マナドリンカー ~尊厳を搾り取る者~ 第4話

前回のあらすじ
ヴァレオンから魔石を譲り受けたマルレート。
解説書を読みながら試行錯誤するが、うまく扱うことができない。
そして、三回目となる『儀式』。
勇者パーティーの剣であり、盾である、屈強な女戦士。
その腕力で下級魔族たちを翻弄するが、サキュバスに魅了され、秘めた願望をさらしていく。
サキュバスにあやされ、赤子のように甘える女戦士。
そして、まるで放尿するかのように、おしめの中にマナを排泄してしまう。
すっかりと変わり果てた己の姿に取り乱す、元女戦士。
かつて『雑魚』と称していた下級魔族相手に、いいようにあしらわれてしまうのだった。

主な登場人物
マルレート・フォン・シュルツ
 吸血族の当主。
 ヴァレオンから魔石を譲り受けたものの、うまく扱うことができず、もどかしく思っている。

ヴァレオン
 魔王の側近で、竜人族の上級魔族。
 他の魔族とは極力交流を持とうとしない彼だが、マルレートには何故か好意的な様子を見せる。

サキュバス
 マナを搾り取るという特殊能力を持つ、下級魔族。
 彼女たちを見くびってはいけない。
 油断していると性癖も何もかも見抜かれ、気付いた時には彼女たちの言いなりになってしまうのだ。
 
勇者
 魔王を倒すために生まれてきた、人類の希望。
 生まれた時から男として育てられ、厳しい修行を課せられてきた。
 類まれな才能だけでなく、どんな逆境にも諦めない強い精神とカリスマ性を持つ。



下級魔族たちが、地下室を慌ただしく動き回る。
戦士の『儀式』のあと片付けだ。
それを、マルレートはヴァレオンとともに眺めていた。
「マルレート卿よ、片付けが終わるまでまだ少しかかるようだ。それまで、もしよろしければ魔石のレクチャーでもと思うが、どうだろう」
「よろしいのですか?」
「ああ。と言っても、せいぜい10分ほどだろうが、それでもよければ」
「感謝します」
手に持っていた木箱を開ける、ヴァレオン。
中に仕舞われた記録の魔石を、指先で摘まみ上げる。
「魔石を扱いにあたり、何よりも大切なのは、魔石のエネルギーを感じること。ただ一方的に魔力を注いだところで、その効力は発揮できん」
女戦士の痴態が記録された、魔石。
赤い、半透明の石を、透かすように眺める。
「そしてもう一つ。己の中に流れる魔力を感じること。血液が血管を流れているように、魔力も身体の中にある管を通っている。目には見えんがね」
「はあ…」
「魔石の放つエネルギーと、己の身体を流れる魔力。この2つさえ感じることができれば、もう半分以上はできたも同然だ」


屋敷へと戻ってきたマルレートは、さっそく記録の魔石を取り出した。
「エネルギーを感じる、と言われてもな」
魔石を、軽く握る。
ひんやりした感触が、手のひらに伝わる。
マルレートの体温が、魔石に移っていく。
球状の、握りやすい形。
手のひらと5本の指に、ちょうど収まるくらいの大きさ。
「うーむ、分からん…」
魔石というくらいだから、魔力を秘めているのだろう。
そんな、当たり前のことをボンヤリと考える。
その魔力を感じ取ることができるのか。

