんみたいなマゾさん、いっぱい知ってるのよ。みんな、とってもいい子。大丈夫、安心して?」
「ホントに?」
「ホントよ。それにママ、マゾさんが大好きなの。特にペトラちゃんみたいな子はね。だから、今日はいっぱい、かわいがってあげるね、ペトラちゃん?」
「う、うん…」
自身よりか弱い、年下の同性に甘える。
それだけでなく、時には見下され、イジメられることに、言いようのない興奮を覚える。
自身がマゾであることなど、考えもしなかった戦士。
偶然出会った名も知らぬ娼婦に、自身の性癖を見抜かれた彼女。
その一夜をきっかけに、更に性癖を拗らせていく。

日中は、頼れる姉御として仲間たちを守り、敵を切り伏せていく。
夜は、そんな仮面を脱ぎ捨て、娼婦の前ですべてをさらけ出す。
甘やかされ、バカにされ、抱きしめられ、オシオキされ。
仲間が知ったらゲンメツされるかもしれない。
それ以前に、恥ずかしくて生きていけないかもしれない。
でも、大丈夫だ。
ここには、自分と『ママ』の2人しかいない。
自分を頼ってくる者も、守らなければならない者もいない。
自分のすべてをさらけ出し、そしてそれを受け入れてくれる存在。
彼女がずっと得られなかったものを、ママは与えてくれる。
おしゃぶりをくわえ。
ガラガラであやされ。
ハイハイをし。
おしめに放尿し。
おっぱいに顔を埋めながら眠り。
そして時に、屈辱的な言葉で煽られ。
トイレトレーニングと称し、娼婦の見ている前で、おまるに放尿させられ。
お尻を突き出して『オシオキ』を受ける。
そうすることで、日ごろ溜まりにたまった鬱屈を解消するのだ。
過酷な旅。
日々強くなっていく敵。
彼女は、最前列でそんな敵と戦わねばならないのだ。
何度も命の危険にさらされ、誰にも甘えられず。
そんな彼女にとって、ペトラの存在は絶対に必要だった。
ペトラがいなかったら、彼女の心は毀れてしまっていたかもしれない。


うわごとのようにママ、ママとつぶやきながら、サキュバスの胸に吸い付く戦士。
屈強な彼女に隠された、もう一つの貌。
驚いたことに、サキュバスの胸から母乳が出てくる。
自在に操れるのだろうか。
サキュバスのことだ、あの母乳も、おそらく相手を魅了するための技なのだろう。
それを、おいしそうに飲む戦士。
サキュバスが、戦士のお腹をやさしくなでる。
幸せそうな顔をして、乳首にむしゃぶりつく女戦士。
戦士としての最期が近づいていることに、みじんも気づいていない。
「ママ、おちっこ…」
普段はハスキーな声の彼女が、甘ったるい声で、サキュバスに告げる。
「おちっこ、出ちゃうのね、ペトラちゃん。いいわよ、ママが見ててあげるから、いっぱい出しなさい?」
戦士が、コクンとうなずく。
サキュバスが、戦士のお腹をもみ始める。
鍛え抜かれ、見事に浮き出た腹筋。
それが、徐々に硬さを失っていく。
お腹をつかみ上げられた戦士が、嬌声をあげる。
その瞬間、おしめの中に、戦士のマナが放出された。
戦士の身体から流れ出た大量のマナが、おしめに収まりきらず、すきまからあふれ出す。
慌てて杯を持ち寄り、それを受け止める下級魔族。
自分の大切なマナを、まるでお漏らしのように垂れ流していく戦士。
そのことに気付いているのか、いないのか。
再び、サキュバスの母乳を飲み始める。
グニグニ、グニグニとお腹をもみほぐされる戦士。
おしめのすきまからは、とめどなく彼女の『おしっこ』が流れ出す。
引き締まっていた彼女の肉体が、少しずつ、少しずつ柔らかさを帯びていく。
自身ほどの長さの大剣を、軽々と振り回すその腕から。
頑丈で、非常に重い鎧を難なく支える、その肉体から。
千里を駆けても疲れない、その脚から。
筋肉が溶けていく。
力が失われていく。
隆々と盛り上がっていた筋肉は、ブヨブヨとした贅肉に変わっていく。
彼女がこの世に生を受けてから三十年。
幼き頃より剣の道を志し、技とともに鍛えぬいてきた身体。
どんな厳しい修行にも耐え、修羅場を切り抜け。
休むことなく、鍛錬を続けてきた彼女。
その彼女の股から、力が、努力が、歳月が、流れ出ていく。
マナを吐き出し切った彼女に、かつての肉体美はなかった。
筋肉の代わりに、だらしなく贅肉をまとった自身の姿。
戦士は、現実を受け入れられず絶叫した。
ガチャガチャと手かせを鳴らすが、ビクともしない。
手かせごと腕を振り上げ、サキュバスにたたきつけようとするが、バランスを崩して転んでしまう。
自身のマナが入った杯。
慌てて立ち上がり、駈け寄ろうとするが、首輪が締め付けられる。
見ると、下級魔族がリードを引っ張っていた。
先ほど、彼女が壁に叩きつけた下級魔族だった。
先ほどまでの機敏さは、かけらもなく。
ドタドタと、ブザマに慌てふためく彼女。
上級魔族ですら数人がかりでも止めることができなかった、怪力の持ち主。
それが今や、下級魔族一人に、しかも片手で弄ばれている有様だった。
部屋に入ってきたときの、肌を刺してくるような威圧感はどこにもない。
全て、サキュバスに搾り取られてしまったのだ。
目の前にある、彼女を彼女たらしめていたもの。
彼女のマナ。
それを、たった一人の下級魔族に阻まれている。
先ほどの仕返しとばかりに、戦士をからかい、おちょくる下級魔族。
彼女がこれまで相手をしてきたのは、もっともっと強い上級魔族だった。
こんな雑魚、束になって掛かってきても片手でなぎ倒せる。
そんな雑魚相手に、必死になっても敵わない。
身体が重い。
力が入らない…
「クソッ、クソッ、お前みたいな雑魚に、クソッ…」
焦り、困惑、屈辱、怒り、不安、恐れ、恥辱。
周囲の下級魔族の嘲笑にも気づかず、ただ目の前にいる『雑魚』に苦戦する戦士。
顔を真っ赤にしながら、下級魔族に掴みかかろうとする。
軽くあしらわれ、尻もちをつく戦士。
さっきまでは自分より圧倒的に強かった戦士が、ブザマに取り乱している様が、おかしくてたまらないのだろう。
下級魔族たちの笑い声。
竜人族は、表情も変えず、ただその様子を魔石に記録し続けていた。


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