目を閉じる。
身体を流れる血液。
心臓が、脈動する音。
雑念が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
まぶたの裏にひろがる光景。
果敢に攻撃を仕掛けてくる、勇者たち。
妖艶な笑みを浮かべるサキュバス。
マルレートの部下たち。
ヴァレオン。
何の脈絡もなく、次々と移ろっていく。
風が吹いた。
いや、窓は閉めているはず。
しかし、ふたたび風がマルレートのそばを吹き抜けていく。
本当に、風なのか。
風はマルレートの身体の中に入り、しばらく体内にとどまったあと、ふたたび去っていく。
これが、魔力か。
ふと、そう思った。
右手に意識を向ける。
手のひらから伝わる、気配のようなもの。
かすかに、何かが聞こえたような気がした。
耳を澄ませる。
静寂。
ときおり、窓の外から小鳥のさえずりが聞こえる。
ささやき。
しかし、聞き取れない。
音ではなく、直接頭の中に言葉が浮かんだような気がする。
魔石が、語りかけているのか。
何を言おうとしているのだ。
そう思った瞬間、マルレートの身体は別な場所へと移動していた。
見知らぬ部屋。
周囲には、本棚や実験器具。
ガラス棚には、数々の魔石が標本のように飾られている。
目の前には、ヴァレオンがいた。
相変わらず気難しそうな顔をしながら、こちらを眺めている。
この光景は、魔石の前の持ち主のものか。
顔は見えないが、声は聞き覚えがある。
確か…
ある男の顔が浮かんだ。
ヴァレオンと同じ、竜人族。
最後に会ったのは、魔王城に出仕した時だった。
領内に関する定期報告を終え、帰る途中、通路で行き会ったのだ。
『勇者討伐の命を受けた』
いつものように無表情のまま、そっと打ち明けてきた。
『そうか…無事に戻ってくることを祈っているよ』
善戦したらしいが、結局そのまま帰らぬ人となった。
「そうか、彼はヴァレオン殿の…」
何となく、このまま親子の会話を聞いているのが忍びない気がして、目を開けた。
見覚えのある部屋。
ふっと、息をついた。
ヴァレオンは、息子の形見を譲ってくれたということになる。
なぜそこまで、と思ったが、なんとなく思い当たる節もあった。
ヴァレオンの息子とは特別親しかったわけではなく、行き会うと二言三言会話をする程度の間柄だった。
ただ、他の魔族と関わろうとしない竜人族にあっては、言葉を交わすこと自体、珍しいことではあった。
彼が竜人族にしては社交的であった、というわけではないと思う。
実際、他の魔族と会話しているところを見たことはない。
となれば、自惚れでなければ、そういうことなのだろう。
ヴァレオンは、息子の想いを知っていたのだろうか。

記憶の魔石から映像を取り出すことに成功したものの、喜ぶ気にはなれず、しばし、魔石を弄んでいた。


ついに、その日がやってきた。
魔王を倒す者として、魔族たちに恐れられた勇者。
彼女に倒された魔族は、上級下級を問わず、数え切れぬほど。
戦士に負けぬほどの剣術、神官より授かった聖魔法、魔法使いに教わった補助魔法。
勇者にしか扱えぬ、神聖な武具。
何より、どんな苦境にあっても決して挫けず、仲間たちを励まし続けた強い精神力。
勇者が、勇者であるゆえん。
人々の希望であり、女神の再来とまで言われた彼女。
仲間たちの末路を知ってか知らずか、その態度は堂々としたものだった。
他の3人と同様、生まれたままの状態で、部屋に入ってくる。
背筋をピンと伸ばし、目には鋭い光を宿し。
室内の魔族を睨みつける。
あまりの迫力に、下級魔族たちが震えあがった。
彼女は、まだあきらめていないのだろう。
隷属の印を刻まれ、能力を封じる様々なマジックアイテムを付けられ。
武具もすべて取り上げられ。
彼女の仲間たちはすでに能力を搾り取られ、下級魔族ひとり、相手にすることはできない。
もはや、彼女の勝機は1%も残っていないのだ。
ありもしない反撃の機会を信じ、気を研ぎ澄ませていく。

サキュバスが、勇者の耳元でささやく。
これまでと同じ流れだが、異なる点がひとつ。
サキュバスが、男装しているのだ。
長い髪を後ろで束ね、豊満な胸をさらしできつく締め。
タキシードを着たその姿は、どこかの王子か、はたまた貴族か。
甘い、うっとりするようなハスキーボイスで、勇者に愛をささやく、男装の麗人。
しかし、勇者の表情は変わらない。

と、そこに来訪者が現れた。
黒い、ショートボブの髪。
背丈は低く、控えめな体つき。
目隠しをされた状態で、下級魔族に手を引かれながら部屋へと入ってきた。
魔法使い。
いや、元魔法使いか。
勇者が、あっと声をあげる。
名前を呼びかける勇者の声に、彼女は反応しない。
サキュバスの前まで来た元魔法使いの、目隠しが取られる。
不安げにあたりをうかがう彼女に、サキュバスが優しく声をかける。
サキュバスを見つけ、パッと笑顔を浮かべる元魔法使い。
そして、顔を赤らめながら、サキュバスに近寄っていく。
「ユリ…」
勇者、ユリアンネ。
その愛称。
しかし、その声は勇者本人ではなく、その隣にいるサキュバスに向けられていた。
甘えた声をあげながら、サキュバスにすり寄っていく、元魔法使い。
「な、なんで…」
驚きを隠せない勇者。
「あのアクセサリー、ユリが可愛いって言ってくれたから、もっと付けてきたんだ」
そう言って、身に着けていたローブを脱いでいく。
「ほら、これ、とっても可愛いでしょ?」
服従の首輪。
封魔のピアス。
契約の指輪。
身に着けた者の自由を奪い、魔力を無効化するマジックアイテムの数々。
「ほら、このタトゥーもね、刻んでもらったの。痛かったけど、ユリのためだから、がんばれたんだよ?」
「な、なにを言って…」
「私って、他の人よりも魔力の量が多いでしょ?それって、身体の中にある魔力の回路が多いからなんだって。だから、人よりも多くの魔力が貯められるし、人よりも早く回復できるの。でも、このタトゥーを刻まれると、その回路が少しずつなくなっていくんだって」
「そ、そんな、やめてよ!なんでそんなこと!」
勇者の言葉は、しかし彼女の耳には届いていない。
サキュバスにしなだれかかり、恥ずかし気に見上げる、元魔法使い。
「まだ時間はかかるけど、きっと、普通の女の子になるから。だから、あの約束…ユリの彼女にしてくれるっていう約束、守ってね」
「そんな、そんなこと言ってない!やめてよ、私はここにいるよ!なんで、どうしたの?」
目を閉じた元魔法使い。
その唇と、サキュバスの唇が重なる。
チュッ…チュッ…
「んっ…ユリ…好きだよ…んぁっ…ユリぃ…」
元魔法使いと、魔族のキス。
「私も、大好きだよ…」
サキュバスの、甘いささやき。
「んっ…うれしい…大好き、大好きなの、ユリ…ユリの唾液、もっと飲ませて…」
目の前で繰り広げられる光景に、勇者の頭が付いてこない。
先ほどまでの気丈さも、迫力もなく。
ただ、呆然と。
かつての仲間の変わり果てた様を、眺めている。
「んぁ…」
二人の唇が離れる。
情熱的なキスの名残か。
唾液の糸が、お互いの唇をつないでいる。
「なんで、やめちゃうの?」
「ごめんね。今日はここまで」
悲しそうに、サキュバスを見上げる元魔法使い。
そんな彼女に顔を寄せるサキュバス。
「これから、大事なお仕事があるの。また可愛がってあげるから。だから、ね」
額をくっつけ、至近距離で見つめ合う二人。
「うん、わかった…」
再び目隠しをされた元魔法使いが、下級魔族に手を引かれながら退室していく。

と、入れ替わるように、再び来訪者が。
下級魔族にリードを引かれた、全裸の女。
四つんばいになりながら、部屋に入ってくる。
顔はだらしなく緩み、口の端からはヨダレが垂れている。
異様なのは、彼女のお尻だった。
丸みのある、形のいいお尻。
人間であるはずの彼女には、しっぽが生えていた。
排泄器官である肛門に差し込まれた、禍々しい、棒のようなもの。
不規則に、まるで彼女を支配しているかのように動くそれは、アナルをいじわるく責め立てている。
よく見ると、その棒には見覚えがあった。
彼女が、かつて所持していた聖なる杖。
魔族に改造され、悪趣味なデザインへと変わってしまったが、彼女がとても大切にしていた杖だ。
かつて、数多の魔族を消滅させた、彼女の杖。
それが今や、わずかに残った彼女の魔力を奪いながら動く、アナル用バイブレーターへと成り果てていた。
神官の変わり果てた姿を見て、勇者が動揺する。
床に愛液をしたたらせながら、勇者へ這い進む神官。
かつての毅然とした、高潔な彼女は、もういなかった。
うろたえる勇者の手をとり、醜く作り変えられた彼女の『杖』へと誘導する。
『杖』の柄を持たされた勇者は、神官に促されるまま、手を動かす。
何が起きているのか理解できないまま、神官の言葉に従う勇者。
勇者が手を動かすたび、神官が下品な鳴き声をあげる。
呆然としている勇者に、神官が己の性癖を告白する。
冒険中も、仲間に隠れて、お尻でオナニーしていたこと。
戒律と、耐えがたい欲求との板挟みで、自己嫌悪に陥っていたこと。
でも今は、すべてのプレッシャーから解放され、自分に正直になれたことで、とても幸せな気持ちであること。
神官の、嘘偽りのない告白。
勇者はとうてい受け入れることはできなかった。
彼女の知る神官は、ぜったいにそんな人間ではなかった。
優しくて、賢くて、でも厳しくて。
人として、大切なことを彼女から教わった。
大切な仲間であり、尊敬すべき師であり。

次にやってきたのは、ムチムチとした身体の女性だった。
よつんばいで、リードを引かれながら入ってくる。
彼女の背には、少女のような姿をした小悪魔が。
手にはムチを持ち、ときおり女性の尻を叩いては、前に進むよう命令している。
卑屈な笑みを浮かべて、ハイハイしながた進む女性。
お尻を叩かれるたび、切なげに鳴き声をあげる。
神官とは違い、下着を付けることは許されているようだ。
いや。
よく見ると、そうではなかった。
ブラジャーではなく、よだれかけ。
パンツではなく、おしめ。
勇者は最初、彼女が誰なのか分からなかったようだ。
いや、分かってはいたが、信じたくなかっただけかもしれない。
かつて、全身が筋肉で引き締まり、見事なプロポーションを誇っていた女性。
勇者たちの剣となり、盾となり、幾度となく危機を救ってくれた女性。
勇者の剣術の師であり、憧れの女性。
目の前にいるのは、全身に贅肉をまとい、赤子のような恰好をした女。
エプロンを付けたサキュバスにリードを引かれ、馬乗りになった少女にはやし立てられ。
自信なさげに周りをうかがいながら、勇者の前へとはい進む。
ちらっと勇者を見上げて、恥ずかしそうに顔を伏せる。
引率役のサキュバスはその場に座り、エプロンをまくり上げる。
柔らかそうな乳房が、露わになる。
ハイハイがじょうずにできたごほうび。
己の膝をポンポンとたたき、女を誘う。
女はその膝に頭をのせ、目の前の乳首に吸い付く。
屈強な女戦士の、成れの果て。
サキュバスが、やさしく女を甘やかす。
その横で、ガラガラを持った小悪魔が、女をあやす。
まるで、幼い子の世話をする、母と姉のような光景。
憧れていた女性が、魔族相手に…
なんと、情けない姿を晒しているのか。
悔しさ。
情けなさ。
恥ずかしさ。
裏切られたという、怒り、悲しみ。
様々な感情が、勇者を襲う。
そんな彼女に、追い打ちをかけるように…
「ママ、おちっこ…」
恥ずかしそうに、うちあける女。
ママと呼ばれたサキュバスは、優しくうなずく。
トン、トン、と。
女の背中を軽くたたくサキュバス。
その胸に、顔を埋める女。
そして。
戦士は、おしめの中に放尿する。
尿とともに、彼女に残るマナが、おしめの中に流れ出ていく。
恍惚とした表情をうかべる女。
耳元で、小悪魔が囁く。
「ペトラがおしっこしてるところ、勇者が見てるよ?」
はっとして、女が顔をあげる。
勇者と目が合い、顔を赤らめる。
なおも、小悪魔は囁く。
「かつての教え子に、恥ずかしいところ、見られちゃったね」
恥ずかしそうに、イヤイヤをする女。
かつて、比類なき筋力を誇った彼女は、尿とともに、筋肉も、マナも、誇りすらも排泄してしまった。
そして、サキュバスたちに甘やかされながら、知性も溶かされているのだ。

呆然と立ち尽くす勇者。
彼女は、生まれた時から女であることを封じられた。
男として育てられた彼女は、着るものも、男の子と同じだった。
いずれ魔王を倒すであろうこの子を、強く、たくましく育てなければ。
そうした周囲の想いは、彼女から女という性を奪っていった。
彼女自身も、周囲の期待に応えようと頑張った。
厳しい修行に明け暮れる毎日。
年の近い同性の子どもたちは、可愛らしい服を着て、おままごとや、人形あそび。
彼女たちを見ないようにしながら。
己の心の声に、気付かないフリをしながら。
ずっと、ずっと押し込めていた感情。
転機となったのは、とある国での出来事。
その国には、一人の王子がいた。
彼に、恋をしてしまったのだ。
舞踏会に招かれた勇者一行。
そこで踊る王子に、目を奪われ…
相手役の女性は、きらびやかなドレスを身にまとい、王子にエスコートされながら華麗に踊る。
そんな二人を見て、抑え込んでいた感情が噴き出すのを彼女は感じた。
勇者として生まれ、厳しい修行を積み、女らしさとは無縁の日々を過ごしてきた彼女。
望む、望まざるとにかかわらず、そうせざるを得なかったのだ。
彼女のおかげで、多くの国が、人々が救われてきた。
しかし、自分はどうだ。
命を危険にさらしながら、女らしさとは無縁の生活。
年頃の女の子が、だ。
でも、仕方ないのだ。
自分にしか、魔王は倒せない。
それに、頼もしい仲間たちがいる。
そう自分に言い聞かせながら、これまで耐えてきた。
それになのに…

そばに控えていた下級魔族が、カゴを持って近づいていく。
男装をしたサキュバスは、そこから何かを取り出す。
それを、一つずつ勇者に身につけていく。
ファンシーな下着。
フリフリのドレス。
可憐なお姫様の出来上がり。
下級魔族が、姿見を運んでくる。
タキシードを着た王子様に促され、鏡に映る己の姿を見る。
憧れていた、かわいらしいドレスに身を包まれ。
恥ずかしそうに、上目遣いでこちらをうかがう、自身の姿。
「これが、私…」
生まれた時からずっと禁じられてきた、女としての生き方。
それが、ついに許されたのだ。
そばに控えた貴公子が、姫君にそっと囁く。
「きれいだよ、ユリアンネ…」
勇者の本名。
顔を赤らめて、麗人を見上げるユリアンネ。
そんな彼女のあごに手をやり、顔を上向かせる王子。
そして、姫君の唇を奪う。
ユリアンネの目から、雫がこぼれる。
自分には縁がないものと必死に言い聞かせてきたもの。
それが、ついに叶えられたのだ。
顔を上気させ、王子を見つめるユリアンネ。
甘いささやき。
ついばむような、キス。
幼いころ、親に隠れて読んだ物語。
王子と姫の、恋の物語。
胸をときめかせながら、自分を姫に投影させていたユリアンネ。
それが今、現実となったのだ。
王子の口から流れ出る甘美な雫を、うっとりとしながら受け入れる。
隷属の印が、鮮やかに浮かび上がる。
もはや、彼女の頭には、勇者としての使命は霧散していた。
あるのは、乙女としての幸せを甘受する、けなげな少女。

王子にお姫様抱っこをされながら、天蓋付きのベッドへといざなわれる。
ふかふかのベッドへ、彼女をそっと下ろす王子。
ユリアンネの目には、王子しか映っていなかった。
王子は、彼女のドレスを脱がせていく。
そして自身も、タキシードを脱いでいく。
生まれたままの姿で、これから起こるであろう夢のような時間に思いをはせるユリアンネ。
全ての衣服を脱いだ王子の胸元には、あるはずのない豊かな乳房。
そして、あるはずのものは見えず、ただ黒い茂みがあるのみ。
しかし、ユリアンネは何の疑問も抱いていないようだった。
サキュバスが、勇者をそっと横たえる。
仰向けで、サキュバスを見つめる勇者。
潤んだ瞳が、期待と不安とで揺れ動く。
自身のしっぽを口に含む、サキュバス。
口腔で、舌で、たんねんに唾液をまぶしていく。
ヌラヌラと光る、サキュバスのしっぽ。
サキュバスが、何かをささやく。
勇者は、だまってコクンとうなずいた。
サキュバスのしっぽが、勇者の大切なところにあてがわれた。
そして…
勇者が、短く悲鳴をあげる。
シーツを握りしめながら、サキュバスを受け入れる勇者。
いつか王子にと、淡い期待を胸に抱きながら。
大切に守ってきたバージンを、下級魔族にあっさりと奪われた。
催淫性のある唾液によって、破瓜の痛みが快楽へと塗り替えられていく。
処女を散らせたばかりの勇者が、かわいらしく嬌声をあげはじめる。
サキュバスに耳元で愛を囁かれ。
しっぽを打ち付けられながら、それにあわせるように腰を動かす。
サキュバスの口が、勇者の口をふさぐ。
とめどなく流れ込んでくる唾液を、嬉しそうに飲み込んでいく。
ゆくゆくは、魔王を倒すと言われていた勇者。
多くの魔族を恐怖に陥れた彼女の、勇者としての最後のときが、近づいていた。
ベッドに、下級魔族が近づいていく。
手には、例の杯。
サキュバスはストロークを続けながら、勇者の身体を抱きかかえる。
結合部分を、杯へと寄せる。
いよいよだ。
魔王を倒すための力は、彼女の身体からマナという形で絞り出される。
本来、倒すはずだった魔王の糧として。
無我夢中で、愛しい者の名を呼び、口を吸い、腰を動かす。
自身の処女を奪ったのが、下級魔族のしっぽであることにも気づかず、愛しそうに離さない。
サキュバスが、勇者のお腹に手を伸ばす。
グニグニ、グニグニと、人類の希望が詰まったお腹をもみほぐす。
そしてついに、その瞬間はやってきた。
ひときわ大きく、長い鳴き声が、部屋に響き渡る。
全身を大きく痙攣させる勇者。
しっぽを抜かれ、ぽっかりと空いた場所から、光り輝くマナが流れ出てくる。
それを、下級魔族が杯で受け止める。
勢いよくあふれ出すマナは、すぐに杯を満たした。
慌てて、次の杯をあてがう下級魔族。
まもなく、その杯もマナで溢れそうになる。
サキュバスは、キスをしたまま勇者のお腹をなおも揉みしだく。
そのたび、勇者のアソコから、マナが勢いよく流れ出てくる。
手の甲に刻まれた、勇者の印。
生まれた時から存在する、勇者としての証。
それが、明らかに薄くなっている。
最終的に三つの杯を満たし、一つの杯を半分ほどマナで満たしたユリアンネ。
彼女の手に、勇者の印は、ない。
どれだけ目を凝らしても、彼女の手の甲には何も見えない。
勇者としての能力も、資質も失ったユリアンネ。
それを取り戻せる日は、もう二度と来ないのだ。

こうして、勇者たちは魔王討伐の旅を終えた。
当初、彼女たちが思い描いていた結末ではなかったが。
マナを搾り取られ、能力を失った彼女たちはどうなったのか。

彼女たちは、魔王城で第二の人生を送っていた。
肉親や友人、恋人を、彼女たちに奪われた魔族は多い。
そんな彼女たちに向けられる憎悪は、恐ろしいほどだった。

それでも、処刑されることはなかった。
魔族の慰み者。
それが、彼女たちが生かされる理由だった。
自ら命を絶つことを禁じられ、ただ、魔族のために尽くす。
かつて、勇者たちの足元にも及ばなかった魔族たち。
恐怖や憎しみの対象でしかなかった存在を、自由に扱えるのだ。
這いつくばらせて、優越感にひたる者。
ペットとして侍らせたり、奉仕をさせて性的な快楽を得る者。
当初、魔族たちの間で圧倒的多数を占めていた、勇者たちを処刑すべし、という声。
それも、徐々に弱まっていき、次第に聞こえなくなっていった。


可愛らしい、フリフリの洋服を身にまとった、元勇者。
男装をした女魔族にエスコートされ、しなだれる姿は、かつての救世主とはほど遠い。
華やかに飾られた女魔族の寝室で、甘い時間を過ごす。
女魔族の逞しいしっぽを、うっとりとした表情で、口にくわえる。
自らの唾液にまみれたそれを、彼女自身の大切な場所へとあてがう。
そんな彼女を、満足そうに見下ろす女魔族。
女魔族は、すっかり受け入れる準備ができたそこに、己のしっぽを沈めていく。
彼女の深い場所へと、しっぽが飲み込まれていく。

そんな二人を、別の場所で見つめる人物がいた。
かつて、ありとあらゆる魔法を使いこなした、元魔法使いだ。
ほぼ全ての魔法を奪い取られた彼女に残された、唯一の魔法。
それは、透視の魔法だった。
もともと、敵の襲撃や危険回避のために使っていたそれを、今は快楽を得るためだけに使っていた。
それも、いつでも許されているわけではなかった。
彼女が想いを寄せる、ユリアンネ。
そんな彼女の痴態を盗み見るときにのみ、許されていた。
魔力の回路を焼き切るタトゥーを刻まれた彼女は、もう自身の魔力だけでは魔法を使うことができない。
憎いはずの魔族たちの前で土下座し、媚びへつらい…
そうやって、ようやく魔力を供給してもらえるのだ。

恋焦がれる彼女が、別の女の前で見せる痴態。
ユリアンネの、媚びるような視線。
恋人のように手を絡ませ、見つめ合うユリアンネ。
愛を囁かれ、顔を赤らめるユリアンネ。
唇と唇がふれあう。
愛を確かめるように、何度も、何度も繰り返す二人。
うっとりと瞳を潤ませ、身を委ねるユリアンネ。
ついばむようなキスは、やがて情熱的なディープキスへと移行する。
お互いの口を吸い合う二人。
舌と舌を絡ませ、お互いの唾液を交換する。
女魔族の唾液を、嬉しそうに飲み込むユリアンネ。
女魔族の舌が、ユリアンネの歯茎をゆっくりとなぞる。
ゾクゾクと身体を震わせ、目を閉じながら女魔族を受け入れる。

元魔法使いは、激しい嫉妬に苛まれていた。
私の愛するユリアンネ。
カッコよくて、頼もしくて、優しくて…
それが、あんな媚びた顔をして…
私の、ユリアンネが…
私だけの、ユリアンネが…
やめて、やめてよ…
そうつぶやきながら、己の秘部をまさぐる。
悔しくて、悲しくて、仕方ないのに…
とめどなく、愛液が溢れる。
手をベトベトにしながら、敏感な萌芽を刺激する。

女魔族のしっぽが、ユリアンネの中に侵入していく。
うっとりしながら、それを受け入れるユリアンネ。
女魔族がユリアンネに囁く。
嬉しそうに、それに応えるユリアンネ。
透視の魔法で得られるのは、視覚情報のみ。
音を拾うことはできない。
ただ、元魔法使いの脳には、聞こえるはずのない声が、はっきりと聞こえてた。
女魔族は優越感に浸りながら、しっぽをゆらゆらと前後に動かす。
その度に、ユリアンネが嬌声をあげる。

元魔法使いは、目に涙を浮かべながらその様子を覗き見る。
指で、クリトリスを上から押すように刺激する。
包皮から少しだけはみ出たその部分を、悔し涙を流しながら、グニグニ、グニグニと刺激する。
そんな彼女を、周囲の下級魔族たちがはやし立てる。
大切なユリアンネを奪われた元魔法使いの、寝取られオナニーショー。
今や、下級魔族たちの娯楽の一つとなっていた。
身を焦がすような、屈辱感と敗北感。
脳内麻薬が、彼女の思考を鈍らせる。
身体の奥底から湧き上がってくる、凍えるような嫉妬の炎。
雌の顔をした、ユリアンネ。
優越感に満ちた、女魔族。
覗けば覗くほど、天才魔法使いと言われた彼女の脳細胞が焼き切れていく。
プライドの高い彼女に、負け犬としての屈辱が刻まれていく。
嫌なのに。
嫌で嫌でたまらないのに。
覗き見ることを、やめられない。
自身に残された、たった一つの魔法。
それが、彼女の性癖を更に歪めていく。
覗き見が許されているときはもとより、そうでないときも、彼女のマゾ性は深化していった。
覗き見をした光景を頭に思い浮かべながら。
女魔族相手に、蕩けた笑顔で腰を振るユリアンネ。
ユリアンネを絶頂に導き、満足げにしっぽを引き抜く女魔族。
自身を気持ちよくしてくれた、女魔族の逞しいしっぽ。
それを、いとおしそうに口に含み、清めていく。
まぶたの裏で広がる無慈悲な光景が、彼女の身体を熱く、発情させる。
寝取られマゾとしての性癖を拗らせた彼女は、悔し涙を流しながら、何度も、何度も自身を慰める。
鎮まるどころか、被虐の興奮は更に増していく。
そうしながら、再び覗き見を許される日を待ち望むのだ。
魔族によって書き換えられた、彼女の身体。
被虐的な絶頂を迎えるたび、愛液に、光り輝くものが混じる。
彼女のマナ。
時間とともにわずかに回復するそれを、彼女は自ら失うのだ。

また、別の場所では…
かつて、比類なき剣士とうたわれた元女戦士。
鍛え上げられ、見事なプロポーションを誇っていた彼女。
その身体には、筋肉ではなく、贅肉がたっぷりと乗っていた。
赤子のような姿をした彼女を、優しく膝枕する女魔族。
かつて、この魔族には愛する夫と子がいた。
仲睦まじい家族だったが、ある日一変する。
運悪く、勇者一行に遭遇してしまったのだ。
彼女の目の前で、夫と子どもが血しぶきをあげる。
半狂乱になりながらも、かろうじて逃げおおせた彼女の心はこわれてしまった。
子どもがいつも可愛がっていた人形を、いとおしそうに抱きながら、子どもの名を語りかける。
彼女にとって、その人形は我が子そのものだった。
今、彼女は我が子の名を呼びながら、女戦士をあやしている。
かつて、大切な存在の命を奪った張本人に対して。
赤ちゃん言葉でおっぱいをせがむ、元女戦士。
そんな彼女に対し、やさしく微笑みながら乳房をさらす女魔族。
母と子の、幸せな時間。
しかし、永遠に続くわけではなかった。
この後、女魔族と別れたあと、イジワルな妹の遊び相手をしなければならないのだ。
妹を背に乗せ、お尻を叩かれながら、魔王城をハイハイする己の姿を思い出す。
以前なら、取るに足らない下級魔族たちに、逆らうこともできず。
妹の機嫌を損ねると、とっても恥ずかしくてキツーイおしおきが待っているのだ。

魔族の間にも、宗教は存在する。
ただ、人間たちとは異なり、信仰の対象は魔王。
魔族の子どもたちを前に、魔王の教えを説く元神官。
その手には、魔王の歴史や、言葉の記された冊子。
子どもたちと一緒に、魔王への祈りをささげる。
お祈りの時間が終わると、遊びの時間だ。
今、子どもたちの間で流行っている遊びがある。
厳格で賢く、清楚な彼女は、子どもたちから先生と呼ばれ、慕われていた。
そんな彼女たちの関係には、別の一面があった。
「センセー、こっちにおしり向けて!」
子どもたちの、無邪気な声。
先ほどと変わらぬ、厳格な表情の彼女。
いや、違う。
顔を赤らめ、視線は泳いでいる。
「ほら!はやくしないとオシオキしちゃうよ!」
はやし立てられながら、彼女は子たちに背を向ける。
ひざと手を床につけ、尻を突き出す。
四つんばいの姿勢。
ゆっくりと、スカートをまくり上げていく。
下着をつけていない彼女の尻が、子どもたちにさらされる。
恥ずかしさと、屈辱と、期待とで、彼女の排泄器官が収縮をくりかえす。
先ほどまでは、彼女のかわいい教え子だった子どもたち。
遊びの時間では、彼女の飼い主へと変わる。
「センセーのおしりのあな、ヒクヒクしてる!」
「おもしろーい!」
子どもたちの声。
「ほら、いつものゴアイサツして、センセー」
「せ、先生の…あ、アナルマゾの、お尻で、いっぱい、遊んでください…」
子どもたちがはしゃぐ。
彼女のアナルにあてがわれたそれは、細かく振動しながら蠢いている。
「あ、ありがとうござい…ああっ!」
子どもたちが、遠慮なく『それ』を押し入れていく。
子どもの腕ほどもある『それ』を、彼女の淫猥な穴は飲み込んでいく。
彼女のマナを吸いながら動く『それ』は、かつての彼女の杖の成れの果て。
ほとんどマナを有しない彼女では、満足にそれを動かすことはできない。
彼女に代わり、子どもたちが彼女の相棒に魔力を送る。
「あひっ!」
情けない声をあげて、子どもたちの足元で悶える。
「あひっ、だって!」
子どもたちが笑い声をあげる。
厳格で、おっかない先生が、自分たちの魔力によって情けない姿を晒している。
子どもたちにとって、彼女は恰好のオモチャだった。
元神官は、蠢くしっぽを生やしながら、四つん這いで進む。
子どもたちにはやし立てられながら、子どもたちの魔力で動くバイブを咥えこみながら。
子どもたちにペットとして扱われる彼女は、幸せそうだった。

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